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98話


 「さっきのお姉さん、僕の気配に気がつくなんてすごいね。隠れることには自信があったんだけど…」


 フォノスは頭をかきながら苦笑いで顔を出す。まぁ、あのカルミアだしな…普通の人なら気がつかなかっただろう。


 「あの子はカルミアと言って、ちょっと特別な存在でね…色々と規格外なんだ」


 「そっか…ねぇ、お兄さん。僕も、お兄さんの特別になることは出来るのかな?お兄さんの仲間に」


 苦笑いを浮かべていたフォノスの表情は真剣そのものに変わっていた。どうやら本気らしい…


 「どうしてそう思ったんだい?」


 「あれから、お兄さんが言っていた言葉がずっと頭をグルグルしているんだ。僕は、ここで育って、ある程度の戦闘をこなせる冒険者になれれば良いかなって思ってた…やりたいこともなかったし、探しても見つからなかった。けど、お兄さんの話を聞いてから、初めて僕のやりたいことが生まれた気がするんだ。僕の友達をあそこまで可愛がってくれたのも、お兄さんが初めてだった。とっても嬉しかった」


 友達とは、あの毛玉犬のことかな?可愛いから、なでたくらいの記憶しかないが…どうやら、そうだったとしても、フォノスにとっては、嬉しいことだったようだ。


 「ふむふむ、なるほど…だからこの機会に強くなりたいと?それがフォノスの目的かい?」


 フォノスは首をふって訂正する。


 「少し違うんだ。強くなりたいのもあるけど、それ自体が目的じゃないんだ。うまくは言えないけど、お兄さんが目指している景色を僕も見てみたいんだ。冒険者になるために強くなるんじゃない…お兄さんとその景色を目指したいから強くありたい」


 フォノスは拳を握りしめて、決意を込めて言葉を発した。その時――


 「バフ!バフバフ!」


 「おいおい、取り立て先に魔物が住み着いてやがるぜ…ケケケケ!」


 「いっちょ前に道を塞ぎやがって…邪魔だ。魔物は討伐しなきゃいけないよなぁ…?やっちまおうぜぇ~!ヒャハ!」


 教会の入り口付近にチンピラが二人。その足元には、例の毛玉犬がいた。毛玉犬は、チンピラ共を教会の中に入れないよう体を張ってバフバフ吠えている。


 「クリュ!」


 『クリュ』はあの犬の名前だろうか。フォノスが全速力で教会の入り口に駆けた。俺もそれに続く。


 「お前たち!クリュにひどいことしたら、僕が許さないぞ!」


 チンピラ共は毛玉犬からこちらへ目を向けて、面白いことを見つけたと言わんばかりの目をする。…こいつら、まさか……


 「おやおや、教会は何時から魔物の住処になったんだぁ~?シールドウェストの条令違反だなぁ!?町に魔物を手引したって言いふらして教会を潰してやってもいいんだぞ?ああん?だ~れも、立場が弱い孤児院モドキなんて匿ったりはしないんだぞ?分かってんのかぁ~?家賃だって滞納してんじゃねえか。借金、増やしてやろうか…?クケケケ」


 「クリュから離れろ!クリュとは何の関係もないだろ!」


 チンピラの挑発に、思わずフォノスが向かっていこうとするが、チンピラがクリュの足を持ち上げ、懐から大きいサイズのナイフを取り出した。


 「おっとぉ~!?…動くんじゃねぇぞ……?少しでも動いてみろや。この魔物、掻っ捌くぞ」


 「バフバフ!?キュン!キュン!」


 足を持ち上げられたクリュがもがくが、体が小さくて非力なのか全く抵抗できないでいる。


 「や、やめろ!何が目的なんだ!目的が達成できればそれでいいだろう!クリュは何も危害を加えていないだろう!!」


 フォノスは今にも泣き出しそうな顔で、叫びに近い声をあげて手を伸ばすが、チンピラがナイフをちらつかせると、思い切れずにためらう。…くそ、どうしようもないのか?


 「目的だぁ~~ん?そんなの、お前ら目障りな孤児が、そうやってギャンギャン泣いて叫ぶのが見たいからに決まってんだろう!恨むなら、約束の金も用意できない教会を恨むこったなぁ。魔物なんて飼っている余裕あんのかぁ?ムシャクシャしてくるぜ。そうだなぁ…この魔物には犠牲になってもらおうか~?」


 「ケケケ…どうせならいたぶって殺そうぜ…!」


 「そいつはいい!」


 チンピラ共はクリュを何らかの見せしめにすることに決めたようだ。さすがにこれは放っておけない


 「おい、お前たち。そんなことしたらタダじゃ済まないぞ」


 「あぁ~ん?部外者は引っ込んでろよぉ。あと、お前も動いたらこの魔物を殺すぞ」


 「孤児のガキ共々、そこでいたぶられるのを見ていろ…クケケ」


 「俺は、ギルドBランクのサトルだ。事情は分からないが、お前らがやろうとしていることは人間として間違っている。今ならまだ間に合う。やめるんだ!!」


 「うっせえ!BだかCだか知らねぇが、ムシャクシャしてんだ。この魔物は町に危害を加えるかもしれねぇだろう?だから俺たちが討伐してやるっつってんだ」


 だめだ…頭のおかしい連中に何を言っても伝わる訳がない。少しでも動いたらナイフでクリュが斬られてしまう。どうにかして助けないと。…くそ!


 「まずは一発だぁ!」


 「キャン!キャン!…バフ…バフ」


 チンピラはクリュを殴り始める。一人が足を掴んで、一人が殴ってを交互に、見せつけるように…


 「おらぁ!もう一発腹に殴ってやるぜえ!」


 「ギャ…!……キュン」


 チンピラがクリュへ容赦ないパンチをかまして更にいじめる



 「うほぉ!いいの入ってんなぁ!!次はオイラだ…ヘヘヘ」




 「やめろ…」



 フォノスの拳が、体が震える



 チンピラは弱い者いじめを止めない



 「やめろと言っている」



 チンピラは残酷に笑っている



 「うわぁあああ!やめろおおおお!」



 フォノスは我慢の限界に達したのか、普段の冷静なイメージからは想像もつかない叫び声をあげた



 「僕の友達を、これ以上、傷つけるなぁあああ!!」



 フォノスが走り出し、チンピラはナイフを振り上げる。その時――



 *一定条件を達成したため フォノスのクラスチェンジが可能になります*



 そうだ。これだ…俺にはこれしかない



 「フォノス…待たせてごめん。クラスチェンジだ!!!」



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