表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/8

第三幕:調査

「では、時間もないから、ここから先は三手に分かれましょう。私はまだダンスホールに残っている人に、話を聞いてくるわ」


 特別指導室から出た私は、ジェームズとニーナにそう提案した。


「じゃあ俺は、【心の対話(ドリトルトーク)】で、校舎の周りにいるフクロウに話を聞いてくるぜ」

「ああ、それは助かるわ」


 フクロウだったら夜目もきくし、怪しい人物を目撃してるかもしれないしね。


「わ、私は女子寮に行って、話を聞いてくるね」

「うん、よろしくね、ニーナ」


 ニーナは人当たりもいいし、女子生徒から話を聞くのに適役だわ。


「……健闘を祈りますよ、エリシア」

「? あ、ありがとうございます」


 サリバン先生が、少しだけ憂いを帯びた表情で、そう言った。

 サリバン先生?

 ま、まあいいわ。

 今は時間が惜しいもの。


「では、30分後にまたこの場所に集合しましょう。解散!」

「オウ!」

「うん!」


 さあて、ここから先は時間との勝負ね。




「まったく……、これから先、どうしたら……」

「俺なんて、卒業したら殿下の側近にさせてもらう約束だったんだぜ……」


 私がダンスホールに戻ると、入り口付近で三人組の男子生徒が、輪になってブツブツ愚痴を言い合っていた。

 いつもナイトハルト殿下と一緒にいた、取り巻きの三人だ。

 よし、ちょうどいいわ。

 まずは彼らに話を聞いてみましょう。


「ちょっとよろしいかしら」

「え? あ! こ、これはエリシア様! こ、このたびは、何と申し上げていいか……」

「いえ、私はこの通り、元気モリモリなのでお気になさらず」

「あ、はぁ……」

「それよりも、何点かお聞きしたいことがあるのだけれど、いいかしら?」

「あ、はい。俺たちでよければ……」

「ありがとう。単刀直入に言うわね。私は――殿下を殺害した犯人は、マーガレットの他にいると思っているの」

「「「えっ!?」」」


 三人の顔に、驚愕の色が浮かんだ。

 さもありなん。


「それを前提に考えて、どうかしら? 犯人に心当たりはない?」

「心当たり……、ですか。さぁ? お前は?」

「いや、俺も全然」

「俺も俺も! 殿下は、その、ちょっと抜けてるところはありましたけど、誰に対しても優しい方でしたし、恨みを買うような人じゃなかったと思います」


 うん、その点は私も同意見ね。


「では質問を変えるわね。あなたたちは――殿下とマーガレットが男女の関係になっていたことは、知っていたの?」

「「「――!!」」」


 三人とも、蛇に睨まれた蛙のような顔になってしまった。

 おっと、イケナイイケナイ。

 脅すつもりはなかったのに。


「大丈夫、別に知っていたからといって、あなたたちを糾弾しようなんてつもりは欠片もないから安心して。私はただ、真実を知りたいだけなのよ」

「あ、はぁ……、そういうことでしたら。……まあ、正直、最近殿下に女性の影があったことは事実です」

「ほう? というと?」

「『若い女性にプレゼントするなら、何がいいかな?』的なことを、最近よく訊かれてたんです。もしもエリシア様へのプレゼントだったらそう言うはずですから、『若い女性』と濁してる時点で、エリシア様以外の女性へのプレゼントなんだと察しました……」

「ふむ、なるほどね」


 実際最近殿下からプレゼントをいただいたことはないし、十中八九マーガレットへのプレゼントを探していたと見ていいでしょう。


「ありがとう、よくわかったわ」

「あ、いえ」


 恐縮している三人に頭を下げて、私は彼らと別れた。

 その後もダンスホールに残っていた何人かの生徒に同じ質問をしてみたものの、これといった成果はなかった。

 そうこうしているうちに約束の時間になってしまったので、私は一旦集合場所に戻ることにしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バナー


バナー
― 新着の感想 ―
[一言] エリシアさんの語彙でシリアスが吹っ飛ぶんですがww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ