05-02 「これがキミのオーリッチです。」
「うわっ。」
結は途中からやってきたシリンダになにやらこれやら言われながら最終チェックをされ、お城の裏口付近に放り出された。
「何もそんなにすることないじゃないか!!一応これでも、シリンダがLOVEの王様の客人なんだぞ。くそっアッカンベーだ!!シリンダのかあちゃんでべそ!!」
自分でも大いに、お子ちゃまなセリフだとは思ったが、くやしいんだからしょうがない。だから叫んでやった。
そう地団駄を踏んでいると後ろから気配がして振り返った。
「アホ。足手まといだから来なくてもいい。うざい。」
と旅装に身を包んだウィリアムがこちらを一瞥し、見下したように言った。
「んだっとぅう!!」
後ろを向けたウィリアムに結が飛び掛かろうとする。
ガシッ
その両腕を誰かが引きとめる。
「まあまあ。ウィリアムはジョシュア君のこと嫌いじゃないですよ。仮にそうでしたら、話しかけもしないと思います・・。」
振り返ると、結の腕を止めたルーカスがインテリメガネの奥からスカイブルーのアイズをこちらに向けていた。
ルーカスが困った顔をして、ハアハアしながら一所懸命結を必死に止めようとしているのをみて抵抗するのをやめて言った。
「ほんとにそうだかね・・。まあいいさ。こんな、面白いこと捨てておける訳がないし。姫様が見つかったらいーっぱいからかってやるんだからブツブツ。姫様盗っちゃうのもいいかも。フフフフッ。」
抵抗を止めたと思ったら、結がそう肩を震わせ不気味な微笑みをしているのをみてルーカスは不思議そうな顔をする。今日のルーカスは魔法使いのローブのようなもの(後で聞いたら、どうやらこれも旅装の種類の一つらしい。)を身にまとっており、彼の栗毛の髪の色だけダークブラウンにすればハリー○ッターを演じるダニ○ル・ラドク○フに似ていた。
「ああ。ジョシュア君。これがキミのオーリッチです。」
「オーリッチ?」
「はい。荒野の移動の際には必ずと言って良いほど交通の手段として使われます。翼は退化しており、飛行することはできません。しかし、後肢が発達しているため、速い速度で走ることができますよ。」
そういって、彼の後ろにいたものを指した。
それは・・体格の良いダチョウでした。
ダチョウがバサバサと目を瞬かせて、首を傾げるようにこちらを見ていた。
「あれSW003。ジョシュア君が気になるのですか?」
(いやいや・・。「明らかにこれおいしいの?」って顔だから!ヨダレたれてるし・・。)
思わず、引く。
「よかったですね。SW003。良いパートナーができそうで。」
そういって話しかけているが、ダチョウは無視で、横にあったルーカスのローブの端を口に咥え、マジッという顔をしてベッと吐き出した。それに気付いたのか、それとも気付かなかったのかわからないがルーカスは話を続ける。
「ちなみに彼らはS&W社からの借り物でしてね。僕が分かりやすいように名前をつけてみました。ウィリアムのがSW001、僕のがSW002。そしてこの子がSW003。なかなか良い命名でしょう?」
「・・・・・。」
そのあまりなナンセンスな命名に結は唖然とする。SW001なんてゼロゼロナインや戦隊ロボットでもあるまいし・・・・。いくらただのダチョウだって、そんなの可哀想な感じがするのは気のせいでしょうか?それなので私はSW003じゃダチョウちゃんが可哀想だし、そんなキャラじゃない気がして、そうだなぁ・・・サンちゃんと呼ぶことにしよっと。
どうですかね?