01-01 私とタヌキの攻防戦
結はベルサイユ宮殿のようなところで、鏡の前に立っていた。
「さて、なぜ私はロココなドレスを着せられているのでしょう?
① 明○村でコスプレ中である。
② 実はどこかのお貴族の堕とし子である。
③ シンデレラストーリーで成功したのである。
④ アーネストサトーに連れられてお外の国に来ちゃった。
正解はいかに!! つづきはCMのあと!!」
っていうか、これ誰…
誰か…教えて…。
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今日は土曜日。大学が休みのため、週2のお寝坊の日。もう日はすっかり昇っている。大欠伸をして立ち上がり、窓を開けた。心地の良い風が吹きこんでくる。朝の清々しさに遅く起きてしまったことにちょっぴり後悔した。リビングから郵便物と新聞紙を持ってくるとベットの上にダイブする。そして、郵便物と新聞紙を広げた。
『○○総理、△△商事から賄賂か!?』という大きな見出しが新聞の一面踊ってる。
「政治家ってそんなもんなんかな?あの大久保さんや吉田さんの時代は違うと思ったんだけどな。命懸けでぶつかって作り上げた日本政府がぐずぐずになってると考えるとやりきれない気持ちだろうね。そう考えると400年続く江戸幕府を作り上げた徳川家康はすごかったんだな。あんな狸オヤジなのに…。
盛者必衰の理をあらはすだからな。
誰にも、時代の波に逆らうことはできない…。」
ちょっと前だけど、すごく昔のあの頃を思い出すように、窓の外に目をむけた。
気が済んだのだろうか新聞を畳んで、今度は郵便物を広げ寝転がった。
すぐ目に付くのは振り袖の表紙。
そう今、私は19歳。
来年、二十歳の門出を祝う歳なのである。
「あ~あ。ついに私もこんなのを着る歳になるとは…。速いなぁ。もう少し十代を楽しみたかったな~。いっそうのことピーターパンになりたい。ぐふっ」
ベットに顔をうめた。ぐふっ…休日さいこー。
その時だった何かが揺れるような音を聞いたのは。
ガタガタ
ん?
音のする方に目を向けると、押し入れの襖が音を立てている。ふむ。これはやばい感じがする。そして、こういうことにはかかわらないほうが良いと経験と勘がいっている。何も見てないし、聞いてない。何もなかったように、もう一度新聞を広げて真剣に睨み始めた。
ガタガタガタ
ますます、襖の音は大きくなる。
そう私の不幸はこの音を聞いた時、すでに決まっていたのです。
私は無駄の抵抗だとは思ったが、その不快な音が入ってこないように耳をふさいだ。
すると、今度は頭の中に声が響いてきた。
「自分にウソは美容にわるい。結。わしは見えるし、声も聞こえるはずじゃ。イヒッッッッッッ」
「ッチくそ」
半べそかきながら私はもうどうにでもなれと投げやりに振り返った。そこには小学生でも知っている1603年に江戸幕府を開いた徳川家康が押し入れの上段に肘掛けに寄りかかりながら座っていた。肖像画にちょこっとそっくりなその人は金糸で刺繍が入った絹の上等な着物を着ている。ロマンスグレー的なカッコよさのカケラもないが、キンキラキンなら良いという豊臣秀吉の趣味よりは良いだろう。サイズがお店にある子どもくらいの狸の置物なのはご愛嬌。
「久しぶりだな。結。そろそろお主がワシに会いたいと思って、会いに来てやったぞ。うれしく思え。」
だああれがあんたとなんかあいたいもんですかあ!!
「ったくこの人は …。」
ついこめかみを押さえてしまった。
んなんで、こんな有名人が現れても驚かないって?
それはですね。
一様、顔見知りです。私。
実は私、タイムスリップやパラレルワールドに行きやすい体質で、ある時この腹黒タヌキ殿に連れ出されたことがあります。カクカクシカジカありまして大変苦労いたしました。
いい大人の癖にいたずらが大好きで、いじけたらなかなか立ち直ってくれないし、仕返しは倍以上、それでいて甘えんぼ。極めつけは、私で遊ぶこと(←本人談)が一番のお気に入りとか言うから、たちが悪い。
もう、この歳で禿げそうです。かなり苦労してます。マリーアントワネットみたいに白髪になったらどうしようというのが最近の悩みになってます。
一応、まだ10代なのに。
私の怒りはベスビオ火山の噴火前のようにぐつぐつと煮えたぎっていた。家康公の前に正座をすると頭を垂れた。
「結でございます。」
「ん。面をあげ。申されよ。」
「権現様は何度、様々な面倒ごとに結を巻き込むおつもりですか?この度は違う方にお譲りしとうございます。」
家康公は傷付いたという素振りをして、目元に袖を添える。
「結よ。わしはこんなにお主のことを好いているのに…。わしの心も解ってもらえないとは…よよよ。」
上目使いに目をパチパチすることも忘れない。あまりの臭い芝居に動きが止まる。何を勘違いしたのか家康公は恥ずかしそうに頬を染めた。
思わずせり上げてくる吐き気に口をおさえる。
「う゛。吐く。やめてくだい。権現様がやっても全然可愛くありません。キショイだけです。」
私はその上に言葉の冷水をふっかける。
「ひどい…。酷すぎるぞ…。おぬし。わしは…。もうだめじゃあああああ!!」
あっ狂いだした。
ここで気を抜いてはいけないと今まで経験が言ってうる。
家康公は自ら取り付けた上から照らしたスッポットライトの下で狂いだした。どっから持ってきたのか…。
律儀にタリラ~ン ハナカラギュ〜ニュ〜と『トッカータとフーガニ短調』のBGMを流しているところがとてもわざとらしい。
「ワシが腹黒タヌキ。タヌキ しくしくしく」
床にのの字を書き始める。
ムシムシ。
家康公から目を逸らし、手元の新聞に戻す。
「たぬきだって…。シクシク、4949 志久志久…。」
わざときこえるぐらいの声の大きさでブツブツ言っている。しかも、こちらを時折見ながらとくる…。実にわざとらしい…。
ワザとなのはわかってはいるが、家康公のショックそうな感じにに多少の罪悪感を覚えてしまった。
ちょっとぐらい聞いてあげるくらいいいかな…。
今考えれば、これがまずかったわけだが…。
しめた
後ろを向いた家康公がニヤリと笑っていることも梅雨知らずに。
諦めのため息をつき、家康公の方を見た。
「で、権現様。どういったご用件でこちらまで。」
落ち着いた表情で話しかけた。
家康公はパッと向きなおると話し始めた。
「いや、何ちょっと孫のような結に贈り物をしようと思ってな!オッフォフォフォ。」
家康公は無邪気に笑う。
っちょっとまて。さっきまでのしおらしさはどこにいったのか…。
「権現様。落ち着いてください。権現様からの贈り物なぞ私には勿体無く、いただけませぬ。」
これはヤバい。絶対何かある。誠に残念というオーラを全面に出しつつ断ってみた。
家康公は奇妙な笑みを浮かべながら、私の心の叫びを無視して続ける。
「そう申されるな。ワシがお主の為に心を込めて選んだ品じゃ。」
あやしい。あの顔は実にあやしい。絶対、断ろう。
「権現様。私にはもったいなさ過ぎます。違う方をお選びになった方が良いのではないでしょうか?」
家康公が立ち上がり結の目の前に降り立った。
「結。おぬし、ワ・シからの物がもらえないと申すのか!
それどころか見てもくれぬと言うのか…。」
瞳をウルウルさせて乙女もビックリの駄々コネ攻撃である。
ううっ。今度こそは負けるもんか!!
私はサッと顔を家康公から背けた。
( チッ。結よ。これならどうじゃ!!)
「結のバカ!!」
乙女チックに涙声で告げると袂で涙と鼻水を拭いて走っていってしまった。
腕は外向き、足は内股。
必殺!ぶりっ子走り!
かわいくない。
どこの乙女だよ。最近の家康公は少女漫画にでもはまっているのだろうか?
「は~。たく。」
ホント世話の焼ける将軍様だ…。
結局、根負けし声をかけてしまった。
「殿。見るくらいなら…「それはまことか!」」
立ち直り速すぎだ。健康食品バカのじーちゃん。
「結にならおじいちゃまと呼ばれても結構じゃ。」
とまた、恥じらいながら、家康公が言った。
「いや、呼んでないし、今後一切呼ぶ予定もない。」
っていうか19の娘がわざわざおじーちゃまなんて呼ぶかよ?あえてスルーしよう。
「っで、そのぷれぜんととは?」
「おおそうじゃ。これがぷれぜんとじゃ!!」
と家康公は包みをガソゴソとあけると、中身を結に投げ付けた。
「おわ~。手がすべったあ!!!!!」
(結め。散々 ワシを目の仇にしおって、
ちょっと逝ってこい!!)
↑なんか間違っていませんか????
「この腹黒タヌキめ!!謀ったなああああ!!!!」
と、結は眩しい光に包まれて消えた。
「結ならあの世界をどうにかする手伝いになるだろう。
頑張るのじゃゾっ。」
はい。森実です。
お初にお目に掛かります。
今、再編中です。
結ちゃん、マスマスたくましくなっています。
4649お願いします。