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28 告白2

 ノアール殿下は、小さいときに耳にした王妃の「なぜわたくしが王妃になれたのかしら」という言葉が忘れられなかったのだという。その後月桃宮が完成し、そこに住むことになったリュネイル様のことを耳にして、ますます忘れられなくなったのだそうだ。

 殿下が生まれる前、当時王太子だった国王の寵愛を一身に受けていたのはリュネイル様だった。大勢がリュネイル様こそが最初の子を生むに違いないと噂し、次の王妃、すなわち国母はリュネイル様だと誰もが信じて疑わなかった。ところが実際にはノアール殿下が最初の子として生まれた。

 そのことを知った殿下は「もしかして」と考えたらしい。――もしかして、自分の前にも子がいたのではないか、と。

 はじめは自分の考えを否定していた殿下だったが、成長するにつれて否定できなくなっていった。要因はいろいろあったのだろうが、王妃が有力な貴族の出だったこと、その家が娘を王妃にするため様々な画策をしていたこと、なによりもっとも寵愛を受けていたはずのリュネイル様に子ができないはずがないと誰もが思っていたことが大きかったに違いない。しばらくの間、王宮では「もしや最初の子は消されたのではないか」という噂まで流れていたそうだ。


(そういうことがきっかけで、いまの殿下の考え方にたどり着いたということか)


 だから国王の最初の子が王太子になることにも、生まれ持った能力だけでαの優劣が決められることにも疑問を抱いているのだろう。もしかすると、自分は最初の子ではないから王太子の資格はないと思っているのかもしれない。


(一人で抱え込むには重すぎる内容だな)


 リュネイル様は子ができない体なのだと公にされていれば、殿下が思い悩むことはなかったのかもしれない。しかし公にすればリュネイル様は国に帰されていただろうし、ラベルミュール国との交易も止められてしまうだろう。それをリュネイル様がよしとするとは思えない。なにより国王とリュネイル様は想い合っているようだから、引き離されないように何かしら手を打ったはずだ。


(その結果としての月桃宮という意味もあったのか)


 誰にも会わせず閉じ込めていれば、そのうちリュネイル様のことを話題にする人たちはいなくなる。むしろ未来のない妃として憐れみ、誰も触れなくなるだろう。それは同時に危害を加える者がいなくなるということでもある。


(いや、それだけじゃないな)


 それだけなら、リュネイル様が男のΩだと公にしなかった理由にはならない。僕には殿下の曾祖母のことが関わっているのではと思えて仕方がなかった。

 いまだに男のΩだったことで存在を快く思っていない王侯貴族がいることは、以前ベインブルの近くで遭遇したαたちの態度でよくわかった。そういった悪意からもリュネイル様を守りたかったのではないだろうか。


(陛下は心の底からリュネイル様を想っていらっしゃるのだ)


 しかし、いくら想い合ったとしても子ができないのでは仕方ない。だから国王は王妃と閨を共にし、殿下が誕生した。急に自分を閨に呼んだ国王の様子に、王妃も何かしら思うことがあっただろう。だからこそのひと言だったのだ。


(なんというか、胸が痛むことばかりだな)


 僕の想像や推測が混じっているものの、あながち間違っていないのではと思っている。


「わたしが子どもの頃から思っていることは推測の域を出ていない。陛下に尋ねれば済む話なのだろうが、それもできなかった。すべてを知るのは……恐ろしかったんだ」


 つぶやくような殿下の最後の言葉に、ますます胸が痛くなった。何もかもが国王のせいだとは思わないが、少なくとも国王が何も言わなかったことで殿下は長い間思い悩み、傷ついてきた。内容が内容だけに誰にも相談することができなかったのだろう。

 リュネイル様とは子どもの頃に数回顔を合わせたことがあるそうだから、そのたびに「もしかして」と思い自分を責めたに違いない。優しい殿下なら、きっと自分のせいだと考えたはずだ。


「殿下、大丈夫です」


 目の前の体をぎゅうっと抱きしめた。リュネイル様のことを僕から話すわけにはいかないから、いまはこうして抱きしめることくらいしかできない。


「大丈夫です。殿下は立派な王太子ですし、誰もが認める優秀なαです」

「……そうだろうか」

「そうですとも。もちろん生まれ持った能力もあるんでしょうが、殿下は大勢の言葉に耳を傾け、少しでもよい国にしようと考えていらっしゃいます。それは誰もができることではありません。大陸には何人もの王太子がいますが、殿下ほど王太子として努力されている方はいないと思います」

「努力、か。そうだな。どの王族αよりも優秀であらねばならないと強く思い、そうなるように様々なことをやってきた。それを努力と言うのなら、そうかもしれない」

「努力できることは立派なことです。殿下もそうおっしゃっていたではありませんか。それに諦めないことも大事です。僕は子どものときに一度絵筆を折りかけたことがありますが、その後思い直して努力を続けてきました。そうして諦めなかった結果がいまの自分だと思っています」


 体を離し、どうだと胸を張る。すると殿下が「国一番の画家の言葉は説得力が違うな」と小さく笑った。


「元王太子だった僕から見ても、殿下はとても優秀な王太子だと思います。αだということを抜きにしても心からそう思います」

「そうだといいんだが……いや、これまで見て見ぬ振りをし続けてきた間はどうしようもない王太子だったはずだ。そのぶんもがんばらなくてはな」

「殿下ならできます。もちろん僕も助けます。それに殿下は人として素晴らしい方です。もし僕がΩじゃなくて、それに殿下がαでなかったとしても、きっと惹かれたと思います……って、あの、そのくらい殿下は優秀というか、なんというか、あはは」


 最後のほうは言わなくてもよかった気がする。本心ではあるが、面と向かって言うのはさすがに照れる。

 正面から顔を見ることができずに少しだけ俯いていると、殿下の手が両頬を包み込んだ。そうして持ち上げられた僕の目の前には、柔らかな笑みを浮かべる殿下の顔があった。


「やはり、ランシュでよかった」

「殿下」


 近づいてくる殿下の顔に、「あぁ、やっぱり造形美が過ぎる顔だなぁ」なんてことを思った。

 そういえば、アールエッティ王国に送った殿下の肖像画の感想が少し前に届いた。両親からの手紙には「婿殿に似合う美しい装飾品の製作を始めた」と書いてあり、装飾品の絵が数枚同封されていた。両親の手紙よりも先に届いた妹の手紙には「美しいにも程がありますわ! 眼福です!」といった言葉が並んでいたことを思い出す。


(僕の家族は全員、美しいものが大好きだからな)


 きっと三人揃って興奮しながら殿下の話をしているのだろうなと思ったら、つい「ふふっ」と笑ってしまっていた。それに少し驚くような顔をした殿下だったが、そのまま三度啄むように口づける。こういう優しい口づけもいいなとしみじみ思った。


「心が少し晴れやかになったような気がする。ランシュのおかげだな」

「それはよかったです」

「さすがはわたしの妃だ」

「あはは、ありがとうございます」

「さて、そろそろ寝ようか。明日も何かやることがあるのだろう?」

「はい。首飾りの出来を少し見ておきたいですし、アールエッティ王国に工房の件で手紙を書いておこうと思っています。それにスケッチと、それから絵の下書きも少しだけやろうかと」

「ランシュは精力的な妃だ。だが、くれぐれも無理はしないように」

「はい、心得ています」


 もう一度口づけを交わしてから殿下と一緒に横になった。今夜も僕の頭は殿下の腕の上で、どうやらこういう寝方が最近の殿下のお気に入りらしい。僕としては殿下がきちんと休めないのではと心配になるが、ほのかに香る濃いミルクの香りを嗅ぐとホッとできるからか拒めないでいた。案の定、今夜も殿下の熱と香りにすぐさまうつらうつらし始める。


「足元を盤石にするためにも、あの男を本格的に呼び戻すにはよい頃合いか。それに、今度は忠犬らしく従うだろうしな」


 殿下の声が聞こえた気がしたが、そのままぐっすりと眠ってしまっていた。




 今日も殿下は多忙だということで、昼食は一人で取ることになった。ゆっくりと食事をし、食後のお茶を味わいながら今朝届いたΩ専用の首飾りを確認する。新しく立ち上げた専用の工房の作品としては初めてのものだが、なかなかよい出来に仕上がっている。これなら王宮にも無事に納められるだろう。


(さて、そろそろ行くか)


 昼食後のこの時間なら手が空くということで、殿下に首飾りの確認をしてもらおうと部屋を出た。もし疲れているようなら首飾りの件は後日にしよう。急ぐわけでもないから殿下の負担にならないように進めていきたい。

 そんなことを考えながら後宮の出入り口に差しかかったところで、よい香りがしていることに気がついた。視線の先には最初の頃にスケッチしていた庭がある。そういえばスケッチの最中に姫君たちにあれこれ言われたな、なんてことを思い出した。少し前の出来事のはずなのに、随分昔のことのように感じられるから不思議だ。


(咲いている花たちはすっかり秋のものになりつつあるな)


 目で確認することはできないが、このよい香りの正体は金木犀に違いない。アールエッティ王国ではあまり見かけない花だが、妹が「この香りが好きなの」と言って金木犀の香水をいくつか持っていた。香水を使わない僕も、絵のイメージになるからと何度か部屋に振りまいて楽しんだことがある。


(この香りのように、殿下の心も晴れやかになっているといいんだが……)


 話をしたあと気分が少し晴れたと言っていたが、そう簡単に吹っ切れる内容ではないはずだ。その証拠に、たまに何か考えるような表情を浮かべている。それなのに相変わらず殿下の執務はぎゅうぎゅう詰めで、僕よりも殿下の体のほうが心配になる。

 いよいよヴィオレッティ殿下以外の側近も考えたほうがいいのではないだろうか。外交はヴィオレッティ殿下に任せるとして、問題は内政のほうだ。むしろ今後はそちらのほうが大変になってくるだろう。とはいえ、王族をほとんど知らない僕にはよい候補者を提案することすらできない。


(どうしたものかな)


 後宮を出て絨毯が敷かれた廊下を歩き、執務室の扉の前に立つ。コンコンと扉を叩くと「入れ」と殿下の声が聞こえた。


「失礼しま……」


 言葉と一緒に扉を開ける手まで止まってしまった。なぜなら殿下のそばに久しぶりに見る顔があったからだ。


「ランシュ?」

「あ、いえ、失礼しました」


 軽く頭を下げてから扉を閉め、改めて殿下とその人物を見る。


「席を外しましょうか」

「いや、かまわない。それにランシュにも知らせておこうと思っていたところだ」

「……しかし、わたしの顔を見ては不快になられるでしょう。それに、いまは大事な時期だと聞いています」

「ランシュはどうだ?」

「あ、いえ、僕は大丈夫ですが……」

「だそうだ、ルジャン」


 僕を少しだけ見た黒目はすぐに伏せられ深々と頭を下げたのは、殿下の従弟であり王弟子息であるルジャン殿下だった。


 ノアール殿下の侍従が用意してくれた紅茶を飲みながら、向かい側に座るルジャン殿下を見る。以前と違う雰囲気に感じられるのは穏やかな表情のせいだろうか。いろいろ落ち着いたからこうして王太子の執務室にいるのだろうが、それにしてもと驚いた。


(無期限だと聞いていた謹慎が解けたということか?)


 王太子への反逆に対する処分が、そう簡単に解けるとは思えない。しかし僕が入室したときに書類の束を持っていたということは、何かしらの仕事で執務室にいたということだ。仕事を任されているということは処分が解かれたということでもある。


(たしかにルジャン殿下が表舞台に戻れればと思っていたが……)


 本当にノアール殿下のそばにいても大丈夫なんだろうか。

 ルジャン殿下に襲われたときのことはぼんやりとしか覚えていないが、ノアール殿下のことを相当憎んでいたように感じた。だからこそ罰せられるとわかっていても後宮を人に襲わせ、さらに僕をも襲おうとした。そんな人物が、すぐに気持ちを入れ替えたりできるものだろうか。たとえ何年経っても根深い感情はそう簡単に消えるものじゃない。


(でも、表情は落ち着いて見える)


 まるで憑き物が落ちたみたいにも見えた。あれこれ考えながらチラチラとルジャン殿下を見ていたら、隣に座るノアール殿下が僕の膝をポンと叩いた。


「ルジャンなら大丈夫だ」

「殿下」


 僕が心配していることが伝わったのだろう。殿下の言葉のあとにルジャン殿下の言葉が続く。


「あのときは申し訳ありませんでした。いえ、謝って済むことではないとわかっています。今後も顔を合わせないように気をつけます」


 静かに深々と頭を下げる姿は、やはりあのときのルジャン殿下の印象とはまったく違う。まるで別人のようだと見ていると「自分でしたことながら、思い出すだけでゾッとします」と顔を上げたルジャン殿下が口にした。


「愛する人が、自分を憎む人物にうなじを噛まれたらと想像するだけで体が震えるようです。それをわたしはあなたにしようとした。いくらノアール殿下に思うところがあったとはいえ、許されることではありません。わたしがノアール殿下の立場だったら、相手のαを殺していたことでしょう」


 物騒な言葉にギョッとした。


「ルジャン、そういう言葉は子に障る」

「申し訳ありません」

「いえ、あの、驚きはしましたが大丈夫です。それより、その……」


 もうノアール殿下への憎しみはないのか、そう尋ねたかったが言葉に出せなかった。そんな僕の気持ちを察したのか、目を伏せたルジャン殿下が口を開く。


「いまのわたしにはノアール殿下への憎しみはありません。いえ、元々抱いていた感情自体、憎しみではなかったのでしょう。周囲からの期待や羨望、同じように向けられる嘲笑や侮蔑、自分自身への絶望や失望、弟たちへの嫉妬、そういった気持ちを殿下にぶつけることで生きる望みを見出していたのです。αの頂点としてこの国に君臨することになるノアール殿下に、自分を認めさせることを生きる目標にしてしまった。それがそもそもの間違いでした。わたしは愚かで弱かったのです」


 目を伏せたままのルジャン殿下の言葉は厳しいものだったが、声は静かでとても落ち着いている。おそらく謹慎中に何度も己を振り返って出した答えなのだろう。


(ルジャン殿下がそこまで追い詰められたのも、生まれつきの能力で優劣が決められる弊害なのかもな)


 これではαの誰もがつらい思いをすることになる。そもそも王権制度だけでも優劣の差が激しいというのに、そこにα性の優劣まで加わればどれだけ生きにくくなることだろう。


「今回のことで、自分がいかに愚かだったのかよくわかりました。父からは、なぜ兄弟の中でわたしだけが王宮へ行けるのかよく考えろと叱責もされました。父に叱られたのは十年以上振りでしたが……なぜでしょうね、涙があふれるほど嬉しいと思ったのです」

「だから言っただろう? おまえの弟たちはただのα(・・・・)だ。それだけで王宮に上がれると考えるほうが愚かなのだ」


 ノアール殿下の言葉にルジャン殿下が静かに頭を下げる。以前とはまったく違う様子に再び驚いていると、さらに驚くことを告げられた。


「それに、わたしにも愛する伴侶ができるのです。彼のためにも、これまでのことを償う意味でも国に身を捧げる決意をしたところです」

「伴侶……?」


 そんな話は聞いていなかったが、もしかして以前から妃候補がいたのだろうか。いや、それでも謹慎処分中に結婚を許されることはないはずだ。そもそも相手のほうが将来のないルジャン殿下との婚姻を断るだろう。


「それにいま、彼と……」


 王弟子息であり貴重な王族αであるルジャン殿下は、ヴィオレッティ殿下同様にΩと結婚しなければならないはずだ。それなのに“彼”というのはどういうことだろうか。


「ランシュには伝えていなかったが、ペイルル殿からルジャンに正式に結婚の申し込みがあった」

「え……? あの、ペイルル殿というのは、シリュス王国から来ているあのペイルル殿ですか?」

「わたしも驚きましたが、先日シリュス王国から正式に親書が届きました。その前にペイルル殿自らが陛下に直接この件を話したらしく……。さすがにそこまでするとは思いませんでしたが、ここまで慕われて断ることなどできません。あぁいえ、決して流されての婚姻ではありません。わたしもペイルル殿ならばと、いまでは心から思っています」

「そう、でしたか」


 まさかそんな話になっていたとは思いもしなかった。それに、ペイルル殿はてっきりノアール殿下に思いを寄せているのだとばかり思っていた。


(そういえば、庭の話で銀の……とか言っていたか)


 あれは銀の耳飾りを愛用しているルジャン殿下のことだったのか。


「もしかして、蓮の池の庭でお会いになったのですか?」

「えぇ、初対面はあの庭でしたね。ちょうどノアール殿下の執務室へ書類を届けるときに声をかけられたのです」


 ペイルル殿は蓮の花が咲いているのを見たがっていて、いつが一番の見頃なのかと通りかかったルジャン殿下に尋ねたのだそうだ。「それなら朝の早い時間帯がいいですよ」と教えたのがきっかけとなり、その後も何度か言葉を交わすことになったのだという。しばらくして早朝の庭で一緒に蓮の花を見る約束をし、さらに交流が深まったらしい。


「そうでしたか。そういえば、久しくペイルル殿の姿を見かけていない気がします」

「いまはわたしが住む紅葉宮に滞在していますから、王宮ではほとんど見かけないと思います。ですから、もうランシュ殿下の心を乱すようなことはないでしょう。安心してください」

「いえ、そういうつもりでは……」


 僕がペイルル殿に何かしらの思いを抱いているとルジャン殿下は思っているのだろう。たしかに嫉妬したこともあったが、そんな気持ちはもう欠片も残っていない。


「お二人の挙式が無事に済んでから、わたしたちも式を挙げる予定です。それまでに、わたし自身の信頼を上げておかなくては挙式には至れないでしょうけれど」

「それは問題ない。少なくとも王太子付きとなれば、周囲は何も言わないだろう」

「それでも一度は殿下に弓を引いた身、その事実は死ぬまで消えることはありません」


 伏せられていた視線がスッと上がった。そこには以前のような激しい感情も後悔の念のような色も見えない。ただ何かを決意するような真っ直ぐな瞳が、正面に座るノアール殿下をしっかりと見ている。


「こんなわたしを取り立ててくださったこと、心から感謝しています。ペイルル殿からも、今回の件ではノアール殿下が陰で尽力してくださったのだと聞いています。殿下の力添えがなければ、現状はまったく違ったものになっていたことでしょう。すべてにおいて感謝しかありません」


 決意を秘めたようなルジャン殿下に、ノアール殿下がゆっくりと頷いた。


「今後の働きに期待している」


 ルジャン殿下に微笑みかけるノアール殿下の横顔を見た瞬間、なぜか背筋がぞわっとした。一瞬だけだったが、奇妙な感覚にうなじまで粟立った気がする。「変だな」と首を傾げながらも、いまはノアール殿下に優秀な側近ができたことを喜ぼうと気持ちを切り替えた。

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