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英霊戦記 ~勇者召喚された幽霊は身体を借りて戦います~  作者: 猫まつり


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8 王城にて


「ここ、は?」


 レイアは目が覚めると、見たことのある天井を目にした。そこは………


「王城だ。私、生きてる」


 レイアは自分が生きていることを実感するように自分の身体を抱きしめるのだった。そして、そのふわふわな布団の感触に再び眠気を誘われたのだが、壁をすり抜けて現れた千代を視界にとらえて、再び意識が覚醒するのだった。


「聖剣様!私たち、勝ちました!」


「ちょっ、レイア、いいから横になりなさい」


 突然身体を起こしたレイアに千代は窘めるように言い、レイアはその言葉に素直に従い横になるのだが、千代がごめんなさい、と謝ったのを見て、また勢いよく身体を起こした。


「どっどうして聖剣様が謝るんですか⁉」


「だって、レイアの身体で結構無理しちゃったし………」


 レイアはそんな事かと思うのだが、しょんぼりしている千代を見て、可愛いと思うのだった。そして、そんなレイアは、わっ私、今何を考えて………と自らの思考に動揺するのだが、それを払しょくするように、話題を変えるのだった。


「そっ、そういえば、あの後どうなったんですか?私、覚えてなくて………」


「そうだね。まずは、レイアが気絶しちゃった後、アランがやってきて………」


 そうして、レイアは話を始めた千代の言葉に耳を傾けるのだった。





………………





「お~い、大丈夫か~?」


 レイアが当然、大声で悲鳴を上げ白目をむいて気絶したのを見たリーアは助けを呼んだのだが、それに答えるように遠くからアランの声が聞こえてきた。


「アランか。まったく今までどこに隠れていたんだ?さすがに死ぬかと思ったぞ」


「いやぁ、ごめんごめん。ものすごい速さであの黒騎士に向かっていったレイアが見えてさ、大丈夫だと思ったんだよね」


「はぁ、まあ私も冷静さを失っていたからな。自業自得ではあるんだが」


 リーアがそう言うと、アランは気絶するレイアに近づいて、一瞬目を細めたような気がしたが、さらに近づいてきた気配にやっと来たかぁと気の抜けるような声で言うのだった。


「ゼロ。随分と遅い到着じゃないか。どこで何をしていたんだ?」


 リーアが若干の怒気を含ませながらそう問うと、ゼロは何でもないかのように淡々と答えた。


「魔法を打った後、魔力を回復させるために休んでいた。それから、様子のおかしい奴が来て、そっちに向かっていったからな。大丈夫だと思ったんだ」


「君もアランと同じことを言うのか」


 リーアは呆れながらそう言うが、最後の最後で情けない戦いをしたのを思い出し、はぁと深々と一息ため息をつくのだった。そして思い出したかのように、今もなおアンデットの残党と戦う彼らは大丈夫かと、先程までその様子を見ていたであろうゼロに聞いた。


「あぁ、それについては問題ない。王城から助っ人が来てな。中々に腕の立つ奴だったから、任せて問題ないと判断した」


「そうか。君ほどの実力者が言う腕の立つ奴は一度見てみたいな」


 リーアがそう言うと、早く話を進めろと言わんばかりにアランが提案をしてきた。


「とりあえず、安全な場所に移動したほうがいいんじゃないか?」


「そうだな」


 ゼロは即座に了解すると、気絶するレイアと怪我で動けないリーアを魔法で浮かせた。


「………他に方法はないのか?」


「ない。贅沢なことを言うな」


 リーアはその理不尽なまでの物言いに、嫌そうな表情を浮かべるが、確かにその通りだと思い、口をつぐんだのだった。




………………



 

 それから、アランとゼロが道を切り開き、勇者パーティーはようやく城壁の前まで来たのだった。私は、未だに気絶して目を覚まさないレイアを心配するが、おぉと歓声が上がるのが聞こえたので、そちらのほうに目を向けた。そしたら、見たことのある風貌のものが、魔法でアンデットを蹴散らしているのが見えた。周りの者たちは、よっ、天才魔術師様!とおだてるが、魔法を行使しているものは、わぁっはっはぁ~、やはり私は天才なのだぁぁぁぁ!!!と、どこかで聞いたことのあるような中世的な声で、高らかに言うのだった。


「あっ!ローブの人!」


 何とか思い出した私は、思わず声を上げてしまった。今もフードを深々と被っていてその顔を確認することはできないが、間違いないと私は確信した。なんでローブの人がここに?と疑問に思うのだったが、そういえば、先程王城から助っ人が来てるって話をゼロがしていたのを思い出した。


「あれは絶対に失敗していない!何かの間違いだ!あんのっ、おっさんめ!!私が下手に出ていれば言いたい放題言いやがって!!!死ねぇぇぇぇええええええ!!!!!!」


 ローブの人はかなりのストレスが溜まっていたのか、威力のある魔法をこれでもかと連発し、そのおかげもあってかアンデットの姿もほぼわずかと言ったところまで減っていた。というか、さっきの王様が聞けば不敬罪になるんじゃ。と思った私だが、ローブの人がああなった原因は私にもないとは言えなくもないので、なんかごめんと心の中で謝るのだった。


 そして、最後の一体を倒し終えたとき、耳が壊れるかと思うほどの大歓声が沸き起こった。リーアはそれを聞いて、わずかに笑みを浮かべ、アランはうるせぇと耳を塞ぎ、ゼロは顔をしかめるのだった。


「やはり、私は天才なりぃぃぃいいい!!!」


 ローブの人がまた何かを叫んでいるが、周りの人たちも楽しそうなので、これで一件落着とその様子を見ながら思うのだった。





………………





「っていうことがあって、そのあと王城から使者が来たんだけど、また王城を使わせてくれるってことで、ここまで来た感じかな?ちなみに怪我はゼロが直してくれたよ。本当にいろいろできて器用だよね」


「そうだったんですね。後で、皆さんにお礼を言わないとですね」


 レイアはすべて無事に終わったことを聞いて、安心した表情でそう告げた。だが、1つ面倒な問題が残っていた。それは、どう誤魔化すかである。私は勇者召喚された、一応勇者ではあるが、レイアには聖剣に魂を封じられたかつての聖剣使いのように説明している。そして、それを勇者パーティーの面々、特に腹黒く用心深そうなゼロが信じるかどうかについてだが、望みは薄いだろう。あれでもない、これでもないと考えていたら、部屋の扉が開く音が聞こえたので、その時の私に任せようと考えることを諦めた。そして、部屋に入ってきたのは、リーアでもアランでもゼロでもなく………ローブの人だった。いや、なんで⁉


「お初にお目にかかる。勇者レイア殿、私は稀代の天才魔術師、ジーニャスと申します。お体のほうは大丈夫でしょうか?」


 これまでの言動が嘘かのように丁寧な対応をとったジーニャスに私は驚きを禁じ得なかった。そして、自分で稀代の天才魔術師とか言うんだと呆れた。だが、まあ、そういう人もいるよねと今までの経験から納得したのも束の間、レイアが頷いたのをいったい何の了承とったのか、突然人が変わったように詰め寄った。


「であれば!いくつか勇者様にはお聞きしたいことがあるのですが先日まではただの村人だったというのに先刻の戦いでは四天王をそれこそ単騎で撃破なされたというじゃないですかそれに戦場で見えた強烈な光はいったい何だったんでしょうかその光に充てられたアンデットどもは消滅したように見えましたがもしかしてあれは神の加護の力によるものなんでしょうかそれに加えて…………」


 その弾丸のようなトークに目を回しながら、ふぇと情けない声を出したレイアは、脳の処理がオーバーヒートしたのか、ぱたんと倒れてしまった。それを見てジーニャスは、ふむ、どうしたものか、と冷静に分析をしているようだった。


「レイアはまだ目が覚めたばかりなんだぞ」


 私はそんな自分勝手なジーニャスに怒りを覚え、思わず言葉が出てしまった。この私を怒らせるとは、と不敵な笑みを浮かべた私は、どうしてやろうかと考えていたら、開いたままの扉から王と勇者パーティーの面々が入ってくるのだった。


「騒がしいと思ったら、いったい何をしているんだね?稀代の天才魔術師殿?」


 額に青筋を浮かべ満面の笑みで、王は言った。


「おおおおおおおおおおうよ、い、いったい何をしにこ、ここへ?」


「いやいや、なに、いつまで経ってもお主が来なかったのでな、こうして迎えに来たわけじゃよ」


「あっ………」


 何かを思い出したように静かに声を発したジーニャスは、これから起こるであろうことを想像したのか、ぶるぶると震え始めた。そして、お主の今後について宰相とじっくり話し合おうじゃないかと言った王は、ジーニャスのフードを掴んで引きずっていった。その時、ぐえぇっとフードで首が締まり、苦しそうな声を上げたジーニャスの素顔が初めて見えた。声もそうだがその中性的な顔立ちは美形と言っても差し支えなかった。


「おっお許しをおぉぉぉぉぉ!!!」


 そんなジーニャスの声は徐々に小さくなっていき、聞こえなくなった。




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