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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(開幕編)
116/305

39:通報しました


 恭平がその場にいる女子高校生七人に問いかける。



「ときに愛について私に語ってくれる子はいるか?」



 その問いに亜佐美が即座に手を上げて答える。


 片手には携帯を持ち、画面がチカチカと光っている。



「はい。すでに通報しました。そこを動かないでください」


「ふふははっ、可憐な冗談をいうじゃないか」


「一姫。この人を取り押さえて」「了解」


「いや待て、冗談じゃないのか?」



 一年先輩の亜佐美、一姫の素早い行動に由那たちは感心してみていると、あわてて愛数が否定する。



「ふー、勝手に人のお兄ちゃんを通報しないで!」



 六人と一人の間に仁王立ちする愛数に、全員が大きくため息をついた。






 ***


 愛数の兄、恭平きょうへいは胸ポケットから名刺を取り出し、簡単に自己紹介をする。


 小林探偵事務所というところの所属の探偵をしていたが、数年前から独立してその日暮らしをするという典型的なニートをもっともらしく説明する。


 大人の男性の説明口調に勘違いをしそうになる竹春の三人だが、既知外の多くいる十有二月学園の猛者たちはそれに惑わされない。


 良く分かっていないであろう一年生三人に強く注意をする。



「騙されないで、この人はいい年をして働いていないのを格好良く話しているだけよ」


「えっ、そうなの?」


「でも愛数ちゃんのお兄さんが言うように、働いたら負けなんじゃないかな?」


「私もなんとなくそうなんじゃないかと思い始めてる。絶対にそんなことありえないのに」


「詐欺師に向いているんじゃないの?」


「栄子がまだ平静を保ってくれてて幸いよ。本題に移りましょう」



 大人に毒された一年生ズは愛数と栄子に任せて、二年生ズが恭平を取り囲んで話を聞く。



「私たちはあなたに聞きたいことがあってきました。先日、女子高生が拉致られてその手がかりをあなたが持っている」



 恭平はヒラヒラとテーブルの置かれた一枚の写真をちらつかせる。


 その写真は二人の人物が映っていた。



「ここにいると思うけど。拉致られたって情報を掴んでいるなら、ここへ来ることもなかったんじゃないのかい? 君たちのバックについている人も相当なやり手だろう」



 男は亜佐美を見透かして、ここで来ていない人物を見ている。


 雰囲気だけは一流の捜査官のようにも見えるが、言っていることは占い師と同じだ。



「そうですね。きっと会長は、ここにいるメンバーが必要だからワンクッションおいたんじゃないでしょうか。でも、お答えいただきありがとうございました」



 斜め30度。軽く頭を下げて亜佐美は振り返る。


 今度はここにいるみんなで考える番だ。



「はい。天野箕五子、意見があります」



 勝手に挙手をして天野が話し出す。


 場所はリビングから二階奥の愛数の部屋に移っていた。



「今からそこへ行きましょう」


「はい。次の意見」



 即座に亜佐美が口を挟み、天野の天然をかき消した。



「はい。風見鶏一姫、意見があります」



 何かの流れができ始めている。


 ここでつまらないことを言うようなら、罰として愛数兄の前に生贄として差し出そうかと亜佐美は考えていた。



「写真に写っているのは佐須さんとその彼氏でいいのかな?」


「はい。田崎由――」


「もういいから。しつこい」


「ごめん。えっと、写真の女の子の方は佐須さんで間違いないよ。それとこれって大学生の彼氏とのツーショットじゃないの? 場所はその人の学校の前みたいだし」


「うーん。でも写真の裏の撮影日をみると去年」


「そうなると一度別れて、一年ぶりに再会して口げんかになり――拉致、監禁?」



 そう考えられなくもない。


 しかし発想が飛躍しすぎてしまい、収取がつかなくなる前に行動をした方が良いこともある。


 一姫、由那のツーショットもなかなか見られない光景だけど、天野が提案したように現地へ向かうことにする。



「ここで一つ注意事項。一姫はいいとしても。こっちはか弱い女子高生。もしも危険な目にあいそうになったら必ず逃げること! 間違っても歯向ってはダメよ!」


「「はーい」」



 自分たちの身に危険があっては元もこうもない。


 このメンバーだと保護者しなければならない亜佐美はうんうんとうなずいて先頭を歩き、大学へと向かう。




 その道中、後ろの方では、亜佐美が言った「か弱い女子高生」の一言にみんな笑いを堪えていた。


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