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92話


 「うちらのギルドからBランクが出たのはいつぶりだぁ~!?」


 「さてなぁ、それこそギルドマスター以来じゃないかぁ~」


 「めでてぇ!めでてぇ!」


 「この酒とツマミは最高だなぁ!?」


 俺のパーティーがBランクに昇格することを聞いて、その場の冒険者たちが自分のことのように祝ってくれる。あまり関わりは無い人だけど、同じギルドの仲間だ。こういうときに盛り上げてくれるのは素直に嬉しい。


 どうやら、Bランクに昇格すること自体、あまり無いようだ。最高はAランクだろうか?Sランクとかあったりしたら目指しがいがあるな…。冒険者たちが俺の近くで騒ぎまくるものだから、受付のお姉さんが話を進められず怒っている!


 「皆さん!お静かに!まだ話は終わってませんよー!」


 お姉さんの一声で、完全に酒が回っている冒険者たちは、笑いながら併設されている酒場エリアへと戻っていく。騒ぎたいだけな説あるな……でも嬉しかったので後で一杯奢ってやろう。


 「コホン…失礼しました。サトル様は、既に当ギルドから受けられる優待は全て受けている状態ですが、Bランクになりましたので、他国でも同様のランクとして活動が可能です。更に、サトル様限定ではありますが、別荘を格安でご紹介できます」


 「行くかどうかは別としても、他国でもBランクとして同じように活動できるのは嬉しいですね。気になるのは、やはり別荘ですね!うちも大所帯になってきましたので、拠点は欲しいと思っていたところです」


 「うんうん、そうでしょう!ギルドの有望株がずっと宿屋暮らしじゃ、示しがつきませんもの。私、申請とかもろもろ頑張っちゃいましたっ!本来であれば、こんなサービス受けられませんもの!」


 「受付のお姉さん、ありがとうございます!本当にいつも助かっています。今度、何かプレゼントしますね」


 この人にはお世話になりっぱなしだが、特にお礼も出来ていなかった。別の町へ出向いた帰りにでも、お土産品を買っておくことにしようかな。


 そんなプレゼント作戦を脳内で進行させていると、お姉さんの耳がピコピコしているのに気がつく。受付のお姉さんは獣人なので獣耳がついているのだが、嬉しいときはそこがピコっと動くようだ。今の顔は平静を装っているので、耳の件は見なかったことにしよう…。


 「お、お仕事ですので、全然、大丈夫です!でも、貰えるものは、貰っておきます…!!コホン…。お話を続けますね。別荘のお話については、候補地を絞っておきましたので、改めてお話するお時間を下さい。イミス様を含め、人数分のBランク証明のカードも追加で発行申請を行っておきますので、完成したら折を見てお渡し致します。―そして、今回の依頼ですが…」


 「本題ですね。手紙では騎士冒険者の育成機関で有望な人物を見つけてほしいと書かれていました」


 「はい、相違ございません。シールドウェストでは領主様のご意向によって、冒険者や騎士を育成する組織があります。サトル様もご存知の通り、この町は未開の地と蛮族王の領土に最も近い場所に位置するので、日々魔物や賊との戦いが絶えません」


 「そうですね…実際に他の土地に行ってみてからは、シールドウェストは特に戰場の仕事が多い場所だって改めて思いました」


 「そこで、シールドウェストでは特別に、行くあてのない子や、戦うことを生業にしたい子を集めて、無償で育成をしています」


 「無償で!?それはすごいですね。でも大丈夫なのですか?」


 「もちろん、リターンを期待しての投資です。町への見返りとして、卒業後は騎士か冒険者、適性のある方へ就いてもらいますので…。今回はそこへ通う子供たちの隠れた才を、発掘して頂きたいのです」


 「戦いに向いている人は何人くらい必要なのですか?どれくらい強ければ問題が無いかも聞いておきたいですね」


 「そうですね…できればすぐに活動できるパーティーをひとつ。サトル様の独断で結構ですので、作って頂きたいのです。その後、通常通りこちらのギルドへ依頼をもらいに来て下さい。最低ランクの依頼をフォローなしでクリアできれば達成という扱いで問題ないと思います。もちろんそれ以上の逸材がいれば…それに越したことはないでしょう」


 まぁ、仲間になったカルミアやサリーが人外レベルに強くなっていくし、こんな短期間で成果を上げ続けていれば、俺の能力にある程度察しがつくのは理解できる。子供で最低ランクのクリアとなると、本来は不可能というか何というか…めちゃくちゃな要求だが、まぁ能力について分かってきた今なら可能ではあるか。


 「…分かりました。少し気になる点もありますが、その依頼を受けたいと思います」


 「ウフフ…ありがとうございます!サトル様なら受けて下さると思っていました。学び舎は、戦を司るヘラヘクス神教会の隣に併設されています。大通りから近い大きな建物なので、すぐ分かると思います。学び舎の名前は『ヘラヘクス神教戦闘学校』です。よろしくお願いします!」


 依頼の説明とイミスの冒険者登録を済ませて、ギルドを後にする。成果期間は三十日程度もらったから、だいぶ余裕がある。今日は俺だけで先に見て回って、後日みんなを連れて行こう。


 「イミスはこの後、魔石の店を見ていくんだろう?」


 「うん!スカーレットの強化か、新しい装備用ゴーレムを作れないか試してみるよ!それにしても…大きな町は久しぶりだから嬉しいなぁ~!ねぇねぇ、もう行ってもいい!?色んな所見てみたいの!」


 イミスはキョロキョロと物珍しそうに周囲を見て回っていて、完全にお上りさん状態だ。俺が言えた立場じゃないけどね…。ここ、シールドウェストは活気ある町だ。ずっとゴーレムの村で酒場をまわしていたのなら、そりゃそうなるか。


 「あぁ、良いよ。今日は自由とする!行ってよーし!」


 「やったー!スカーレット、行くよぉ~!!」「マスター、お待ち下さい」


 さて、俺も俺でやることがある。まずはヘラヘクスの何とか学校とやらに偵察へ行ってみよう。


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