ソフィアが来た
6話 ソフィアが来た
「ドン・イマド・スケーダ!」
ソフィアさんは呪文と共にカードをゴーモンに投げ上げた。
すると、カードはゴーモンの頭上に上がると円を作りグルグル回りながらゴーモンの周りに降りてきた。
何度かの閃光が走り、ゴーモンは、力がぬけるように倒れた。
ボクを絞めていた尻尾からも力がぬけた。
「どこのどいつだ出てきやがれ!」
監督が腑抜けたゴーモンの着ぐるみを何度も踏みつける。
が、もとから人など入っていないのだ。
監督は、踏むのをやめ、着ぐるみファスナーを開けた。
「ウソだろ〜カラだよ。誰も入ってねぇ」
「だから監督。これまでのコトも含めて普通の盗難なんかじゃないんですコレは、超常現象です」
ああ言ってしまった。超常現象なんて信じたない監督。呪われてるだのなんだのと言うとキレるので、最近はその手の言葉はタブーになっていた。
「すみませ〜ん、ちょっとどけてくれますぅ」
ソフィアさんが、カード拾いはじめた。
「悪いわねカナちゃん、そちら側に落ちたの拾ってくれる」
「ボクも拾いました。ハイ。コレは、なんのカードです。トランプでもない。文字や絵があるけどタロットとは違いますよね」
「はい、祖母から受け継いだ物で正しくはよく知りませんが『魔』には、とても強いカードです。でも普段は私の大事な商売道具なんです」
ソフィアさんは枚数を数え始めた。
「ここまで見せられると、な。異常なのはわかる。だが、なんでこんなおかしな事が俺の周りで起こるんだ。誰か、今回の公演は呪われてるなんてぬかしている奴がいたな。いったい何が何を呪っているんだ? まったくもって意味がわからん」
「あなた、誰かに恨まれたり。誰かを傷つけたりしてません?」
「ああ、俺はそんなコトしない。なぁカトー」
「たまにあります。灰皿投げたり、紙コップ踏んづぶしたり、ボクの首を腕で……」
「バカ、ソレは、スキンシップだ。わかんねぇの。カトー以外にしてねぇだろ」
「あのボクは加藤岡で……」
「言いにくいんだカトーでいいだろ。ところであんたが、ウィッチ・パラノイアのソフィアさんか」
「ウィッチ・パラダイスです。まあ私は店には出てませんけど。二階の占い部屋で……」
「ごめんなさいソフィ。監督には何も話してなくて。さっきやっと」
「はあ、まあその事は。で、カナちゃん。どうなの、ココ?」
「ハッキリ言って危険です。何か良くないものが来てます」
「そお。ここは、クロなわけね。モリリン、聞いた通りよ」
「今回の事でわかりました。ソフィなんとかして!」
「と、言われても。私はただの占い師だから……」
「ソフィお願い。このままこんな奇妙な盗難が続いたら公演が出来なくなるわ。警察なんかあてにならないし。監督ぅそれは困りますよね」
「ああ、やっと自分の作品が出来るんだ。今でもギリギリ不完全なキャラクターでリハしている。取り戻したり出来るなら……」
あ、なにやらパトカーのサイレンが。今の騒ぎ、誰か通報したのか。
パトカーと普通車が駐車場に入ってきた。
「近所の住民から、なんだか騒がしいと通報がありまして。北川越署の大口です」
この前現場検証に来た女刑事ではない。小太りの若い刑事だ。
「ココの責任者は?」
「俺だ」
「なんでもバチバチと火花が飛んだとか」
「あ、ちょと効果で花火を。そんな事より聞いてくれ刑事さん。今日もイリュージョンみたいな盗難があって、そちらに連絡しようと」
「また、目の前で消えたと」
「ああ、どうしたらあんな事出来るのかね刑事さん。これじゃ公演もあぶない、早くなんとかしてくれ」
「トリックとかは、なんとも。ああ、鑑識でも泣いてるんだ。何一つ出てこない。本当にドロボーが……。そちらで、なにか心当たりないの?」
「ソレは、どうゆう意味です? 刑事さん。盗難はデマだと。ウチのスタッフにドロボーなんていません!」
珍しいく森尾さんが怒った。
「そんな事、言ってませんよ。落ち着いて下さい」
「ごめんなさいね。こないだの現場検証で何も出なかったから鑑識さんたちが……」
このまえ来た美人の刑事さんが普通車から降りてきた。たしかこの人は。
「あら、真加部」
そうだ真加部愛刑事だった。え、ソフィアさんの知り合い。
つづく