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英霊戦記 ~勇者召喚された幽霊は身体を借りて戦います~  作者: 猫まつり


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6 VS 黒騎士


 城壁を降りたリーアは、黒騎士の放つ威圧感が増したことで、それに怯えてしまった冒険者や衛兵たちに発破をかけながら、ゼロの攻撃によって開いた道をまっすぐに駆けていった。その様子を見たこの場にいた者たちは、やってやるぜ!!!と声を出して恐怖を誤魔化しながらも、目の前の敵と戦い始めた。リーアはそんな彼らに対して、心の中で武運を祈るとともに、感じる威圧感がより強くなっていくのを感じることで、黒騎士に近づいていることを実感していた。そして、後100mあるかないかといったところで、黒騎士の全貌を確認した。すると、黒騎士のほうからリーアに話しかけてきた。


「よくぞここまで来た。勇敢なる女騎士よ。我は魔王様が配下、四天王が一人、ガルグボルグだ。」


「四天王だと⁉」


 そう重量感のある声で、己が何者かを紹介した黒騎士にリーアは動揺を隠すことなく、驚いてしまった。これはまずいと冷や汗を流したリーアは、ゼロやアランが合流するまで時間を稼ごうと、すぐさま戦略を討伐から時間稼ぎへと切り替えた。四天王とは魔王より力を与えられた強力な存在で、それこそ、Sランク冒険者や一国の近衛騎士団長、副団長クラスのものを何人も集めて、ようやく互角と言ったような化け物なのだ。リーアはどうやって時間を稼ごうかと思考を巡らせていたところで、目の前の黒騎士が言っていたことをふと思い出した。ガルグボルグ………どこかで聞いたことがあるような………まさかっ⁉


「最強の剣聖、ガルグボルグ………」


「ほう、よもや、我の名が数百年の時を経てもまだ、この大陸で伝わっているとはな。」


 剣聖ガルグボルグ。かつてこの大陸で最強の名を欲しいままにしていた剣聖で、その恵まれた体格と極めた剣術によって、多くの戦いにおいて、多大な功績を残したとされているあの、剣聖ガルグボルグだと⁉


「驚いているようだな。まあ、無理もない。私は、何百年も前に1度死んでいるのだからなあ」


 心を読んだように、そう告げたガルグボルグにリーアは一瞬ぎょっとしたが、それを気にも留めず、続けて聞いてきた。


「なぜ、我がこうしてここにいるのか不思議だろう?」


 その言葉に、向こうが話をするつもりなら都合がいいと考えたリーアは、どうせならと色々聞いてみることにした。


「そうだ。なぜ、生きているんだ。それも………アンデットとして」


 リーアが、そう問うとガルグボルグは長々と話し始めた。


「この我を前に単騎で現れた貴様の勇気に免じて話してやろう。………かつてこの大陸で、最強の剣聖として名を轟かせていた我は、主のために剣をふるっていた。だが、この我をいないほうがいいと考えるものも多くてな、姑息な策略に嵌められた我は、数千という数の敵を前に一人で戦い続けて敗れてしまった。………だが、死んだはずの我は、真の主を得たのだ!!!目を覚まし、初めてあの御方を前にした瞬間、あまりの圧倒的な存在感に気が付いたら我は片膝をついて、あの御方の言葉を待っていたのだ。そう、我の全身の細胞が自然とあの御方を真なる主と認めたのだ!!!」


「貴殿ほどのものが、それほど酔狂にあの御方とやらに惚れ込んでいるということは、相当すごい方なのだろう」


「まったくその通りだ。どうだ?貴様も我とともに魔王様のために人類を滅ぼそうではないか」


 ガルグボルグは魔王について話したことで、気分がよくなったのか、楽しそうにそう提案してきた。だが、いくら時間稼ぎのためとはいえ、嘘でもその提案に乗ることはできなかった。


「悪いがその提案はそれこそ死んでも受けられないな。私には守るべき故郷があるのでね」


「それは残念だ。魔王様に恭順しないというならば、ここで死んでもらうしかないな」


 ガルグボルグはそう言い放ち、剣の握りに手をかけたが、本人が長々と話してくれたことで、時間稼ぎは十分にできた。目にもとまらぬ速さで飛んできた矢がヘルムの隙間を縫って、眼球に突き刺さろうとしたが、いつの間にか抜かれた剣によってそれは防がれてしまった。そして、その卓越した技量に感心したように、ガルグボルグは話した。


「ほう、なかなか腕のいい弓兵がいるではないか。女騎士よ、貴様の腕も見せてもらおうか」


「っ!ぐっ⁉」


 ガルグボルグは私との間にあった差を一瞬で詰めて、剣を振り下ろしてきた。私はとっさに魔力で身体を強化して何とか対応して見せたが、あまりの重さに苦悶の表情を浮かべてしまう。


「素晴らしい反応速度ではないか。我が生きていた時代でも、これに対応できるものは少ないだろう」


「ちぃっ!!」


 何とか剣をさばいて距離をとったリーアは、乱れた精神を集中させて再び、剣を構えて向き合う。上から目線なのがものすごく気に食わないが、実力は圧倒的に向こうのほうが上。守りに入ったら負ける!!!そう思ったリーアは、開いた距離を今度は自分が詰めて、剣を振るうが………


「剣の腕もなかなかではないか。実に惜しいな。今なら、先程の言葉を撤回することを許す。魔王様の配下にならないか?」


「断る!!!」


 時折、アランが弓矢で牽制をしてくれるが、それも容易くさばかれている。ゼロはまだか⁉と、ガルグボルグと相対する中で徐々に焦りが募っていく。もうそんなに持たないぞ!!!と内心で叫びながら、何とか剣を交わしていく。ガルグボルグはというと、まるで師匠が弟子に稽古をつけるかのように楽々と私の剣をさばいて、時折、内心肝が冷える剣撃を挟んでくる。だが、そんな激しい剣の打ち合いももうすぐ終わりかと思われたその時、ガルグボルグがリーアの逆鱗に触れることを口にした。


「はあ、全く実に惜しいな。貴様が男だったら、生前、我が届いた境地までたどり着けただろうに」


「黙れ!!!」


 リーアは我を忘れて、怒りのままに剣を振るう。技術も何もあったものではないそれは、ガルグボルグにとって剣を使う必要すらなかった。


「どうした?剣筋が乱れているぞ。まさか、男だったらという言葉に怒っているのか。そうだったら、申し訳ないな。この言葉を撤回するつもりは我にはない」


「黙れと言っている!!!」


 ガルグボルグは技術も何もあったものではないそれを避けながら、リーアの鎧を削っていく。リーアは怒りのままに剣を振るい続けるが、それが長く続くわけもなく、ガルグボルグによってつけられた傷から流れ出た血が足りなくなり、始めから全力を出していたこともあって、その場に突然電池が切れたように倒れた。リーアはそれでようやく頭が冷静になってきて、私はまたしても、と後悔をする。だが、そんなリーアに慈悲を与えることもなく、興ざめだと言って捨てたガルグボルグは、倒れ伏すリーアにとどめを刺そうと剣を振り下ろした。



………………



 だが、突然聞こえてきた声に、ガルグボルグは振り下ろす剣を止めてしまった。


「やめろぉぉぉぉぉぉお!!!」


「っ⁉なぁにぃい⁉」


「………よかった。間に合った」


 ガルグボルグは、凄まじい速度でやってきた者の一撃を受け止めるも、後方へ吹き飛ばされてしまうのだった。そして、リーアは聞こえてきた声になぜ⁉と驚愕しながら、自分を助けた、金髪碧眼の女の子を見上げるのだった。





 


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