4 王都襲撃
王城を後にした勇者パーティーは歩きながら、今後の予定について話し合っていた。魔王討伐に向かおうにも、まだお互いのことをよく知らないからだ。どの程度の実力があり、全員が一人一人が何ができるのかを把握している必要があった。その理由は、互いの実力やできることを把握しておかなければ、連携が取れず、とっさの事態にも対応ができないからだ。パーティーで戦うとはそういうことだ。それを抜きにしても、重大な問題があるわけだが。それはレイアのことである。魔王を討伐できるのは神の加護を有した彼女だけ。その彼女はつい先日までただの村人だったというではないか。どうしたものかと頭を悩ませるリーア達はとりあえずと、話をまとめた。
「まずはどの程度の連携が取れるのか、試してみないか?」
「賛成だね。まずは、みんなの実力がどの程度か把握しておきたいしね」
「ゼロもそれで良いか?」
「勿論だ」
レイア抜きで話がどんどん進んでいく。レイアはというと少し離れたところから、ついてきていた。表情も硬く、とても申し訳なさそうにしている。立派な装備や剣がなければ、誰も彼女を勇者だとは思わないだろう。それほど、今の彼女には覇気がなかった。
そんなレイアを見て、私はどうにかしないとなぁと思うが、その方法が思い浮かばなかった。長い間存在していても、こればかりは難しいと唸るのだった。レイアが勇者パーティーとなじむにはやはり実力を示すしかない。あの方法をとるべきかどうかと深く悩んでいたら、大きな鐘の音が王都中に響き渡るのが聞こえた。
「これは………どうしたものか」
「勇者パーティー結成初日にこれってマジかよ」
「面倒な」
「あの⁉、この音って、いったい………」
突然鳴りだした鐘の音に、レイアはいったい何事かと驚いていた。もちろん私もである。レイアが申し訳なさそうに、この音が何なのかについて尋ねていたが私も知りたかった。ただ、この鐘の音が良くないものであるのはリーア達もそうだが街の人の様子を見ていればわかった。
街の様子は鐘の音が鳴ってすぐにまさに混とんと化していた。もう終わりだと言わんばかりの表情で絶望する人、大きい荷物をもって逃げ出す人、親とはぐれたのかその場で逃げ出す子供、何かでもめている人、本当に色々いた。リーアは状況が理解できずに混乱しているレイアを見かねたのか、この状況の説明をした。
「レイア、この鐘の音はこの王都が非常事態に見舞われたときに鳴らされるものだ。今の時期にこの鐘が鳴らされるということは、おそらく、魔王軍が攻めてきたのだろう。だが、最前線が突破されたという話は聞いてないが………」
「今はそんな事を悠長に説明している時間はない。さっさと向かうぞ」
「あたいも賛成だね」
ゼロは辛辣に言い放ち、アランもそれに賛同した。リーアは一瞬逡巡するが、分かったと言い、わずかに聞こえてきた戦闘の音がするほうへ駆け出して行った。レイアはというと完全に置いてけぼりである。これは先が思いやられるなぁ、もうちょっとレイアにやさしくしてくれてもいいんじゃないと、む~と唸りながら私は静かに不満を抱くのだった。
「どっどうしよう……私、戦ったことないのに、どうしてこんなことに………」
レイアは青ざめた表情で、頭を抱えてうずくまってしまった。私は悪いほうに考えが向かっている彼女を見て、良くないと思った。
「これは………私が何とかするしかないな」
最悪の場合より状況が悪くなるかもしれないけど、私も覚悟を決めるかぁと腹を決めた私は、頭を抱えてうずくまる彼女に憑りついた。
………………
「これは………」
音を頼りに戦闘が起きているほうへ向かった私たちは、城壁の上にいた。そこからは、平野を埋め尽くすほどのアンデットの大群が見えた。冒険者や衛兵たちが力を合わせて戦っているが、状況は芳しくない。この国にいた力のあるものの多くは、最前線にいるからだ。王都に残っているものはというと、言うまでもないだろう。今すぐに敵を殲滅しに行きたいところだが、まずは状況を把握しようと考え、アランに声をかける。
「アラン、敵の首魁は見えるか」
「あぁ、あの一番奥にいるめっちゃ強そうなのが、ボスか?」
「俺にも見えた。あいつがこの大群の主で間違いないだろう」
ゼロも見えるのかと少々驚いたが、金色に変わった瞳を見てすぐに魔法かと納得し、頭を切り替えた。さらに詳しく話を聞くと、敵の首魁は推定2メートル前後の漆黒の鎧をまとった騎士然としたやつらしい。なにやら魔力が渦巻く水晶を片手に持っていることから、それで召喚をしたのではないかとゼロは推測していた。しかも、いまだに召喚され続けていることから、水晶の魔力が続く限り、アンデットは召喚されるとのことだ。早急に水晶だけでもどうにかしたいものだが、この大群を突破するにはどうしたものかと、考えていたらゼロが提案をしてきた。
「俺が一発、でかい魔法を打って奴の注意を惹く。リーアは奴との戦闘に備えてくれ。アランは俺が魔法で強化してやるからあの水晶を打ち抜け」
それを聞いて頷いた私たちを見て、ゼロはすぐに準備を始めた。魔法の中でも補助魔法については詳しくない私だが、こりゃすげえと、強化されていくアランの反応から、ゼロの魔法の技量がとても高いことが理解できた。これは頼もしいなと感心していたら、補助魔法をかけ終わったのか、それじゃあ頼むぞと言い残して、移動を始めた。アランと距離をとるためだろう。アランも移動をし始めたゼロを見て、狙撃に最適な場所へと移動を始めた。私は何があっても対応できるように、全体を俯瞰して見えるこの位置にとどまった。
さあ、どうなるかと戦場を見ていたら、アンデットがひしめく平野の中央で、大爆発が起きた。すさまじい衝撃波が伝わり、私の髪も風圧で巻き上げられる。爆発で巻き上げられた砂塵がはれると、そこには巨大なクレーターができていた。おそらく今ので半分ぐらいは倒せたのではないだろうか。周りの冒険者や衛兵たちも、突然の出来事にいったい何なんだ!と声を荒げて驚いていたが、目の前の光景を見て、いけるぞ!と歓声を上げていた。
本命は………と、アランが移動したほうへ顔を向けたが、やってやったぜ!と高らかに嬉しそうな声が聞こえてきたので大丈夫だろう。だが、それによって平野の奥から感じる威圧感が急激に跳ね上がったのを感じた私は、いよいよかと黒騎士との戦闘に備えて、城壁を降りるのだった。
………………
「聖剣様………」
レイアの状態を見かねた私は、レイアに憑りついてどうにか話をと考えていたのだが………今、私はまるで神を崇めるかのように、地面に両膝をつき、両手を固く結ぶレイアに祈られていた。なぜこうなった………と深くため息をついた私だが、これを説明するには少し前に遡る必要がある。




