表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

知る人のみぞ知る。

作者:

 今日は珍しく寝坊して、1時間目がもう始まっている。

すると、裏門の前に黒い物体が落ちているのが見えた。

不思議におもい近づくと、それは動いた。

同じクラスの不良・高山だ。

実を言うと私の想い人であって。

こんなとこでサボっているのはあいつしかいない。

しかもよく見ればタバコを吸っている。


「未成年者つかまるよ〜」


彼はこっちをちらりと見た。


「……キモ」

「えっ、第一声がそれって最悪だよね!?」

「うっせーな……何の用だよ」


タバコを煙を吐きながらそう呟いた彼。

風に揺られた髪、整った顔、やっぱりかっこいい、不良だけど。

そんな事思いながら、見れば分かるじゃんと答える。

すると彼は、あっそとまた私から目をそらしてタバコを吸い始めた。

じっと彼のことを見てると、それに気づいたのか眉をひそめた。


「何だよ、早く行けよ」

「だってもう1時間目始まってるじゃん。それに1時間目ヨシオだし、キモいし」

「あー、あいつこの前AV借りてんの見た」

「うわっ、更にキモっ!! 相手がいないからって一人でオナってんのかよ、さみしー男」

「お前もな」

「え、酷くない? なんか私に冷たくない? 確かにモテないけどさ。別にいーよ、あんま性欲ないもん。高山は女に困らないよね」

「ああ」

「ムカつく」

「どーも」


私は少し考えた。彼と一緒に歩いてるとこを見た女の人、または噂になっていた女の人、みんな遊び人だ。

もちろん彼も遊び人だし。


「本命は? ってかいなくない?」

「女って面倒くさい」

「あー、そっかなるほどね」

「女ってウザイ。お前みたいなさっぱりした奴が良い」

「えっ、高山私のこと好きなの!?」

「ちげーよブス」

「……ふつーに傷つくよブスは」


さすがにショックを受けた私。そりゃ好きな人に言われれば誰だってそうだろう。

それなのに相変わらずの興味のなさそうな彼の様子にため息をつく。

そしてつっ立ったまんま彼をじっと見てたら睨まれたので隣に座ることにした。

 その時だった。


「ギャアァァァ!!!」

「っ!?」

「いやっ、やだって!」

「んだよ、引っ付くなってキモい!」


いきなり叫んで引っ付いた私に彼は困惑気味のようだった。


「虫! 虫がいる!」

「あ? そりゃいんだろ」

「やだー……!」

「うっせー奴」

「ふえ……」


本当に気持ち悪い虫だったから、なかなか鳥肌がおさまらない。

半泣きになっているのが自分でも分かるほどだ。

すると、なんだか視線を感じた。

不思議に思って隣を見ると、彼がじっとこっちを見ていた。


「え? な、何?」


―――やばい、うるさくし過ぎた


相手は不良、切れられたら怖いに決まってる。

クラスメイトだからって容赦しないだろう。(今まで普通にしゃべってきたけど)


「お前案外可愛いな」


―――What?


「よく見ればふつーに可愛いかも、お前俺のタイプだわ。何で気づかなかったんだ俺」

「え!? ちょ、え!?」

「うっせーな、耳元で叫ぶな」


そりゃ誰だって叫ぶだろう、あの高山が可愛いなんて言ったのだから!

しかも私に。

意外と可愛い一面あるんだ、更に好きになったかもしれない。

胸の鼓動を抑えながらどうにか気づかれないように口を開く。


「ってか、これ告白!?」

「ちっげーよ、顔だよ! てめーなんか誰が好きになるかこの自己中女」

「ひどい…私高山のこと好きなのに」

「……は?」

「好き〜、付き合って?」


我ながら軽い告白だったと思う。

でも言葉にうそはない、ってか告白なんてノリが良いときでないと無理だ小心者の私は。

つまりこれはチャンス!


「無理」

「えっ、何で!?」

「……性格キモい」

「アレ、さっき私みたいな性格良いって言ってなかった!?」

「言ってねーし、自意識過剰」


思いっきり自分が言った事を忘れてる彼。

そんな彼にイラつきを感じた。


「ムー、じゃあ勝負よ!」

「は?」

「覚悟してなさい! 絶対好きにさせてみせるから!」

「……そう簡単には落ちないぜ?」


 また風が吹いた。

彼の短い黒髪がなびいた。

胸がドキドキいってる。

顔が赤くなってるのが自分でも分かる。

ああ、かっこよすぎだろ高山!


「そ、そんな事わかんないもん! あっ、もう行くわ、1時間目終わりそうだし、高山も早くきなよ」


私は逃げ出した。

彼の瞳に飲み込まれてしまいそうだった。

もしあれ以上あそこにいたら、きっと私は更に溺れていただろう。




「って言うことが今朝あったのよ、先生」

「へ〜、お前が高山をねぇ」

「うん、絶対好きにさせてみせる!」

「……もーなってるけどな」

「え、何? なんか言った?」

「いや、なんでも」


嗚呼、知る人のみぞ知る。


「青春だねぇ」

「えー、先生親父くさーい」

「親父かぁ、俺も青春してーな、よし杏俺と青春してみない?」

「結構です」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ