30:仲間を思って
30:仲間を思って
亜佐美は電話を切ると近くにいた一姫とおしゃべりを始めた。
「佐須揚羽か。危険な人が帰ってきたわね」
「そう? あの人が帰ってきたならまたやりたいんだけど」
「それは無理よ。由那の作ったチームに彼女のバスケは合わないわ」
「でも例え去年のメンバーに今の竹春を加えたとしても私たちは負けないってアサミンは思ってくれるのは嬉しいよ」
「べ、べつにそんなことは言ってないわよ。その件に関しては、こっちも一人調べたい人がいるから時が来たら手伝ってもらうわよ」
「――? 協力はするけど?」
亜佐美が足元にあるバッグから取り出した顔写真付の用紙には、トップシークレットと印字されたものと英字の文章がところどころに見られた。
***
栄子が電話の内容を伝えると三人でしばらく考えた。
頭を使って考えていると栄子が何かを思い出したようにハッと顔を上げる。
「結構重要なことを忘れてた」
「うん、どうしたの?」
「そういえば滴の家に来る前にそんなこと言ってたっけ」
「今日の午前中に陸部にいたとき聞いた。顧問の先生から、練習試合のお知らせ」
栄子の口から、対戦相手の名前が出ると三人が同じことを頭の中で考え付く。
昨日の今日でその名前が来るとは思っておらず、思わず三人は身構えてしまう。
「些細なことでくよくよしている場合じゃないわね。納得いかないことがあって、それをすんなり飲み込むためにも決めておきたいことがある」
「だいたいわかるけど、この三人で決めて良いの?」
「もちろん美咲先輩もいれて話す必要があるけど、まずはこの三人で話したい」
「いいんじゃない? 滴から暑苦しいオーラがむんむんするから、言わなくてもだいたい分かるけど。確認だけしておくのは悪くないよ」
「次の試合。正式に千駄ヶ谷高校と試合をする場に、由那を巻き込みたくない。どうにかして一日だけでも誰かに人数合わせで入ってもらって、私たちだけであいつらを見返してやりたい」
考えるのにそう時間もかけず、その場にいた全員がその考えに同意した。