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マペット劇団オケラ座

4話 マペット劇団オケラ座


 マペットとは、あやつり人形のマリオネットと、手を入れて動かすパペット人形の名称を合わせた造語で、中には大きな着ぐるみにワイヤー等で吊り手足やシッポをあやつる物もある。

「マペット」を考案したと言われているは、アメリカの子供向け教育番組「セサミストリート」の故ジム・ヘンソン。

 着ぐるみ劇に一工夫、二工夫して、ただの着ぐるみとは違うまるで生き物のように動く創作人形たちの演劇や映画が作られ。そのマペットのショーに魅せられた日本人が、いた。


 流山涼平という。彼は本業は映画やテレビドラマのプロデューサーで、監督や脚本家としても成功している才人。

 最近は女子アイドルグループをプロデュースして、大きな成功をし、勢いに乗ってる。

 その彼が作ったマペット劇団「オケラ座」。

 その第一作目の公演を見て、テレビ会社の演出家を辞めて入って来たのが、今回の演出担当になった南部洋介という男だ。


 裏原の「ウィッチ・パラダイス」から来たという少女は渋谷カナと名のった。

 渋谷かな? 本名なのか。 


 なんだか、この場所の異様さが、わかると。

 ちょっとした、霊能力者かなんかあるのか?

 でも、カワイイ子だなと、ボクの第一印象だ。


 彼女は稽古場をキョロキョロした後、首から下げたポーチからスマホを出し、メールでも確認してから。稽古場の中を歩き出した。


 森尾さんと監督が、彼女についてまわってる。


「スゴイですね稽古場に舞台があるんですね、あのこの舞台でちょっと前に何かありました?」

「ええ、団員が、着ていた着ぐるみが、皆の前で消えました」

「消えた?」

「ああ、着ぐるみだけが消えて中身のボケたヤローだけが残った。どういうトリックなんだ。わかるかお嬢ちゃん?」

「トリック……。手品じゃないと思うので、そういうものは……」

「残像みたいなのが見えます。ココに居たものの気配が、向こうに移動してます」


 渋谷カナは、そう言って稽古場の出口の方を指差した。


「ヤツが走って稽古場から逃げたのか? そんなの見えなかったぞ」


「ふ〜ん。とにかくこの場には今は居ません」

「渋谷さん、ソフィの助手と言ってたよね。なんか『力』が、あるのね。あのコ、何も言ってなかったから」

「すみません。メールがありました。ソフィアさん前の仕事がおしてココに来るのが少し遅れるそうです」

「そうなんだ。私がソフィに話をした森尾です。ソフィは大学の同期生で友人なの。こちらは監督の南部さん」

「あらためてウィッチ・パラダイスの渋谷です」

「そのウィッチ・パラノイアってーのは何なんだ? 森尾、そっちの説明を聞いてないぞ」


「あの、ウィッチ・パラダイスです!」


「ウィッチ・パラダイス自体はあまり関係ないんです。そこは、魔女グッズのお店で。そこの占い部屋で、仕事しているのが私の友人のソフィア佐伯という女性なんですけど、超常現象とかオカルトに詳しいコなんです」

「ソフィアさんは、白魔女なんです」

「お嬢ちゃんは、その白魔女の助手ってわけだな」

「そうです。わたしはソフィアさんに助けられて今はウィッチ・パラダイスでバイトしてます。あ、ソフィアさんの助手もしてます」


「あのボクもウィッチ・パラダイスのソフィアさん知ってます。たしか雑誌に載ってましたよね。美しすぎる占い師と」

「ほおカトーも知ってるのか。美しすぎる占い師だって、会ってみたいもんだな」

「今、来ますから」


 森尾さんの友人なのか、ソフィア佐伯。たまたま美容室で見た女性雑誌に載ってたんだよな。

 綺麗な人だった。ココに来るのか。本物が見れる楽しみだな。


「ちょっと外、見てもいいですか」


 渋谷カナは、稽古場のドアを開けて外を見た。そして。


「あの外の建物は?」


「あれは倉庫です。劇に使うマペットや小道具が収納してあります。あそこからも何体か消えてます」


「入れます?」


「はい。加藤岡君、鍵取ってきて」



 埼玉県警北川越署。


「真加部さん、どうでした。オケラ座、行ってきたんでしょ」

「大口ぃあそこは、おまえが担当になるはずだろ。盗難だし。なんであたしが……」

「前の事件が動いたもんで、すみません。あ、でもなんかうれしそうですね?」

「まあ、行ってはみたが、なんの成果もない」

「指紋とか、なんか出なかったんですか」

「ああ、話を聞けば聞く程おかしな盗難よ。密室での盗難。ホシがどうやって入って、どうやって逃げたか。まるでわからないってヤツに、目の前で物が消えたとか、まるで手品みたいな犯行なの。鑑識の連中も嘆いていたよ。おてあげってね」

「ただの盗難事件ではないと。それ、内部犯行のせんもありますね」

「だね。もしかしたら公演の宣伝とか……昔なかった? 映画かなんかの衣装とか盗まれて話題になった」

「あ、ソレ怪獣映画の着ぐるみじゃなかった」


 川越市内で起きた殺人事件を担当していた俺は、この奇妙な盗難事件を受け持つ予定だったが、たまたま、まえの事件の容疑者発見の知らせで署を出ていた。

 その時にオケラ座から盗難届がでて、そこに居た真加部さんが行ってくれた。


「あたしさ、あのオケラ座の公演、去年の。観に行ったのよね。面白かったよ。大口は知ってる」


「知らないです。人形劇でしょ」

「まあね、でも文楽みたいなのや、マリオネット、着ぐるみを使ってやる冒険ファンタジーだから、NHKとかで観る人形劇じゃないよ」

「そうなんですか。真加部さんが面白いなら興味ひきますね。一度見てみたいな」

「公演がDVDで出たのがあるから今度貸そうか」

「是非!」


               つづく

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