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79話


 「あなたが今回の依頼を受けてくださったサトルさんですね。」


 「はい、よろしくお願いします」


 俺たちはダインの紹介で、昨今トリエントやドライアドが暴れているというエリアへ連れて行ってくれる案内人と会っていた。


 「ぼくはチャーオスと言います。森は広大ですので、案内人がいなくては探索もままならないと思います。困ったことがあったらいつでもお声がけ下さい」


 チャーオスの第一印象は優しそうな感じだ。短く切りそろえた金髪の髪からおっとりとした目をのぞかせている。物腰柔らかな喋り方で好感が持てる。手を差し伸べてくれたので握手で応えた。イミスも握手をして、カルミアは目礼で済ませた。スカーレットの存在にあまり驚いた様子はない。


 「ありがとうございます。正直…何からして良いか迷っていたので。案内人を引き受けてくれたのも、貴方しかいませんでしたし」


 「里の奥は整備が行き届いてなくて、本当に広いですから。お役に立ててよかったです。…実はサトルさんがお食事をされた場所は、ぼくの母がやってる店でして…とても良い方だと聞いたので、会ってみたくなったんです」


 よく観察すると、目元やおっとりとした喋り方やイントネーションが、たしかにあの女性のエルフそっくりだ。というか…母というほど年を重ねたようには見えなかったぞ。っと考え直してみると、そう言えばエルフは生涯若い姿を維持するということをすっかり忘れていた。その特性柄、年が外見で分からない。横に並べれば親子というより兄妹とも見れるほどに。


 「それは偶然でしたね!あの店のお食事はとても美味しかったです。特に魚料理はクセがなくて食べやすかった…!」


 「ふふふ、良かった…あれ、実は昔から母の得意料理で―」


 ちょっとしたキッカケもあって、チャーオスとは意気投合した。里の奥に向かうには、入り口とは別の場所から出る必要があるとのことで、他愛もない話をしながらその場へ向かう。チャーオスがいたおかげで道中は特にトラブルもなく、出発口まで来ることができた。森の奥へ向かうための出発口では兵が二人見張りをしていたが、チャーオスが率先して要件を伝えてくれたおかげでスムーズに出ることができた。


 「みなさん、準備はよろしいですか?」


 「俺たちは大丈夫です。チャーオスさんこそ、危険が伴うことになると思うのですが大丈夫ですか?」


 「母の料理を褒めてくれた人には、できる限りのことはしたいと思っていますから」


 協力的な優しいエルフもいれば、ダインのようなエルフだっているんだな。すべてを一緒くたに考えるのは良くないかもしれないな。ただでさえ里からヒューマンという色眼鏡で警戒されている状況だ。しっかり現状を打開していこう。そして、サリーとの冒険を認めてもらえるように、実績をたてるのだ。


 里の奥へ向かうための道を開けてもらい、数歩里の外に踏み出す。一瞬、頭がくらっとするような見えない壁のようなものに阻まれるが、それもすぐにおさまった。仲間たちも同様に一瞬立ちすくむ様子が伺える。


 「なんだか一瞬クラクラしたような…」


 チャーオスはすぐに答えてくれた。


 「あぁ、それは里を守る結界に触れたからです。結界は防御魔法を応用したもので、大樹の力を借りて発動しているらしいですよ。何度も通っていると慣れるのですが、大丈夫ですか?」


 「あぁ、大丈夫です。…強力な結界ですね…破れる気がしません」


 「天を貫くほどの巨大な大樹から力をお借りしているのですから、それに対抗できるほどの魔力や能力がなければ難しいでしょうね…」


 結界を超えてからは、特に問題らしい問題も起きなかった。案内人を買って出てくれただけあって、チャーオスは全く迷う様子もなく、ぐんぐんと森を進んでいってくれる。少し休憩をはさみつつ、森の中を歩き続け、体感的に一時間ほど経過した頃、トリエントとドライアドがよくいるというエリアまでやってきた。ここより先は敵性の魔物が多く現れるため、里にまで降りてこないようにエルフと良い関係を持つ魔物が戦ってくれているのだという。ただその代表格である魔物まで暴れているから、里への被害も出始めているらしい。


 「サトルさん、カルミアさん、イミスさん、スカーレットさん…あれです!」


 チャーオスが指を指した先に、里の進行方向であるこちらへ向って、大きなトリエントがのそのそと歩いてきている。トリエントは大木が意思を持ったような魔物で根を足のように使い、赤く目を光らせて辺りを警戒している。確かに、明らかに普通とはいえない状態だ。


 「このままでは里まで行ってしまうな…まずは無力化できるか試してみよう。チャーオスさん、トリエントを殺さずに動けなくする方法はありますか?」


 「はい…手のように使っている枝をすべて切り落とすと、再度生えてくるまでは大人しくなります。結構な時間を費やすので、無力化の手段としては問題ないと思いますが…とても危険ですよ?」


 「はは、うちには頼もしい前衛が二人もいるんです。まぁ、見てて下さいよ。カルミアさん、イミスさん、スカーレットさん…行ってくれますか?」


 「…任せて」


 「ウチ、負けないからね!スカーレット、ノーマルフォーム!」


 「はい、マスター」


 それぞれが武器を用意して戦闘を開始する。



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