14:現実のような夢
バスケットコートには由那や三咲、栄子、愛数といつものメンバーが揃っている。
滝浪滴が一番後ろからそれを見ていた。
準々決勝の相手校は大会屈指の名門で、ここ数年間の中でほぼ間違いなく最強の布陣だ。
それは試合が始まってから良く分かった。
これまで竹春が対戦した強豪は、エースが絶不調の赤坂高校と一年生だけの千駄ヶ谷高校。
その二校と戦って自分たちが強くなったと勘違いしていたことが、この試合で思い知らされて、また一人だけが奮闘していた。
「――まかせて」
前線に残った一人が、全員掛かりでも崩せなかった敵陣を切り裂いていく。
昨年から五十失点以内で試合を作る相手は、竹春高校の攻撃を完全にシャットアウトしていたが、どうにかエースの活躍で大きく点差を引き離されることはなかった。
相手が攻勢に出ることが少ないだけにそこは助かっていた。
しかし竹春側には気になることがある。
五人で一つのチームなのに、一人の後姿を残りの四人が見ていなければならなかったのは酷く嫌な気持ちだった。
その嫌な気持ちが試合の後半で現実になった。
いつかの試合のように顔を真っ赤にさせたエースが最悪の結末になるのを、ただ見ていることしかできなかった――――。
***
暗闇の中で細長い紐に巻かれる苦しさで目が覚めた。
枕元を手で探るとスマホで音楽を聴いていたイヤホンが首に絡まっていたようだ。
「危な……次から、気を付けよう」
直前まで見ていた悪夢が時間と共に薄れていくが、嫌な気持ちは残っていた。
その理由も朧げだが残っている。
「それも、これも……あの電話のせいね」
瞼が重く視界が白い靄で包まれている中をスマホで電話の履歴を確認する。
今が現実なのをそれで確認しようと思ったのだ。
「まだ朝の五時じゃないの。もう一度寝ないと昼間に身体が保たなくなるわね。――あぁ、アドレス帳に登録していない番号がある。それじゃあ昨日会った不思議な電話は本当で、そのせいで嫌なものも見たのね」
自分に言い聞かせるように小さな声でぼそぼそ話す。
今のが夢で良かったという思いと、電話で聞いた衝撃的な事実は考えれば考えるほど現実味を帯びて自分を悩ませている。
彼女が聞いたのは、大事な仲間の一人が一番つらい時期にされたことの真相。
同時に、当時の仲間からの懇願の言葉だ。
そうしなければ滴たちは大切な仲間の一人を失うことになる。