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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(決戦編)
179/305

09:エースがいない3


 突然の交代で竹春は、滴を中心に大きく陣形を変えることにした。


 基本的なことができない来夏はとりあえずゴール下に配置して、全員が一つ下がるような陣形をとる。


 栄子と三咲で左右のフォワード、滴が守備的ガード、コート中央に揚羽とした。


 前に練習試合をしたときに揚羽のプレーは記憶している。



「無理があると思うけど、栄子は守備重視であまり深いところまで攻めていかないで」


「うん。パスの中継は佐須先輩に――」


「嫌よ。この相手なら四人もいれば大丈夫よ」



 この人は何を言っているんだろうと滴は思った。


 ただでさえ試合の途中ということで、突然エースの由那を下げるといったことは黙っていたのに。



「申し訳ないですけど……少し失礼なこと言います。何を言っているんですか? 公式戦なんですよ!」


「数合わせで入っている部外者なんだから、放っておいてよ」


「そんなことできるわけないでしょ!」


「まあまあ」


「三咲先輩……」


「ようはこいつがいなくても勝てる相手ってことでしょ」



 ――意味が分からない。


 怪我をしているらしい三咲先輩と代わって入るなら分かるが、絶好調の由那に代えて入ってくるのはおかしすぎる。


 佐須姉妹が使えないとなると三対五で試合をするようなものだ。


 確かに新涼は不知火という人以外は大したことないが、最初は入らなかったシュートがだんだん決まるようになってリードは縮められてきている。



 使える駒が減った竹春は、より速い攻撃を選択するしかなかった。


 ボールは滴が出していく。


 その滴には、やはりというか当然のごとく不知火がマークにつく。



「落ち着きに欠けていますね?」


「別にこっちは煩いのがいなくなって落ち着いているくらいだわ」


「失礼しました。でもボールはここでもらいます!」


「やらせるわけないでしょう!」



 滴は負けん気で「落ち着いている」といったわけじゃない。


 三人で戦わなくてはならないなら、考えることがたくさんある。


 それが自分を熱くする前に逆に冷静にさせていた。


 想定外のことで攻撃パターンが減り、より慎重に試合に入れている。


 相手にはもう自分の動きは見えているのかもしれない。


 そこへ突撃していけば確実にこれまでと同じように止められる。


 直感的に滴はドリブルで左へと勝負を避けた。



「あの背の高い人を使うんですか?」


「いちいち答える義理はないわ」



 滴と三咲の連係はあまり練習していないが、言われた通り三咲を使うしかない。


 三咲に高いパスを送れば落としたところに栄子が走りこめる。



「……そうじゃないわよね」


「……?」



 確かに三咲や栄子とパスを回していけば、ゴールに近づける。


 効率的なバスケットができる。


 しかしチームに勢いを与えるのは、もっと違うもので、異なる価値がある。


 滴は一度逃げた勝負にサイドラインギリギリで挑むことにした。


 これが由那の揃えた現バスケ部を表している。


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