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80話


 トリエントは出会いがしらに大木の巨体を揺らして腕代わりの枝を地面に突き刺す。すると、カルミアとイミスのいる地面から太く鋭い根が飛び出してきた。カルミアは咄嗟にイミスに接近して上空へ放り投げ、自身も後方三回ひねりをしながら回避し、着地と同時に抜刀した。鞘は抜いた勢いが強すぎて、トリエントの枝を何本も貫通し本体に突き刺さる。ついでにチャーオスは震える。


 「イミス、気をつけて!」


 「カルカル、ありがと!」


 イミスはカルミアの機転でダメージを受けずに済んだ。そして変なあだ名をつけられている。


 「…っふ、はぁ!」


 カルミアは自身に氣を放つと体からバチバチと電流のようなオーラを放つ。そして、電光石火の構えから足を強く踏み込むと姿が消えた。瞬きひとつ―カルミアはトリエントの後ろで刀を抜き去った姿勢で静止している。数秒遅れてトリエントの片腕は文字通り木端微塵に吹き飛んだ。そしてチャーオスは震える。


 「…イミスの出番、残しておいたから」


 カルミアが呟くと、上空からイミスが自由落下で戻ってくる。


 「ウチも、もっともっと強くなるから!スカーレット!パージッ」


 イミスはノーマルフォームの剣と盾を一旦解除して、即席で剣のフォームを作り上げる。剣の姿は従来よりも大きくなっており、盾のリソースを使った分破壊力に特化した大剣となった。


 「くらえええ!」


 ダメージを受けてうまく動けないトリエントのもう片腕の枝は、重力を乗せた大剣の餌食となる。枝を守るように地面から根が何層もバリアを作ってトリエントの本体を守るが、イミスが上空から振り下ろす一撃は轟音と共にその全てを一刀両断にしてみせた。


 戦いの音が静まり、両腕の枝を失ったトリエントから赤き光の目が消え去る。先程までの凶暴性は無く、虚空を見つめるように大人しくその場で佇んでいた。俺がトリエントならついでに尻尾を巻いて逃げるところだろう。


 *敵性の無力化を確認 イミスがレベルアップしました*


 早速のレベルアップだ。俺たちとは違って最初だから上がりやすいのだろう。あとで能力の確認をしておこう。

 

 「なななな…なんという…ここまでとは」


 「俺の仲間、強いでしょ?」


 「…正直、想定外でした。多数の兵を以て、犠牲覚悟で一体のトリエントを抑えれば上々といえる相手を、こんな一方的に無力化してしまうとは……こんなにも強ければ、更に奥へ行っても問題なく調査可能でしょう(ダインさんたちは、この超越的な者たちを軽視したことを後悔するでしょうね…)」


 「えぇ、そうですね。すぐにでも解決したいところです」


 「む…サトル。新手よ」


 「話している間にもわらわらと…ウチが全部倒してやる」


 息をつく暇もなく、ぞろぞろとトリエントがやってきた。音でつられたのだろうか。皆五メートルはあるほどの巨体で、十体程度だが迫力がある。トリエントの目は漏れなく赤き目を光らせて俺たちを睨みつけている。そして、後方一体、人の形をした魔物がいた。…緑の体、女性の姿で剥き出しの心臓に大きな木の実を宿している。ドライアドだな。


 こちらの合図を待つことなく、殺意マシマシで先程と同様に枝を地面に突き刺し、地中から飛び出す根の攻撃でこちらを襲撃する。カルミアとイミスは散開して距離を取った。俺とチャーオスにヘイトが向かないようにしてくれているのかもしれない。俺はチャーオスが巻き込まれないように、彼を担いで回避に徹する。これでも能力は人並み以上に上がっているから、自衛くらいは問題がない。


 トリエントは、本能で脅威と定めたのだろうか…特にカルミアを集中的に狙っている。先程と違い、多数のトリエントから繰り出される猛攻は容赦なくカルミアを追い詰める。地面から断続的に伸びてくる尖った根はカルミアの体を貫こうと追尾してくる。根が横全方位からカルミアを突き刺そうと迫る。


 「カルカル!危ない!」


 イミスはトリエントの一体を剣の腹で殴り飛ばすが、フォローが間に合わない。


 「問題ない…ッフ!迅雷脚!」


 カルミアは大きな刀を地面に突き刺して固定すると柄の上に器用に立った。そして、柄の上で逆立ちをすると足に反動をつけて、ウィンドミルのように大きく体を回転させた。卓越した身体能力で全ての根の先を足技で弾き飛ばしていく。そして、迅雷脚の追加効果によって対象にあまたの雷撃を与えていく。


 「イミス、タッチ!」


 「まっかせて~!」


 カルミアの位置までフォローに入ったイミスは着地したカルミアと手を合わせ、剣を上空へかざす


 「スカーレット…オプショナル・アタックフェーズ[勇気のオーラ]」


 「了解マスター。オプショナル・アタックフェーズ」


 イミスとカルミアの体が赤い光で包まれる。カルミアはぼんやりとした赤い光で、イミスはゴーレム分強化されるため、赤いオーラまで羽織っている。俺もできることをしなくては。


 「イミス!目標はドライアドの胸だ!胸を攻撃すれば無力化できるぞ!」


 「うん、サトル君!教えてくれてありがとう!」


 「…シンティクシィ・ノーマルフォームチェンジ!巨大な手をイメージするのよ」


 全てのゴーレム装甲をパージしたイミスは一つの巨大な手を作り上げる。巨大な手は赤き光をまとってカルミアを手に乗せる。何かを感じ取ったドライアドは片手で指示をして、自分の進行方向上に残っている全てのトリエントを配置させた。


 「カルカル…準備はいいよね!」


 「…いつでもどうぞ」


 イミスは熟練の草野球選手のような綺麗なフォームで、巨大な手を振りかぶった。投擲と同時に突風が森を唸らせる。


 「いっけぇぇぇ!」「はぁぁぁぁ!」


 ボールのように投球されたカルミアは、剛速球でドライアドへ飛んだ。また、カルミアも自身の体を雷撃をまとったオーラで強化し、刀を構えた。


 「くらえ!」


 一列に並んだトリエントと衝突する。しかし、あまりのパワーによって衝撃波だけでトリエントは葉を撒き散らしながら次々に吹き飛んでいく。最後のトリエントが吹き飛んだ先にはドライアドがいた。



 「雷天大壮初爻之劔らいてんたいそう・しょこうのつるぎ!!」



 カルミアが叫び、赤き雷撃を抜き放つ。勇気のオーラを乗せた全力の雷切は再生の余地を残さぬ爆発をともなって、ドライアドの依代である木の実を断ち切った!


 爆発は周囲を巻き込んで俺を吹き飛ばすほどの影響を与えている。思わずチャーオスは叫ぶが、何とか俺が飛来物の盾になって、庇ってあげた。


 「うわぁぁ!?」


 煙が晴れるとカルミアが立っている場所には、えぐれた地面だけが見える。ドライアドの依代はチリ一つ残っていなかったのだ。


 カルミアはふと息をついて、血もついていないまだ煌く刀を血振りする。これが、彼女の残心だ。




*

『レベルアップ情報』


イミス


レベル3(上昇値)

ヒットポイント68(+32)

筋力14(+1)

敏捷力8

耐久力22(+3)

知力15(+1)

判断力8

魅力13


獲得技能

・[シンティクシィ・オフェンシブフォームチェンジ]

ゴーレムのリソースを犠牲にすることで、より攻撃的なフォームチェンジが可能になる。

*



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