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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(激闘編)
146/305

14:孤独なタタカイ


 明誠高校の二回戦は一回戦と同じ戦法で戦うことになった。


 事前に対戦校のデータを研究し、それでいて自分たちのできる範囲で対策を練った結果が一回戦のパスカット&オールオフェンスである。


 大人気ないコーチのプロファイリングにより二回戦で当たる予定にあった二校のデータは完璧に揃えられていた。


 あとは反復練習した戦略をもって相手を打倒するだけ。


 それがいかに大変なのかを選手たちは理解していなかった。


 試合が始まると一回戦で体力の大部分を削られた選手たちは、あれだけ練習したフォーメーションを整えられなくなっていた。


 走力があるというだけで出ている餡蜜も足手まといになるだけなので、早い段階でベンチに下げられることになった。


 そこにはアリスなんていう、とても外国人っぽい名前の日本人とセイムが新たにベンチに加わっていた。


 春風としても一回戦の疲労を考えれば、この試合でセイムを使わなければならない時は必ずくることは分かっている。


 それでもできればすぐ裏で行われている十有二月学園に必要以上のデータを渡したくない。


 そんな希望と裏腹に試合は微妙な点差を付けられて最終局面に突入しつつあった。


 そのとき小春は、耳に装着したイヤホンから携帯を通してアリスの言葉を受けていた。



『しわす、つよいヨ。とくにクウチュウセンがあっとうてき。にほんじんとはおもえナイ』


「そりゃあ、去年の優勝校なんだから……それくらいは、そうなんじゃない?」


「あれ、音無さんがどうしてベンチに?」


「今の私はアリスだから。小春じゃなくて! アリスだから!」


「あぁ、そうなの。まあそーゆーことならいいけど」


『でもセイなら、あのカザミーをとめられるヨ』


「それより、こっちが負けそうなんだけど」


『セイがでればセイクウケンをゲットできるからダイジョウブ』


「そうかい」



 それからセイムが試合に出されるまで大して時間はかからなかった。


 高身長の金髪外国人ということで観客席から歓声が起こるが、バスケの実力を見てからそういうことはして欲しい、と小春は心の中で思っていた。


 交代で入るセイがコーチに確認する



『コーチ。どうすればいい?』



 ベンチに置かれたプラカードを一つ取り、セイムが春風に聞く。


 そこでコーチが下した指示は具体的なものだった。



「自陣のゴール下は守らなくていい。とにかく相手のゴールから点を奪ってこい」


「 “OK !” 」



 ギリギリの時間でセイムを投入したことでコンスタントに点を取ることが出来て、攻撃に割く人数を減らしたことで守備も安定感を取り戻した。


 必要最小限の指示で選手に最高のパフォーマンスをさせるのが、コーチの仕事である。


 それが強いチーム作りの基本でもある。





 無事二回戦を突破した明誠高校は、その日の内に翌週末の続く三回戦の対策を軽く練ることにした。


 予想通り圧倒的な強さを見せて勝ち上がってきたのはシードの十有二月学園。


 エースの風見鶏と一年生の西條は出場していたが、一試合丸々天野を温存した状態で二十点差以上つけている。


 攻守に置けるスピードは、前年度の比ではなく盤石の布陣だ。


 そのチームとアリスたち明誠高校が対戦するのは来週末の日曜日。


 全国に行ける力があるのに、どちらか一校がその夢を断ちきられる運命の日がすぐ直前まで迫っている。


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