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英霊戦記 ~勇者召喚された幽霊は身体を借りて戦います~  作者: 猫まつり


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9 王城にて② 


 ジーニャスが王に連行されて、勇者パーティーが集まった部屋は何とも言えない雰囲気に包まれていた。というのも、先程の弾丸トークによってダウンしていたレイアがいまだに復活していないからだ。私は声をかけてみているが意識が戻る様子がない。そんなレイアを見かねたのか、リーアがレイアに近寄り、肩をゆすって起こそうとする。


「レイア、大丈夫か?」


 リーアがそう言って肩をゆすると、レイアは意識を取り戻した。だが、近くにリーアの顔があり、びっくりしたのか顔を赤らめてびゃっ!と変な声を上げ、再び意識を失いかけていたが何とか踏みとどまっていた。まあ、リーアの顔はめっちゃいいので、そうなるのも無理はない。


「レイア、戦場では聞きそびれてしまったのだが、いくつか聞きたいことがある。問題ないか?」


「はっはい、大丈夫です………」


 レイアは先程のこともあってか、少し恥ずかしそうにそう答えた。すると、リーアはジーニャスの再来かと疑うほどの距離の詰め方で肩を掴んでレイアの目を射抜くように見つめて、口を開いた。


「レイア!あの剣技はいったいなんだ!あれは美しく綺麗で完成された素晴らしい剣技だった!一体全体どういうことか説明してもらおうか!!!」


「落ち着け。話が進まん」


 興奮して鼻息が荒くなっているリーアの頭をゼロは本の角で殴った。リーアは突然の痛みに驚き、その元凶であるゼロをにらみつけた。ゼロは冷静になれと諭すように言うとリーアは納得していない表情をしながらも無言でレイアから離れた。レイアもリーアが離れて、胸を押さえ深く呼吸をしながら、跳ね上がった心拍を落ち着かせようとしていた。


「まず、何故お前はあそこまで戦えたんだ?それも、人が変わったように」


「それは………」


 レイアは私のほうをチラチラ見ながら答えを待っているようだった。私はなるようになれと深く頷いた。責任放棄である。


「聖剣様です!!!」


「「「………は?」」」


 皆がこいつは何を言ってるんだという目でレイアを見ていたが、うん。知ってたと半ばあきらめの境地に至っている私は、ジーニャスは今頃しごかれてるんだろうなと現実逃避をしていた。レイアはというと、私との出会いから四天王討伐までに何があったのかを自慢げに話していた。その話にレイアは食いつき、アランは興味深そうに聞き、ゼロは何か別のことを考えているようだった。というより、レイアのその話で新発見があったのだが、私がレイアの身体を借りていた間、レイアも同じ景色を見ていたとのことだった。今まで身体を借りた人は、借りている間は意識がなく、私が出ると突然、寝覚めのように意識が覚醒していたとのことだったので、神の加護が関係してるのかなぁとか、いろいろと可能性を考えたが答えはでなかった。


 レイアの話が終わるとすぐに、アランが質問をした。まるで、リーアに口を開かせないようにするために。


「じゃあ、今そこに聖剣様ってのはいるのかい?」


「はい!」


 レイアが元気のいい返事をすると、ゼロも間髪入れずに質問をした。素晴らしい連携プレーである。


「直接、会話することはできるのか?」


「どっどうなんでしょう、聖剣様」


 レイアがそう言うと、特に何も考えていなかった私は、とりあえず無理っと体の前で×マークをつくった。


「無理だそうです」


「そうなのか………」


 それを聞いたリーアはうなだれるように床に手をついた。何というか、リーアはレイア2号になりそうな予感がして、暴走する前に何とかしないとと心に決めたのだった。すると、これ以上は聞き出せそうもないと思ったのか、ゼロが話を切り出した。


「とりあえず、明日、今回の件で報酬を渡したいそうだ。それまでは各自、自由行動で問題ないな」


「あたいはそれでいいぜ」


「そんな………だが、今夜は聖剣様の話をじっくり聞かせてもらうぞ」


「はっはひぃ………」


 レイアはリーアのマジの目におびえるように返事をするのだった。





………………





 それから、レイアはご飯を食べたり、お風呂に入ったりしたのだが、前回と違うのはリーアの存在である。何をするにもレイアにべったりとついていき、事あるごとにレイアへと迫って、それにレイアは顔を赤らめるのである。何というか、もうおなかいっぱいだった。これは今日中に何とかしなければと思った私は、寝室までついてきたリーアと話すことを決めたのだ。レイアにそれを伝えて、うまく場をセッティングしてもらった私は、リーアに憑りついたのだった。そして、私の姿をとらえたリーアは即座に片膝をついた。


「貴方が聖剣様でいらっしゃいますか?」


 そう問われた私は、リーアも見える人かと一瞬動揺するが、様子を見たところ、やばい感じで見えていないっぽかったので、ひとまず安心をした。一応リーアから見て私がどう見えているのかを尋ねた。


「リーアには私がどのように見えていますか?」


「はい。白い靄がかかって見えます。」


 なるほどね。そのパターンかと納得した。これまで、私が見えてきた人の中で1番多かったのが、白い靄がかかって見えるというものだった。腐りかけのゾンビに見えていたらリーアはどんな反応をしたのかと想像していたら、リーアが口を開いた。


「このたびは命をお救い下さり、誠にありがとうございます」


 リーアは片膝をつきながら、頭を垂れて感謝の言葉を述べた。だが、最終的に私と契約して一緒に戦うことを選んでくれたのはレイアだと伝えると、はっとした表情をし、すぐにレイアへと向き合った。


「そういえば、まだ礼が言えていなかったな。レイアも本当にありがとう」


「わっ私は、身体を貸しただけですので………」


「それでもだ。どうか、私の感謝の気持ちを受け取ってくれないだろうか?」


 上目遣いでそう言ったリーアは相当に破壊力があったのだろう。レイアの頭からぽふんという謎の効果音とともに煙が出たのを幻視した私は、顔を赤らめて目をくるくる回してぱたんと倒れたレイアを見た。本日、5度目である。もう、これ以上はレイアの心臓が危険であると判断した私は、とりあえずレイアとの一時接触禁止令を出した。リーアはなぜと困惑していたが、懇切丁寧に説明したら一応は納得してくれた。まったく世話の焼ける2人である。


「そっそれで、聖剣様。一つお願いしたいことがあるのですが………」 


 リーアは少し緊張した雰囲気で私に聞いてきた。いったい何だろうか。


「あの剣技を伝授していただけないでしょうか!!!」


 リーアはそう言うと、切羽詰まったような表情で私を見つめてきた。どうしてそこまでと聞いたら、リーアは神妙な面持ちで話し始めた。


 そして、リーアは自分の過去を語った。小さい頃から剣が振るって生きてきたことやトラウマ、そして、ガルグボルグとの戦いでトラウマが原因で暴走してしまったことを。また、いつの間にか意識を取り戻してその話を聞いていたリーアは泣いていた。本当に感情豊かな子である。それに気づいたリーアはどうしていいか分からずに困惑していたが、レイアは自分で気を持ち直し、リーアを静かに抱きしめるのだった。リーアもそれに返すように抱き返し………って、もうお前ら付き合え!!!と口には出さず、心の中で叫んだ私は、無理やり話を進めた。


 まず、教えるのは難しいがレイアを通して見せるだけなら可能なこと。次に、さっさとつきあ………じゃなくて、レイア以外でもこうして話ができることは内緒にしておいてほしいということだ。リーアは理由を尋ねることもなく、了解してくれた。


 それからは、もう休もうという話になり、さすがに2人は別々で寝た。だが、リーアが今日はありがとうと言って部屋を出たときのレイアのちょっと残念そうな表情が記憶に新しい。はてさて、いったいどうなることやらと旅の楽しみが一つ増えた私は、静かに瞼を下すのだった。


 そして、私たちは朝を迎えた。



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