17:ブランクス1.5
先輩とか後輩とか、ただ単に年齢の差のことを言っているんじゃないと思う。
人間誰でも向き不向きがあって、優れた人がいれば劣っている人もいる。
それが学校だと、一年もしくは二年早く入学した人が先輩になって後輩たちを先導しなければならない。
それは向き不向きがあるけど、先輩はさらにその一つ上の先輩を見てしっかり後輩たちを導いてくれる。
例えば学校行事の一つを挙げると体育大会。
最高学年の三年生が赤白青のそれぞれの組を引っ張っていき、優勝目指して全力で頑張る。その姿があまりに格好良くて、次は自分と考える生徒も少なくないはずだ。
これなら分かりやすくていい。
格好良いというのは、人を引き付ける魅了としては十分だ。
こういう先輩がいれば誰だって自然とその人に従うはずだ。
これは個人的な感想だが、先輩っていうのは一年早くそこにいるから、こちらが知らないことを知っている。知らないからこそ後輩はその先輩に従わなければならなくなるのだ。
どちらも対等な立場を得たのなら、もはや先輩後輩という関係は必要ない。
ましてその関係が逆転するようなことがあれば、そのときは…………。
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子津真彩は先輩たちのことを少しだけ知っている。
先輩というと例の三人になるのだけど、中学時代に全国に名前を響かせていたとか、去年の夏までは高校の部活の方でベスト四に進出したとか誰からでも聞けることとは違うことだ。
例の三人ともう一人――臨時でチームに不足しているPGをやってくれる人を入れた四名が起こした事件。唐突に起こったようで、実は根深いものだと本人たちだけが知っていることだ。
チームに合流したばかりのまだ中学生だった真彩は、そのことを何度か聞いたことがある。
「新しくできた何とか学園が強いのは、見てないから分からないけど。先輩たちも相当なんでしょ? 試合中に顧問の顔面にグーパンチは大会初らしいですね」
その時の反応が思いの外、薄かったのを良く覚えている。