18:大阪の中学
私、佐須揚羽がバスケにのめりこむようになったのはいつからだっただろう。
中学はバスケをやろうと意気込んで、実家から遠く離れた大阪の全寮制のところへいった。
その大阪城南中は、当時絶頂気のチーム状態で、女子でいう千駄ヶ谷中のような強さを誇っていた。
ただそれは男子に限った話で、女子は……。
二年になると同級生の男子の一人がとても良く懐いていた。
岸和田朝陽――現体制下の男バスのエースガードなのだけど、何度も何度も1on1の勝負をしている仲である。
勝負の結果はまちまちだが、まあ私の方が勝ち越しているわね。
「揚羽、そういう勝ち誇った顔すんな。勝負は五分だ。今日こそ俺が勝ち越す!」
「ふふっ、やってみなさいよ」
勝負は攻守を交代しながら十点を先制した方が勝ち。
範囲はハーフコートで、ファールをした場合は無条件に相手に一点入るシステムだ。
朝陽のスタイルはコート全体を効率よく使うパサーだ。決してドリブルが不得手というわけじゃないが、パスを回して敵味方をコントロールする新時代のバスケット選手と彼は呼ばれている。
かわって私のスタイルは、どんどん前にいく特攻型。
パス回しは嫌いじゃないけど、色々と問題があって自分のスタイルでないと割り切っている。
そんな彼といった全中決勝戦、いわゆる千駄ヶ谷中が五人中五人ともスーパーエースが揃っていた試合。
特等席の先頭から見たコート上には、千駄ヶ谷中の中村や野田、久世、東、上園。相手の夷守中には、日高と長岡がいた。
隣の男子は、ワクワクが抑えきれず身体を揺らす。その理由は、彼が目指すスタイルを完璧に極めたのが一つ上の女子だった。その彼女が試合に出ているから、この試合はわざわざ東京まで電車で何時間もかけてきたのだ。
幼馴染で結成したチームを指揮するその選手は、まるでコート上の全ての動きを把握したかのように次々と際どいパスを出した。
その全てが得点に直結する決定的なパスなのはとても凄いことだ。
次第にその人のことを何も知らない私さえも彼女に夢中になっていた。
ちょうど私と彼、二人のスタイルが融合したようなスタイルを確立する彼女――日高遥華という選手が、その試合から私の明確な目標となったのは忘れようもない出来事だった。
それからしばらくして、高校ではチームメイトに恵まれて順調に準決勝戦へ進んでいた。
中学時代から有名だった三人は同級生なのだが、とても芯の強いバスケをする。
それをアシストする自分のバスケは中学からはだいぶ変わったな、と思う。
そんなすべてが上手くいくようなときに、その事件は起きたのだ。