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91話


 御者の頑張りによって最短時間でシールドウェストに到着した。町は相変わらずの活気で、大通りは多種多様な種族が歩いており、今日向かう場所の話や近くで出現した魔物の話などが聞こえてきた。なんだか冒険者らしき者の数が増えたような気がするぞ。


 俺がギルドで報告している間はカルミアたちには自由にしてもらうことにした。カルミアは専属鍛冶師のガルダインに会いに行くようだ。サリーは薬屋を開いていたときからのお客さんとのおしゃべりと経過観察。イミスだけはギルドでの登録が必要なので俺に同席してもらうが、登録後は自由だ。


 「御者さん、いつもありがとう。またよろしくお願いします」


 「おう、また今度!」


 ギルド前の繋ぎ場に馬車を停めている御者へお礼を伝えたあと、『竜首のごちそう亭』ギルドの中に入った。相変わらずウルサイという表現が控えめなほどのワイワイガヤガヤ…冒険者共は酒を飲み交わしては、自身の冒険譚について大声で自慢している。


 「ここが、サトルの冒険者ギルド…!すごく、賑やかだね!?」


 「あぁ、天井から竜の首が吊るされているだろう?これが初めて見ると結構ビックリするんだよ」


 「え?…うわ!?ほ、ほんとだ……ビックリした。こんなの倒せる人がいるんだね」


 確かに…でも既に俺たちはここでは最大戦力扱いだ。既に引退した人の獲物だったりするのかな?さすがに一人やひとつのパーティーで討伐したわけではないだろうが、それでも偉業であることには変わりない。そういえば、ここのギルドマスターにはまだ会ってない気がする。多忙と噂される人だが、そのうち会えるだろうか。入り口付近でボーっとしていると顔見知り程度の冒険者たちに声をかけてもらえた。


 「サトルだ!おかえり~!」


 「あ、どうも…!」


 「っよ!依頼からの帰りかい?おつかれさん」


 「えぇ、そうです。お疲れ様です!」


 顔は知っているがお互いあまり干渉はしない。それくらいのゆる~い繋がりだが、それがとても心地よい。帰ってきたときに声をかけてくれる人がいるって良いな。だからなのか、ここに戻ってくると、シールドウェストに帰ってきたという実感が湧く。


 「サトルって人気者だね!」


 イミスはなんだか嬉しそうだった。


 いつもの受付嬢は、新しい冒険者登録をしている人たちの相手をしていたので、少し時間を潰すことにした。


 依頼板に張られた魔物の討伐リストをチェックすると、強そうな大型魔物にいくつかバツ印がついている。どれもシールドウェスト騎士団討伐済みの文字が入っており、冒険者が倒したものは殆ど無かった。最近は領主様の騎士団が頑張っているみたいだな。


 「サトル様~!顔が見えたのでお声かけさせていただきました!」


 どうやら新人冒険者の登録が済んだようだ。いつものスタイルバツグンな獣人お姉さんが、わざわざ俺の元まで来てくれた。


 「受付のお姉さん、お久しぶりです。わざわざ来てくれたんですか?」


 「えぇ!だってすごいですよ!いち早くルチルちゃんから報告を受け取っていますから!」


 「え~っと、ルチルちゃん…とは?」


 受付嬢が指を指すと、カウンター近くの止まり木に大きな見覚えのある鳥が何羽か羽休めしているのが分かる。俺に連絡をしてくれた鳥も、あの中の一匹なんだろうか。


 「もしかして、いつも連絡の手紙を持ってきてくれる鳥の名前ですか?」


 「そう!ルチルちゃん、って言うんです。可愛いでしょう?」


 「良いですね!…ちなみに、他の鳥はなんて名前なのですか?」


 受付嬢のお姉さんは、笑みを浮かべたまま冷や汗をかく


 「……ルチルちゃんです」


 「え、でも―」「ルチルちゃんです」


 「…あっはい」


 チラッと見ると『ルチルちゃん』たちの見た目は、とてもよく似ている。もしかしたらあの鳥を見分けるのは、至難の業なのかもしれない。仕方ないから全部ルチルちゃんと呼ぼう。


 「え、え~っと、それで…そのルチルちゃんからどういった報告を?」


 「あ!そうでした。実は、エルフの里のミトスツリーから、依頼完了の報告を手紙で受けています。それだけではなく、サトル様をミトスツリーの『友人』として受け入れるとも。これはとても名誉なことなんですよ!一体何があったんですか!?」


 「あはは…まぁ、それは追々お話致しますよ」


 「今は、ウチの登録が先だからね!」


 イミスが自身の胸をドンと叩く。スカーレットも真似をして同じポーズをとっていた。


 「あら?その子たちは…?」


 「そうでした、紹介します。新しい仲間のイミスさんとスカーレットさんです」


 「よろしくね!」「マスターをよろしくお願いします」


 (また女の子なの!?しかも可愛い!?サトルは放っておいたらダメな気がするわ!)


 受付のお姉さんは体を仰け反らせて一瞬だけ驚いた表情をつくったが、すぐに平静を取り繕う。


 「コホン…よろしくお願いします。では、登録しながらでも取り急ぎお聞きいただきたいのですが、実は、この度の功績が町とギルド、双方から認められましたので、サトル様のパーティーは、Bランクに昇格となります!!おめでとうございますう~!」


 見計らったように、聞き耳を立てていたギルド内の冒険者たちは一斉に雄叫びをあげた。…お前たち…絶対打ち合わせしてたでしょう!?



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