84話
*イミスがレベルアップしました*
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レベル4(上昇値)
ヒットポイント100(+32)
筋力15(+1)
敏捷力8
耐久力25(+3)
知力15
判断力8
魅力13
獲得技能
・シンティクシィ・ディフェンシブフォームチェンジ
より防御に特化したフォームチェンジが可能になる。また、その補正値が高くなる。
・オプショナル・ディフェンスフェーズ[希望のオーラ]
自身を中心とした円形状の範囲にオーラを付与し、防御力を上昇させる。発動時は自身も付与対象となる。
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レベルがある程度上がってくれたことで、イミスの戦闘スタイルが確立されてきた。カルミアやサリーのような探索系の技能は一切持たない彼女は、純粋な戦闘系のビルドになりそうだ。レベルアップ時にどの特技を獲得するかは、まだ良くわかっていないが、当人の行動がダイレクトに影響しているようにも感じる。この調子でいけばイミスは今後、手持ちのゴーレムを使って、主に変形合体し戦うことに特化するだろう。使役して一緒に戦うことも出来るようだが、パラディンが持つオーラ系技能とのコンボビルドも強い。オーラは効果が高い分範囲が狭いという弱点があるが、イミスの場合はその心配もないという訳だな。
すっかりレベルアップ時に確認するのが日課となってしまったキャラクターシートの閲覧を終える。
巨大化したハグとその幻影との戦闘を終えた後、本を閉じて改めて墓地を見回した。いくつか無事な箇所もあるが、花畑の大部分はハグに踏み荒らされ、酸や地割れの影響で墓はめちゃくちゃになってしまっていた。仕方ないといえば仕方がないが、これでは死者が安心して眠ることができないだろう。
「みんな、戦闘の後で本当にごめん。でも、もうひと仕事手伝ってくれないか。死者が安心して休めるように、できる限り綺麗にしていきたい」
「うん…分かった」
「ウチもやるよ!」
「サトルさん…みなさん…私達のために、本当にありがとうございます!」
壊れてしまった墓標を、現時点で可能な限り修繕する。完全に壊れてしまった墓は仕方がないので、里へ帰還したときに報告だな。せめて荒らされたお花たちを元気にしてあげることができれば良いのだが…
そう考えていると、墓の修繕を見届けていたトリエントやドライアドが荒らされた花畑まで近づいてくる。そして、ドライアドが両手を広げ、歌いだした。トリエントは声に合わせて体を揺らしている。歌声は鳥の囀りのように森に響き渡っていき、森全体が呼応するように魔力が花畑へ注がれていった。
「これは…」
「チャーオスさん、これが何か分かるんですか?」
「えぇ、ぼくもこれを見たのは初めてなのですが…ドライアドは森の生命力を借りて草木を元気にすることができると言われています…。ただ、人の前でこのようなことを起こすのは滅多にないことだと思います」
「へぇ~…少しは、俺たちを受け入れてくれたってことかな…」
魔力が花畑へ十分に供給されると、ドライアドは歌をやめて腕をゆっくり下ろし、トリエントと共に森の奥へと消えていった。元気がなかった花たちはみるみる内に咲き誇り、荒れた地は溢れるほど緑を芽吹かせる。そして、色彩豊かな花びらが舞いはじめたのだ。
「これで、少しはエルフの死者たちもゆっくりと休めると良いな…」
「サトルさん…」
「ん?どうしたのですか、チャーオスさん」
「い、いえ!なんでも…ないです」
「?…そうかい?よし、それじゃエルフの里に戻ろう。あっそうだ、イミスさんにレベルが上がったことを伝えなきゃな…自分の体の事だから、感覚で分かってそうだけど。お~い、イミスさ~ん」
カルミアとイミスが花畑で笑い合う。そこへ向けて走っていくサトル。それを見つめるチャーオスは、少しだけ羨ましいような、そんな気持ちになる。
「サトルさん、ぼくは…ぼくたちは貴方にとても大きい恩ができた。すぐには返しきれないかもしれないけど、ぼくにもできることをしてみるから…」
* * *
「は~~い!ゴブリンとオークの皆様!ちゃ~んとわたくしの話を聞きましょうねぇ!?」
エルフの里がギリギリ目視で確認できるほどの距離で、木の棒を振り回しながら大量のゴブリンとオークを引き連れているノームがひとり。そう、タルッコである。
「はいはい、ちゃ~んと聞きましょう!良いですか!?アイリス様の覚えめでたいあのサトルという小僧の邪魔をする必要があるのです!とっても重要なことなのです!」
「グギャグギャグァ!?ギャギャギャ!!」
ゴブリンたちはある程度言う事を聞いてはいるものの、タルッコの小難しい小言を聞けるほどの知性は持ち合わせていないため、持っている武器で地面を叩いたり木の実を食べたり、タルッコの服を引っ張ったりして遊んでいる。
「ウヒョ!?やめてください、アイリス様からいただいた服が汚れます!シュ!ッシュッシュ!」
タルッコは服を引っ張るゴブリンにシャドーボクシングをして威嚇する。
「グギャグギャ!?ッグッグッグ…ググググ」
それに驚いたゴブリンもまた、シャドーボクシングをして威嚇をする。
「全く、先が思いやられます。どれだけ金を注ぎ込んだと…。ふん、良いですか?今からエルフの里を皆で襲撃するのです。あーもちろんわたくしは見ているだけですが…ウヒョヒョヒョヒョ!依頼が達成できても里がボロボロになればサトルの名声は地に落ちることでしょう!う~ん、我ながらパーフェクツ…な作戦」
ゴブリンたちは寝始め、オークたちは仲間たちと何かを楽しげに会話をしており聞いていない。
「宝物庫から持ち出したこの結界妨害の石。結界は強力故に使える時間は僅か一時間もない程度ですが、問題はないでしょう。そして、ゴブリン百体、オーク十体…これだけいれば里も無事とはいかないでしょう。申し訳ないのですが、里の皆様にはアイリス様がサトルに落胆するための犠牲となっていただきます。ウヒョヒョヒョ!」
ゴブリンの一匹がタルッコが持っていた木の棒を奪い取って食べられるかチェックする。
「あ!やめろ!貴様!シュッシュッシュ!」
「グギャ!?グッグッグ!」
タルッコの恐ろしくも怪しい企みが進行しているのであった…!