表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(激闘編)
162/305

29:エースと柱


 明誠の基本戦略は、セイが守ってアリスが攻める。


 これに例外はなく、前者がダメでも後者が確実に点を取り続ける。


 それが一番強いのだ。


 ボールは再びアリスのもとへ集められ、マークに天野がつく。



「マグレはもうナイよ」


「マグレかもしれない。けど亜佐美が頑張ってるから、私も頑張る」


「ドウセ、ついてこれナイ」


「やってみなきゃわかんないよ」



 アリスは天野の遅い動き出しを見て、逆に動き出す。


 それだけ二人の間に速さや瞬発力の差があるのに、天野はニヤリと口角を上げる。


 天野は抜かれかけたているのに冷静だ。


 頭で分かっていても身体が覚えていないうちは不安だったが、だいぶ相手のスピードに慣れてきた。


 精神的に余裕ができたことでアリスの行動を誘導していく。


 アリスが右を抜くときにボールが通る軌道は、三つの軌道がある。


 さらに相手より遅く動き出したときは比較的大きなドリブルをする。


 一歩目の踏み出しが左足の時は右手から左手にボールを渡してからドライブに入る。


 それらの要素を組み合わせれば、完全な形で天野は少女を捉えることが出来る!


 アリスはドライブの途中で、天野の手にボールを奪取されてしまう。



「――一姫、そろそろ決めちゃって!」



 スティールに成功した天野は前線のエースにボールを送る。


 こちらでもエースが目の前の敵に勝負を仕掛ける。



「ダンク……」



 一姫は一瞬の跳躍でブロックに来たセイを意に介さずゴールだけを見つめている。


 高さでは分の悪い勝負だが、一姫にはアリスに負けない独自のスタイルがある。


 他人の何十倍もの負担を自分に掛けることで、この試合で一番の跳躍を見せる。


 セイのブロックは確かに高いが、それを超える高さからボールをゴールへ叩き込むダンクシュートが炸裂した。



「シュート!」



 普段より十センチ以上高く飛んだ跳躍は、会場の大歓声に包まれて着地する。


 ここから十有二月学園は明誠の勝利の方程式を打ち破って点差を縮める。


 明誠のアリスは天野が、セイには一姫が。


 チームで対抗できない力を前に十有二月学園が取った単純な策は真っ向から一対一で彼女たちを止めることだった。


 さらに伏兵として外からの規格外のシュートを打てる亜佐美を加えれば、相手の混乱に乗じて点差はどんどん縮まっていく。


 一姫の方も、自分への負荷を考えずに相手に自分の姿をダブらせて見せる、例のドライブで敵陣を一閃した。


 これを連続して攻守に活用した一姫はそうそう止められない。


 コート上にもう一人一姫が現れたように厄介で、パスカット率も飛躍的に上昇する。


 第三クォータ終了までに目標は十点差以内。


 このクォータの流れを根こそぎ奪った今なら、それぐらいの勢いが十有二月学園にはあった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ