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10分間のエース  作者: 橘西名
中学生編(上園&松林中)
16/305

15:松林中VS巻風中 2-3Q

15:松林中VS巻風中 2-3Q



 レフェリーの指示で両チームが一度ベンチに下げられた。


 尾上は松林中の生徒が担架に運ばれていくのを見てコーチに話しかけた。


「コーチ。どうして私があんな小さいのをマークしなくちゃいけなかったの? 確かに面白いけど、マンマークをするほどには見えない」


 コーチはタオルを渡しながら話す。


「私がよく知る選手にプレイスタイルが似ているのよ。高校一年のときに私が大阪の高校、その人がそのまま東京の高校へいったのだけど……」


「え、何? 昔話?」


「そんな昔じゃねえよ! ……ごほん、ごほん。まあ――」


 このくらいの女子に年齢は禁句だ。


「ババくさ」


 尾上は試合でのストレスを臨時コーチで発散していた。


「まあ、その選手はもういないんだけどね」


「どういう意味?」


「……高校入学前に大きな事故に巻き込まれたのよ」



 ***

 試合は、気を失っているセイラを除いて再開していた。


 琴音が守備的な位置に下がり、攻撃力は落ちるがなんとしても点差を守ろうとした。


 松林中の意志は思いのほかバラバラだ。


 それは試合をする前からずっとそうだった。



 *

 じゅんは、バスケットがそれほど好きじゃなかった。


 ただ一緒にプレーをして、上手にできたから今もやっているだけで隠れ天才肌なのが純。


 この試合も、幼馴染の一衣が負けた相手というだけで気持ちは折れていたのだが、昨日の新しく入った仲間の言葉で前向きな気持ちも持つことができた。


「このチームで唯一、純が尾上って人を止められる。絶対」



 *

 ういは、一生懸命がんばる小さな体に元気をもらっていた。


 バスケと直接関係ないが、卒業と同時に親の転勤が決まっていることをチームメイトや友達に初は相談できなかった。


 日々の一喜一憂に幸せを感じるような性格なので、それが終わってしまうことに耐えられなかった。


 しかし、短い間だけどみんなで練習して考えてがんばって、その最後の総仕上げにあたる試合に勝ったらすべて言おうと決めていた。


「このチームの支えは初なんだから」



 *

 涼香すずかは、この五人の中でバスケ初心者だった。


 誰よりも下手だし、一衣という人も知らない彼女がこの試合に挑んだ理由なんてみんなわかっていなかった。


 しかし涼香の中では明確な理由があった。


 それは「何かで一番になりたい」という少女の願いだった。


 勉強はあまり好きではないが、そこそこできる。


 運動は好きだったからよくやっていて、勉強のように塾へ行けば全国模試を受けるというようなことが運動にはなかったからどのくらいできるかわからなかった。


 高校へあがる前に、そんな自分がどんなものなのか、受験勉強前に試したかった。


 それはできれば強い相手がよくて、同じチームメイトの三人は小学校低学年のころに大人に勝つくらいすごかった聞いて、その人たち一緒にやりたいと思った。


 その人たちの残りの一人がとても強い学校のキャプテンで、そこを倒したところがあると聞いて涼香だけは内心喜んでいた。


 そんな人を倒したら自分凄いに決まっている。


「きっと試合を決めるのは涼香になる」



 ***

 琴音は親友のために戦っている。


 そのためには猫の手でも借りたいと思っていたところに、今はいない上園青空という有名なバスケ選手と同じ名前の子が現れた。


 試合にかける思いは誰よりもあるが、それが空回りして試合では大木という格下の相手にも苦戦していた。


 試合は最終の第四クウォーターに入った。


 体格だけのバスケしかできない大木という選手を相手に、セイラの離脱をきっかけにして琴音は徐々に対応できるようになった。


 このチームのエースはセイラ、チームを支えるのはパス回しの起点となる初、エース殺しを止めるのは純で、試合を決めるプレーをするのが涼香。


 それじゃあ、琴音がチームの中ですることとは……。


「私がしなきゃいけないのは、みんなが尾上を止めたあと、自分たちの点にすること。それは試合を決めるプレーじゃないかもしれないけどね」


 セイラが抜けている状態で、残る問題は点差と尾上というエースをどうにかするだけだった。


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