05:イケメンでクズ
怖いもの知らずという言葉は、さきほど小春が叫んだ宣戦布告にピッタリ当てはまる。
上級生の教室に突然飛びこんできて、宣戦布告するなんて昨日までの彼女は思いもしなかっただろう。
一瞬の気の迷いが起こした大災害と思っている間に、彼女たちの足は体育館へと向かう。
男女のバスケ部がそこで練習をしていた。
「誰この子たち?」
眉毛をへの字にした困り顔の先輩が前に出てくる。
「女子バスケ部三年の福島千里です。男バスのクズと一緒のようだけど、ウチらにようがあるの?」
「クズって……先輩の扱いって、そうゆうのなんだ」
「面白そうだね」
『クズだって。やーい、やーい』
イケメンからクズに降格した男バスのエースはセイの出したプラカードに驚く。
書かれている内容には、特には反論がないようだ。
福島先輩に小春が事の経緯を伝える。
「私、音無小春っていいます、初めまして。女バスの監督から伝言を聞いていませんか?」
「ウチに監督はいないけど?」
「えっ…………それじゃあ、人間としてはダメだけど、一部の才能だけで生活できているような人に心当たりありませんか?」
「あぁ、それって音無コーチのこと? そういえば君も音無。なるほど……」
福島先輩は良く分かっていらっしゃる。
小春の母は明誠高校で女子バスケ部のコーチをしている。
それは母が学生時代のときにチームメイトだった人が、他校のバスケ部の監督をして良い成績を出していることから高校女子バスケットボール界に目を付けられた。
元々はクラブチームのコーチをしていたので、相応のお金さへもらえればどこでもよかったのかもしれない。
「それじゃあ、あの子たちがコーチの言っていた助っ人? 確か、男バスとやって実力を見せてくれる予定だっけ?」
その予定のようです。
体育館についてすぐに二人の留学生はアップを始める。
彼女たちが軽いストレッチをしている間に千里が小春に話しかける。
「男バスにしてはやる気な感じで、県予選のメンバーでくるみたいなんだけど。こっちは留学生二名と音無さんと、そこにいるもう一人の四人でいくの?」
「???」
どうやら一緒に小春と餡蜜もやると思われているようだ。
早くそんなことはないと訂正しないと。
「それなら、もう一人はウチが出るわね。本気の男子とできるなんて楽しそうだしね」
なんだか、訂正できる雰囲気じゃなくなっていた。