表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英霊戦記 ~勇者召喚された幽霊は身体を借りて戦います~  作者: 猫まつり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/9

2 勇者パーティー


「これってもしかして……異世界転移ってやつ⁉しかも、勇者?召喚?」


 徐々に何があったかを思い出していった私は、今、自分が置かれている現状を理解しようと努める。今もなお、怒鳴り続ける偉そうなおっさんと怒鳴られるローブの人だが、今後に関わる重要な何かを言っていた気がする。話から推測するに、私は勇者召喚とやらで呼び出されたようだった。ただ、呼び出された私は幽霊であり、私が見えない彼らにとっては召喚が失敗に終わったと考えるのも無理はなかった。


 何やら大変なことに巻き込まれてしまったと、これから何かが起こる先々を憂う私だったが、同時に心が高揚していくのを感じていた。もしかしたら、また戦うことができるのではないかと。そんな気持ちに一喜一憂していると、偉そうなオッサンの横に控えていた、片眼鏡をかけた賢そうなおじさんが話し始めた。


「王よ。勇者召喚は見ての通り失敗、であれば、神託にあった彼女だけでも魔王討伐に向かわせるべきでは?」


「だが、宰相よ。また魔力をためれば、勇者召喚はできるのであろう?魔王討伐はそれからでも……」


「それでは国が持ちません。それに魔力をためると言っても、次の勇者召喚は最速で行えても10年後です。魔王軍の侵攻も現状ではギリギリで止められているにすぎません。」


「そうは言ってものう。……あれは……何というか……」


「王が心配なさる気持ちはよくわかります。ですが……」


 話を聞く限り、この国はそんなに余裕がないらしい。そして、彼らの言う彼女とはいったい誰なのだろうか。あまり、頼りがいがなさそうな感じで話しているが、そんな人を魔王討伐に向かわせていいのだろうか。というか、さっき怒鳴られてたローブの人、頭抱えて成功したはずなのにと、ぶつぶつ、つぶやいてるよ。怖っ。


「わかった。あの者に人類の命運を任せるのは不安しかないが、神託を信じて送り出すしかない。あの者を中心に勇者パーティーを編成せよ。そして、魔王討伐を成し遂げるのだ」


「承知しました。すぐに編成および招集をして参ります」


 そう言うと、宰相と呼ばれた片眼鏡のおじさんは、早々に部屋を後にした。ローブの人は、さっさと出て行け!と王にまたしても怒られていた。何というか、私のせいで申し訳ないという感情が湧いてくる。とりあえず、勇者パーティーのメンバーを見たいなと思った私は、宰相の後をついていくことにした。


 そして、それからの宰相は早かった。次々と部下らしき人たちに指示を出したかと思えば、パンを片手に書類仕事を始めた。これが仕事ができる男か、すごいなぁと感心しながら、処理していく書類を見る。だが、全然知らない文字だった。そして、ここで1つの疑問が生じた。なぜ私は彼らの言葉が分かるのかと。長々といろいろ考えた私は1つの結論を導き出した。もしかして、これが若者たちの言っていた、転生特典というやつではないだろうかと。ただ、私の場合は転移だけど。


 そうして、この疑問を自己解決し満足した私は、失礼しますと部屋に入ってきた男の言葉に耳を傾けた。


「勇者パーティーのメンバーが揃いました。今は来賓室にて待機していただいております」


「ご苦労。今すぐ謁見の準備に取り掛かる。勇者パーティーの面々にもそのように伝えてくれ」


「承知しました」


 宰相は、書類仕事を辞めると椅子から立ち上がり、早々に部屋を後にした。私は、勇者パーティーのほうへ向かった男についていった。部屋に着くと男は、失礼しますと扉を開けた。そこには、金髪碧眼の気の弱そうな女の子にローブを着た黒髪黒目のイケメン、鎧を着た銀髪赤目の女騎士に茶髪茶目の軽装な筋肉質な女性がいた。最初に目に留まった女の子以外は中々に強者の雰囲気をまとっていた。黒髪の子はおそらく魔法使いで、銀髪の子は剣使い、茶髪の子は弓矢と短剣使いってところかな。そう分析した私は、でも……と少し困惑した。金髪の女の子については全く分からなかったのである。服装からして、そこらにいた村人を連れてきたのではと疑ってしまうような恰好や佇まいをしていたからだ。


「勇者パーティーの方々が集まりましたので、謁見の準備をしております。準備が終わりましたら、呼びに参りますのでもう少々お待ちください」


 男はそう言うと、部屋を出て行った。少々の静寂が訪れたが、銀髪の子がその静寂を破った。


「王への謁見まで時間もある。それまで軽く自己紹介をしないか?……私は現騎士団長の娘のリーアだ。武器は剣を使う。よろしく頼む」


「あたいはアランだ。武器は弓と短剣をつかう。罠を仕掛けたり、気配を探るのも得意だ。よろしく」


「ゼロだ。見ての通り魔法使いだ。いろいろできる。よろしく」


「わっ、私は、レイアです!!!かっ体が丈夫なのが、取り柄です!!!」


「「「………………」」」


 レイアが気合の入った自己紹介をすると、再び静寂が訪れた。まあ、言いたいこともわかる。このメンツの中で、一人だけあまりにも場違いであるからだ。すると、リーアが皆が思っているだろうことをレイアに尋ねた。


「その……大変聞きづらいんだが、レイアは自分がなぜ呼ばれたかを理解しているか?」


 リーアがそう尋ねると、ふぅと小さくため息をついて、自己紹介をやり遂げたと満足げな顔をしていたレイアの表情に、また緊張が走った。


「えっと、わっ私は、村で家族と一緒に畑仕事をしていたら、君は神の神託によって選ばれた勇者であるって言われて、そのまま連れてこられただけです……」


「……それは本当か?」


「あっはい、そうです……」


 リーアとアランはそれを聞いて驚愕の表情を浮かべていた。まぁ無理もないよね。数百年生きてきた私ですら驚いてるんだから。ちなみにゼロはずっと本を読んでいた。まったく図太い神経をしているものである。それと、私は勇者召喚されて呼ばれたわけだけど、レイアも勇者とはいったいどういうことなのだろうか。異世界から召喚された私と、現地人である彼女の二人が勇者?またしても分からないことが増えたと嘆いたが、そんな私の疑問を解消するように、ゼロは話した。


「その女は女神の加護を持っている。魔王を討伐するには、神の加護を持ったそいつが直接とどめを刺すしかない。俺たちはそいつのサポート要員だ。どうにかして、そいつを魔王を討伐できるようになるまで、戦いながら鍛えるしかない」


 ゼロは本を読みながらそう言い切った。なぜそれをゼロが知っているのか聞きたかったが、私は幽霊である。聞いたところで私の声は聞こえない。憑りついて話しかけるという方法もあるが、今それをすると、より状況がカオスになる気がするので、やめておいた。まあ、私が聞かなくても今にも聞こうとしている人がいるからね。彼女らに任せるとしますか。


「ゼロさんや、なぜそんなことを知っているのか聞きたいんだけどいいかい?」


「すまないが、それについては話せない」


「………まあ、今はいいか。どうせこれから時間はいっぱいあるんだ。そん時に聞かせてもらうよ」


「悪いが、何度聞かれてもこの件については話せない」


「「………」」


 頑なに話そうとしないゼロに、アレンとリーアは怪訝そうな表情を浮かべるが、事情があるのだろうと思ったのか一息ため息をついた後、それぞれ何かを考えているようだった。なるほどね。レイアは信託とやらで女神から選ばれた勇者で、その神の加護を有していると。そして、魔王は神の加護を持ったものにしか倒せないと。つまりはそういうことだな!と、ただ、同じことを繰り返しただけではあるが、まるで自らその結論を導き出したように、ふむふむと訳知り顔でうなずいた私は、ふと気になってレイアのほうを見た。


 そう、今の彼女は………ただの置物と化していた。まるでその存在を悟られてはならないように、小さく息を潜めて微動だにしていなかった。ただの村人だった彼女が、突然、君は勇者だの魔王を討伐せよだのいろいろ言われて困惑しているのかもしれない。そう心中を察した私は、彼女を何が何でも守ろうと心に決めた。幽霊に何ができるんだと思う人も多いかもしれない。だが、そんな私にもできれば使いたくないが、最終奥義がある。本当にこれは最終手段であるため、使うことがなければいいが。そう考えていたら、先程の男が準備ができましたと部屋に入ってきた。


 いよいよか……よしっ!と気合を入れた私は勇者パーティーとともに、男の後をついていくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ