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10分間のエース  作者: 橘西名
中学生編(上園&松林中)
11/305

10:インターバル1

ちょっと昔の話~


 入学する前から他の中学なら即エースになれたはずの上園青空が千駄ヶ谷中でエースと呼ばれるようになったのは、意外なことに三年生になってからのことだった。


 それは彼女が入学した前後の世代に名だたるメンバーが揃っていたためだ。


 彼女が二年生の頃の千駄ヶ谷中レギュラーは、三年生ニ名と一年生一名がエースとして活躍をし、大会では史上最強のトリプルエースと呼ばれていた時代だ。


 他のメンバーも一癖も二癖もあり、その中の一人が当時二年生のセイラだった。


 セイラの正ポジションは全体を良く見て的確なパスを出し、チャンスがあれば得点も狙う典型的なPG。


 しかしエース格の三人がセイラ以上の力を持ち、彼女の特性を生かす必要がなかったため彼女がチームでぱっとしなかったのかもしれない。





 時間が経過し、セイラが二年生から三年生になりエースとしてチームをひきいた千駄ヶ谷中は、夏の大会の都大会決勝を戦っていた。


 ルール上、千駄ヶ谷中東東京代表は上位二チームが全国大会へ進むことが出来るので、両校とも全国出場は決まっている。


 千駄ヶ谷は昨季の成績で全国大会の出場さえ決まれば今大会でのシード権を獲得しているから順位も関係がない。


 ただ対戦相手を圧倒して全国大会への弾みをつける試合、というのが唯一のモチベーションだろう。


 両校のモチベーションがそれほど高くなくても、その試合には大勢の高校の偵察が試合を見に来ていた。


 去年の成績で全国大会優勝校と準々決勝出場校の試合となれば、試合のどこかでそれなりの戦力を見せてくれるかもしれない。


 去年と比べ、主力の三年生がごっそり抜けた千駄ヶ谷中は、PG上園以外はガラリとメンバーが変わっている。


 それに加え、千駄ヶ谷中至上初の当時一年生エースとなった選手は予選ではまだ温存し、新エースのセイラを中心にした三年生主体のチームとなっている。


 対するは昨年からのレギュラーメンバーが三人も残り、戦力は昨年以上といわれている。


 試合前の予想では、常勝の千駄ヶ谷中でも昨年より力をつけている好敵手に苦戦が必須だろうと思われていた。


 相手校のベンチでは昨年に引き続きキャプテンを勤める少女が、最強の相手を前にチームの士気を上げていた。



「今日こそは中学最強の学校を私たちが倒すよ。去年からのエースの上園さんは絶対に私が抑えるから、勝ってみんなで全国にいこう!」



 エースの掛け声に全員が答えるように大声を張り上げる。


 去年は二人の化け物にやられて持ち味を生かせずに負けた悔しい思い出がある。


 去年よりもずっと実力をつけたエースの少女は全国でも十本の指に入る実力者の一人だ。


 全国で見ても比較的実力者の多い地区で頭一つ飛びぬけた実力をもっている選手が、この試合には二人出ている。


 試合前の挨拶を上園とエースの少女は言葉を交わした。



「今度こそ私たちが勝つ!」


「……悪いけど、負ける気がしない」



 試合前の気持ちの強さだったら、相手チームのエースのほうが何倍も強かった。


 しかし気持ちでどうにかできるバスケをさせないのが、真のエースというもの。



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