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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(激闘編)
134/305

03:プラチナの留学生

 翌日――学校にて。


 当然のように私のクラスに留学生が来た。


 留学の手続きでトラブルがあり、正式にこの学校の生徒となるのが遅れたという。


 難しいことは良く分からないが、これから一年をやっていくクラスメートに、愉快な人が増えるのは嬉しいことだ。



 彼女はアメリカのニューヨーク州出身で、年上かと思ったが間違いなく同級生。


 名前に負けないカッコ良さがある彼女がどんな人かというと、日本人が生半可に染めた金髪とは比べ物にならない純粋な金髪を持ち、手足が長いためか制服のサイズが少し小さく見える。


 身長は彼女の隣に立つ男性教諭と頭一個分違い、片手にはリンゴを握りしめているのかと思ったらそれはバスケットボールで、バスケット好きだというのが一目でわかる。


 自己紹介でも日本にはバスケをやりに来たと英語で言っていた。






 ……もうそろそろ、私が思っている不可解にお気づきだろうか。



 まず私は、何一つ嘘はついていない。


 現に目の前には留学生がいて、クラスの大半は同じようなことを思っているはずだ。


 ただ、彼女は昨日私が出会った少女でなく、身長が百八十後半もある人だということ。


 足とか腕が太くて、向こうのスポーツ選手によくあるムチムチボディー。


 よく言えば肉付きがよく、彼女の持つボールがリンゴに見えるくらいその手は大きい。


 それが私のクラスメート、『セイム・クライスター』さんだ。





 ***

 朝のホームルーム後に土井どい餡蜜あんみつさんに話しかけられる。


 この子が昨日いっしょに行動していた子である。



「いやビックリだよね。二日連続で生の外国人だ。もう一人は隣のクラスとかにいるのかな?」


「違う。隣じゃなくて、もう一人もこのクラス」


「あれれ、音無さんはなんでそれ知ってるの?」


「……聞いたから。本人に」



 それは昨日帰宅した後のことになる。


 私の地味な一軒家は、国際色豊かな場所へと様変わりしていた。


 翌日から明誠高校に通うセイムともう一人、アリスが私の家に来ていたのだ。


 何故なのかと困った顔をしてリビングの入口で固まっていると、アリスが視線をこちらへ向けてコクンと首を傾ける。


 ――かわいい。



『今日からお世話になりまする』


『よろしくおねがいしまする』



 アリスの奥にいる大きな人がプラカードでそんなことを言――見せてくれる。


 語尾がちょっと変で、何十年前のバラエティーなのって思ったが、英語で話しかけられるよりはよっぽどましだ。



「どうゆうことよ……」



 その場にはもう一人いる。


 私の言葉はその人に向けたものだったが、それはあえなくスルーされてしまう。



「それでは、部屋はセイが私の部屋。アリスがそこにいる小春と同じ部屋ね」


「りょうかい」


『OK』



 その人は二人に向けた視線を外すことなく、最低限の言葉だけ残して自分の部屋に帰ってしまう。いつものことだ。



「えっと、音無小春。“ My name is ~ ”」


「ニホンゴでいい。セイもリスニングだけならできる」


『そのとおりでする』



 二人の第一印象は外国から来た親子、もしくは姉妹というのが一番しっくりくる。


 大柄なセイムと小柄なアリスは対照的なサイズをしているけど、アリスの方がしっかり者のように感じた。


 日本語の話せないセイムの方もアリスを頼っている節がある。



「いちねん、せわになる」


「そういうことなんだろうとは、思っていたよ。私は察しのいい女だからね」


『 “さっしのイイ” とはなんですか?』


「しらない。アンジェはそんなこといわない」


「とにかく、一度、私の部屋に行きましょうか」


『つれこむのですね』



 セイムのリスニング能力、凄いな。


 それがどういう意味なのか分かっているような顔で私の方を見てくる。


 それとノータイムでプラカードを出すのも十分凄い。




 まぁ、無理やりにでも連れ込むけどね。


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