表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

其の二 北条早雲

 その頃の京の都は、応仁の乱の戦禍で、焼け野原になっていた。


 だが、そこに起つ、一人の武士がいた。伊勢新九郎。後の北条早雲である。


 女性忍者くのいちとなった私は、果心居士の指示で、この新九郎の密偵を務めていた。


「そのたは美人じゃのう。夜の面倒もみてくれるのか?」


「いえ、私は、そういう事は無し!」

「でも、その美貌。我慢できないな」


 なおも新九郎が、いやらしい目で私を見るので、懐から刃物クナイを出して、


「切り落としますよ」


「まっ、待ってくれ。俺は、まだまだ、これから立身出世しなくてはならない身だ」


「今でも結構、良い身分でしょう」


 新九郎は、名門・伊勢氏の出身である。今は、室町幕府将軍・足利義尚の直属で、奉公衆という役職に任命されていた。


「いやあ、まだまだ。俺は城の主になり、国盗りをしたい」


「あまり強欲だと身を滅ぼしますよ」

「滅ぶも本望。ただ一度の人生なり」


 と、快活に笑う新九郎は、姉の嫁ぎ先の今川氏の家督争いに介入するために、駿河に下る。


 実は、この家督相続問題は複雑で、姉の子の龍王丸と小鹿範満の争いには、以前にも一度、新九郎は介入していた。


 その時、龍王丸は六歳で、龍王丸が成人するまで、範満が家督を代行するという事で決着していたのだが、


 しかし小鹿範満は、龍王丸が十五歳を過ぎて成人しても、家督を戻そうとはしなかったのだ。


 1487年。新九郎は、再び姉の要請を受けて、駿河に下った。


 女性忍者くのいちの私は、それより先行して駿河で密偵活動を行い、そして、


「小鹿範満には、すでに支持する勢力はありません」


 と、駿河に到着した新九郎に報告する。


 その後、新九郎は龍王丸を補佐すると共に石脇城に入って同志を集めた。


 機を見て軍を挙げた新九郎は、小鹿範満と、その弟を討って、龍王丸の家督を取り戻す事に成功する。


 この功績で、主君筋の今川氏親より、新九郎は駿河国の興国寺城を拝領する事となった。



 それ以後の伊勢新九郎は、戦国の梟雄として鬼神の如き活躍を見せる。


 1493年、伊豆討ち入り。

 1495年、小田原城奪取。

 1498年、伊豆平定。

 1504年、立河原の戦い勝利。

 1516年、相模全域を平定。


 因みに、伊勢新九郎が生きている間には、北条早雲とは名乗っていない。北条姓を名乗ったのは嫡男の氏綱からで、新九郎も後世に、北条早雲と呼ばれるようになったのだ。


 1519年。前年に家督を嫡男・氏綱に譲った新九郎は、臨終の床につきながら、


「なぜ、そなたは歳をとらぬ?」

「私は呪術を受けた、魔物です」


「そうか。魔物とは、こんなにも美しいものなのか」


「また、ご冗談を」


「私が身を滅ぼす事もなく、この乱世を駆け抜けて来れたのも、そなたの活躍があったからこそだ。今日まで、ありがとう」


 最後に、そう言って、北条早雲は静かに息を引き取った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ