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行き来自由の戦国時代  作者: へいたれAI
第三章 永禄尾張の地で
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第16話 珍道中! なんちゃって仕事人と行く、楽田クエスト


 やれやれ、とんでもない旅の始まりだ。

 俺の隣を歩く大森は、すっかり「中村主水」になりきっている。時折、意味もなく襟巻をクイッと直したり、鋭い(つもりの)目つきで周囲をキョロキョロと見回したりしている。


 ……だめだ、こいつ。完全に、役に入り込んでいる。


「いいか、大森。神社に着いたら、お前は『山中の村を治める長』だ。俺が先に神官と話をつけて、お前を紹介する。お前は、どっしりと構えて、偉そうにしてればいい。分かったな?」


「お任せください、先輩! 俺の、この隠しきれない王のオーラで、神官ごとき、一発でひれ伏させてやりますぜ!」


「その王のオーラとやらが、ただのコスプレイヤーの勘違いじゃないことを祈るよ……」


 俺たちの珍妙な二人旅は、そんな不安しかないやり取りから始まった。幸い、道中は特に何事もなく、俺たちは荘厳な大縣神社の鳥居の前にたどり着いた。

 俺はまず一人で境内へと進み、前回顔を合わせた神官を探す。幸運なことに、彼は俺のことを覚えていてくれたらしい。


「おお、そなたは、先日の修験者殿。息災であったか」


「ご無沙汰しております。本日は、我が日頃世話になっている村の長を伴い、ご挨拶に上がりました」


 俺がそう言って振り返ると、鳥居の下で待機していた大森が、練習通り、ゆっくりと尊大な態度でこちらへ歩いてくる。見た目は、まあ、百歩譲って堺の豪商か、風流な浪人に見えなくもない。


「ほう、そちらが?」


 神官が、興味深そうに目を細める。大森は、俺の前に立つと、わざとらしく「ふん」と鼻を鳴らし、腕を組んでみせた。

 ……おい、その態度は、長というより、ただの感じ悪い奴だぞ。


「こやつが、我らが世話になる『山の民』を束ねる長にござる。以後、お見知りおきを」


 俺が必死のフォローを入れると、神官は、わずかに眉をひそめた。やばい、怪しまれてるか?


「……して、本日のご用向きは?」


「うむ。まずは、これなる品を、神前に」


 大森が、もったいぶった仕草で、背負っていた風呂敷を俺に渡す。中身は、俺たちがこの一ヶ月で採り溜めた、極上の干し椎茸だ。俺がそっと風呂敷を開いて見せると、神官の目がカッと見開かれた。


「こ、これは……! 見事な干し椎茸じゃ! これほど肉厚で、香りの良いものは、滅多にお目にかかれんぞ!」


 よし、食いついた! 俺たちの『山の幸』は、この時代でも十分に通用するらしい。


「つきましては、一つ、お願いが」俺はすかさず本題を切り出した。「この椎茸を、麓の市で売りさばきたいと存ずる。しかし、我らは市での作法も商いの勝手も分かりませぬ。何卒、神官様のお力で、然るべき相手へのお口利きを願えまいか」


 しばらくの沈黙の後、神官はにっこりと微笑んだ。


「よかろう。これほどの逸品を寄進していただいたのだ。無下にはできん。楽田の市を束ねる元締めに、わしから話を通しておいてやろう」


「「おおっ!」」


 俺と大森は思わず声を上げ、慌てて大森が長らしい口調を取り繕う。


「う、うむ! 大儀であった!」


 こうして、俺たちの最初のクエストは、上々の滑り出しでクリアとなった。神官から紹介状を受け取った俺たちは、意気揚々と楽田砦の城下で開かれている市へと向かった。そこは、俺たちの想像を遥かに超える活気に満ち溢れていた。


 紹介状の効果は絶大だった。元締めは俺たちを丁重に迎え入れ、持ち込んだ干し椎茸に驚くような高値を提示してきたのだ。差し出された、ずしりと重い銭の束に、大森の目が点になっている。初めての商売は、望外の大成功を収めた。


 すっかり気を良くした俺たちは、その足で武具屋へと向かった。村の防衛力を、少しでも上げておく必要がある。


「うむ。槍を数本と、刀を見繕ってくれ」


 大森がすっかり大商人になった気分で店主に声をかける。俺たちは、村に残る女性陣でも扱えそうな手頃な長さの槍を五本と、無銘だが作りのしっかりした刀を三本購入した。店先で、買い上げたばかりの刀を抜き放ち、ブンブンと振り回す大森の姿は、もう仕事人というより、ただの中二病だった。


 意気揚々と村へ帰還すると、屋敷では女性陣が総出で俺たちを出迎えてくれた。


「拓也くん! お帰りなさい! 怪我はなかった!?」


 母栖さんが、大森に駆け寄りその身を案じている。


「心配するな、詩織。この俺が、誰だと思ってるんだ?」


 大森がドヤ顔で胸を張る。そのラブラブっぷりを、茜さんと澄田さんが、やれやれ、といった顔で眺めていた。

 市での大成功と購入した武具を披露すると、皆から歓声が上がった。


 数日後。俺と大森、そして今回は澄田さんも加わった三人で、本格的な山中の探索へと出発することにした。

 目的は、新たな資源の確保と、周辺の地理の把握だ。


「この時代の、手付かずの自然生態系を観察できるなど、研究者として、これ以上の興奮はありませんから」


 澄田さんの瞳は、クールな表情とは裏腹に、好奇心で爛々と輝いていた。やれやれ、この子も大概、普通じゃないな。

 鬱蒼とした森の中を進んでいくと、前方の茂みが大きく揺れ、一体の鹿が姿を現した。かなりの大物だ。


「せ、先輩! クエスト発生です! レアモンスターですよ!」


 大森が、買ったばかりの槍を構えながら興奮気味に叫ぶ。俺が「馬鹿! 刺激するな!」と叫んだのと、鹿が突進の体勢に入ったのは、ほぼ同時だった。

 やばい! 俺は咄嗟に腰に提げていた対クマ用の超強力催涙スプレーを抜き放った。


「くらええええええっ!」


 プシューッ! オレンジ色の刺激ガスが一直線に鹿の顔面へと噴射される。鹿が悲鳴のような声を上げてもがく隙を、大森が見逃すはずがなかった。


「うおおおおお! チェストーーーーッ!」


 意味不明の掛け声と共に突撃した大森の槍は、見事に鹿の脇腹を捉えていた。鹿は一度大きく跳ね上がると、そのまま地面にどうと倒れ伏した。


「や、やりましたよ、先輩! 俺、やりました! 初めての、狩りだーっ!」


 無邪気に歓喜の声を上げる大森の横で、澄田さんが冷静に、かつどこか嬉しそうに状況を分析している。


「なるほど。カプサイシンを主成分とする、強力な粘膜への刺激物ですね。非殺傷兵器による威嚇と、物理的攻撃のコンビネーション。極めて有効な戦術です」


 やれやれ、俺の仲間はどうしてこうも肝が据わった奴らばかりなんだろうか。

 仕留めた巨大な鹿をどうするか。ここで再び澄田さんの知識が光った。


「嶺さん。この時代の狩猟民は、獲物を解体する際、まず血抜きを行います。でないと、肉がすぐに傷んでしまいますから」


 彼女が令和で買い込んできたサバイバル関連の書籍には、動物の解体方法が図解入りで詳細に記されていた。俺たちはその本を参考に、ナイフを片手に鹿の解体作業を開始した。流れ出る血の生々しさ、内臓の独特の匂いに、俺は正直吐き気を催しそうになった。だが、そんな俺をよそに、大森と澄田さんは淡々と作業を進めていく。


「先輩、これが肝臓ですね。レバ刺しにしたら、美味いかな?」


「大森さん、生食は危険です。寄生虫のリスクを考慮すべきです。ですが、加熱すれば、貴重なタンパク源になりますね」


 ……なんだ、この二人。俺は、この二人の底知れない適応能力に、驚きを通り越してもはや一種の恐怖すら感じていた。


 その日の夜、村では盛大な宴が開かれた。囲炉裏で焼かれる鹿肉の香ばしい匂いが屋敷中に立ち込める。

 自分たちで獲った獲物を、自分たちの手で捌き、食べる。それは俺にとって、少し複雑な、しかし忘れられない経験となった。


 この一件で、大森はすっかり自信をつけたようだった。彼はそれから一人で何度も楽田の市へ通うようになり、干し椎茸だけでなく、塩や簡単な木工品などを売りさばき、着実に村の財産を増やしていく。

 そして、その稼いだ金で、かいがいしく皆のものを買い揃えてきた。子供たちには暖かい古着を、そして最愛の恋人には、鮮やかな茜色の着物とかわいらしい花の髪飾りを。


 屋敷の真ん中で堂々と繰り広げられる甘々なラブコメ劇場を、俺と澄田さんは顔を見合わせ、盛大にため息をついた。

 あの、能天気なだけが取り柄だと思っていた後輩は、この一ヶ月と少しで、すっかりこの世界の生活に馴染み、一つの家族を支えるたくましい「長」へと成長していた。


 そんなある晩、俺は茜さんを一人、令和に送り返した。

 その時の、あのキス。

 思い出して一人顔を赤くしていると、澄田さんから「……何か、面白いことでも?」と、氷点下の視線を向けられた。

 やれやれ。この村の人間関係は、戦国の世よりもよっぽど複雑で難しい。


 その後、俺たちの商いの中心は、本格的に清州の城下町へとシフトしていくことになる。そのためには、まずインフラ整備が必要だった。


「俺たちの村は山の中腹にある。これは防御には有利だが、商いには不便だ。そこで、まずは麓までの道を整備する!」


 俺はシャベルやツルハシに加え、とっておきのエンジン式チェーンソーを披露した。けたたましいエンジン音と共に、硬い丸太が豆腐のように切断されていく光景に、木地や山窩の人々は呆然としていた。

 俺たちの近代土木技術と、彼らの山に関する知恵と労働力が合わさった結果、麓までの道は驚くべき速さで形になっていった。


「道ができても、肝心の荷車がないんじゃ意味がない」


 清州で調査した結果、荷車は非常に高価であることが分かった。


「……よし。決めた。荷車は、俺たちで作る」


 俺の脳裏には、木地たちの顔が浮かんでいた。彼らの職人技と、俺たちの知識があれば、きっと可能だ。

 このプロジェクトで、異様なほどの熱意を燃やしていたのが澄田さんだった。


「嶺さん! 車軸の固定方法ですが、ここに緩衝機構を導入することを提案します!」


 彼女が広げた設計図には、竹を束ねて作った弓なりのパーツが描かれていた。竹の弾力性を利用した、簡易的なサスペンションだ。


「よし、それ採用! 早速作ってみよう」


 俺たちは早速、板バネの製作に取り掛かった。澄田さんの指揮のもと作業を進めるうち、不意に彼女の手と俺の手が触れ合った。


「わっ、す、すまない……」


 俺は慌てて手を引っ込めた。澄田さんも顔を赤らめて俯いてしまう。普段のクールな彼女からは想像もつかない反応に、俺の心臓はさらにうるさくなった。

 数日後、俺たちの知識と技術の結晶、新型荷車第一号がついに完成した。実験は、大成功。板バネの効果は絶大で、乗り心地も引き心地も、これまでのものとは比べ物にならなかった。


「やりましたね、嶺さん!」


 澄田さんが、満面の笑みで俺の腕を掴んだ。


「ああ。澄田さんのおかげだ。ありがとう」


 俺がそう言って微笑み返すと、彼女ははっとしたように腕を離し、再び顔を赤らめた。茜さんの情熱的なアプローチと、澄田さんが時折見せる可愛らしい一面。俺の心は、二人のヒロインという、かけがえのない荷物を乗せて、ぎしぎしと音を立てていた。


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― 新着の感想 ―
話が飛びすぎてビビったw 現代に帰ったのに過去に来てて一緒に歩いてるし子供とか集落出来てるし5.6話は飛んでますよねこれ
いや、展開に無理どころか絶対1話抜かしてる。
前回と、今回の間にもう一つ話が有った? 急展開過ぎる読者が置いてきぼり、村人なんで増えてるの? 子供達?どこから来た? 構成が雑すぎる。 次回説明会で補足してほしい。 なんか気持ち悪い感じ。
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