表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(激闘編)
132/305

01:流星の少女

新章開幕です。

 私、音無小春の通う明誠高校は女子バスケットボール部があります。


 女子バスケ部があることは特段珍しいというわけでもないが、女子の運動部が豊富にあるということで明誠高校は、受験の倍率が高く、今年入学した私は大変な思いをした。


 女子の運動部には、バスケにバレー、サッカー、ハンドボール、ソフトボール部などなど多種多様な部活動がある。


 それぞれが強いというわけではなく、競技人口の少ない部活では全国大会に出場する部があるほどだ。


 私は、中学三年の夏に明誠高校の女子バスケ部の試合を見たことがあった。


 なぜバスケの試合を見に行ったのかというと、理由は二つある。


 まず、私は中学のときにバスケ部に所属していた。


 その期間はとても短く、一年未満しかやっていなかったが、バスケを嫌いになったからやめたというわけじゃない。


 むしろスポーツとしては好きな方だ。


 もう一つの理由は、親の仕事の都合でその試合を見に行った。


 それは当時の私には分からなかったが、この高校へ入学して、流れ星のような少女に出会ってから分かることになる。


 その試合は、なんちゃって経験者の私から見ても“無残”という言葉が相応しいものだった。


 対戦相手は、名前すら聞いたことがない創部一年目の高校で、ほとんどがバスケ未経験者のようだった。


 ボールを持ったときの落ち着きのない様子や、ノーマークの状態でもたくさんのシュートを外してしまうというのは、自分とよく似ていると思えたからだ。


 その中に一人、笑顔でバスケをする人がいた。


 今思うとそれはニヤニヤしていたと思い直せるが、その人だけが別次元のバスケをしていた。


 チームの中心に立ってゲームをコントロールする様はオーケストラの指揮者のようで、バラバラな旋律を上手く調律していた。


 平穏な性格と思えた指揮者は、ときには勇ましく自分から点を取りに行くことで試合を決定づけた。


 たった一人に明誠高校は敗れたのだ。



 その予選からしばらくして監督が変わったという女子バスケ部は、今年は打倒その高校ということになっているらしい。


 私の友達の友達に聞いたことなので正確なことは分からない。


 そんなバスケ部と私が高校で初めて接触したのは、放課後の部活紹介で様々な部活を回っているときだった。


 部活動が一覧になった紙を眺めながら、席の近かった子と二人で体育館の近くを歩いていた。



「音無さんは希望の部活とかあるの?」



 ありませんね。


 身体を動かすのは、なかなか下手くそだから。


 そんなありのままを言えない私は、適当に笑顔を作って話を流した。



「そういえば、うちの男バスにカッコいい先輩がいるらしいから見にいこう! ほら、部活紹介で四番のユニフォーム着ていた人!」


「そんな人いたっけ? あんまり覚えていないけど」



 男子バスケ部の部活紹介というと、私の苦手なチャラいイケメンがフリースローを決めてドヤ顔をしていた記憶しかない。


 もしかしたら、そのイケメンがカッコいい先輩と彼女は思っているのだろうか。


 できれば彼女と友達になりたいと思っているが、私的に中身のない男はちょっと……。



「あれれ、試合をやっているみたい……」


「――――!」



 それはさっきのドヤ顔先輩のいる男バスと新入生が男女混合でミニゲームをしているところだった。


 さすがエースナンバーを背負っているだけあって、あのドヤ顔はバスケが上手だ。


 しかしそれ以上に輝く少女の姿が、私の瞳に止まった。





 私が今までに見たことがない速さで動いて、周りとは時間の流れが違った。


 全身をバネのように使う跳躍はどこまでも飛んで行けそうで、ふわふわ浮かぶ妖精のようだ。


 さらに日本人離れした容姿も私の妄想を加速させる。


 透き通るような白い肌に、金色の髪は結んでいたゴムを失い彼女が作る風になびいていた。


 その少女が、体格の違う男子を圧倒する様は、まさに爽快だ。




 それがこの日から長い付き合いになる、私と流星の少女との出会いだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ