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69話


 怒涛の攻撃を繰り広げたイミスは、ふぅと一息ついて座り込む。イミスの目の前には派手に散ったガーディアンの残骸が落ちていた。ゴーレムフォームも解除されている。


 「イミスさん、やったじゃないか…立てるかい?」


 「うん…サトル君のおかげだよ。何をしたのか知らないけど、ウチが強くなったのは確かだよ。本当にありがとう」


 手を貸してイミスを起こしてあげた。イミスは疲労困憊であったがとても清々しい表情だ。【パラゴンゴーレムナイト】という…またもやスターフィールドに存在しない未知のクラスを生み出してしまったが、その能力はパワータイプを地で征く戦士となった。能力の上がり幅もそれに伴ったものになりそうだな…。


*イミスを含むサトルのパーティーメンバーがレベルアップしました*


 福音がきた!さっそくルールブックで詳細を確認してみよう。今度こそ…今度こそ俺は、絶対にスキルを手に入れるぞ…!本を開く手が震えるぜ…


*カルミア*


レベル6(上昇値)

ヒットポイント 145(+35)

筋力22(+2)

敏捷力31(+3)

耐久力25(+2)

知力9

判断力10

魅力13


*サリー*


レベル6(上昇値)

ヒットポイント95(+20)

筋力10

敏捷力18

耐久力17(+1)

知力31(+3)

判断力15

魅力13


*イミス*


レベル2(上昇値)

ヒットポイント36(+18)

筋力13(+1)

敏捷力8

耐久力19(+1)

知力14(+1)

判断力8

魅力13


獲得技能

・パッシブスキル:トランサーフォームクリエイト

装備式のゴーレムをより自由に自作、改造できるようになる。ただしこの能力で自作した装備は自身のみ着用可能の制限がある


*サトル*


レベル6(上昇値)

ヒットポイント90(+20)

筋力13(+1)

敏捷力13(+1)

耐久力14(+1)

知力15(+1)

判断力17(+1)

魅力23(+1)


獲得技能

・パッシブスキル:変革の兆し

友好対象へ与える影響が大きくなる


 ん?んん!?俺、気のせいじゃなければ、パッシブだがスキルを獲得している!今まで散々な目にあって何度も挫けそうになったが、ここにきてようやくスキルを獲得したんだ!!嬉しすぎる。ルールブックを閉じて今すぐ男泣きをしたいくらいには嬉しい。諦めずに修行に励んでて良かった…。だがしかし、内容がよくわからない…[友好対象へ与える影響が大きくなる]とは一体何を指しているのだろうか?謎である。


 そして、ニューフェイスのイミスはレベルが一つあがって2になった。カルミアもサリーもレベル2の時点の上がり幅はこんなものだったので、これからが楽しみだ。レベル2の時点でのヒットポイントの上がり幅が誰よりも高いため、同じレベルに追いついたときにはカルミアに並ぶか、それ以上の耐久力を得ているだろう。


 それぞれの成長も凄まじく、今回も満足のいく内容だった。特に何の意味もないスキルを獲得しなかったことだけが嬉しい。


 「…力が溢れてくる。もしかして私たち…また強くなれたの?」


 「ウン、アタシも魔法がビシバシきてるかんジ!?やったネ!」


 カルミアとサリーもそれぞれに自身のパワーアップに気がついたようだ。二人については最初から今まで主能力が上がらなかったことがない。通常では考えられない力を得ていることから、俺のクラスチェンジが何らか関係しているのだろうな…特別なマルチクラスチェンジは慎重に行わなくては…。


 一息ついて、ガーディアンの残骸を超えて進もうとしたとき、残骸の一部から丸い球体が光り浮かび上がってきた。


 「しまった!爆発系魔法か!?サリーさん!シールド張って!!」


 「わかっタ![メイジ・アーマー]!」


 サリーのメイジ・アーマーが全員に行き渡り、俺たちは球体の前で身構える。恐らく術者が埋め込んだ魔法で、条件が破壊された時に設定してあったのであろう。シールドガーディアンは一つだけ魔法を埋め込むことができるので、こういった芸当も可能というわけだ。


 俺たちは身構えるが、球体が浮かんでいるだけで何も起きない。


 「……何もおきないぞ?」


 「もしかして…」


 「ちょっと、イミスさん!危ないよ!?」


 「大丈夫…だと思う」


 イミスは球体に近づいて、そっとふれた。すると、球体から光が出てきておばあさんの姿が浮かび上がった。ホログラムに近い…投影系の魔法だろうか?


 「おばあちゃん!?」


 イミスは投影されたおばあさんにふれようとするが、透き通る。…実体がなく投影されただけのもので間違いないだろう。おばあさんは構わず話し続ける。


 「イミス…イミスなのだろう。わたしゃそう信じて、ここに言葉を遺す」


 「おばあちゃん!?おばあちゃん…!」


 「先に言っておくが…このメッセージは、ガーディアンが壊れたときに自動で発動するように調整した魔法じゃ。だからお前の問いかけに応えることは、できない」


 「そ…そんな…」


 「あんたにどうしても伝えたいことがあってね。直接言うのは、癪だったから、こうさせてもらったよ…。イミス、寂しい思いをさせてしまったね…わたしゃあんたに、たいしたものは遺してあげられなかったけど、今きっと、あんたのそばにいる皆さんが、今後もきっと助けてくれるはずだろうから、心配はいらないよ。なんせ、全力でつくったゴーレムさ。一人で倒せるようにはしていない…多分ね」


 「…」


 「イミスは慌てん坊だから、きっとそこにいる皆さんも大変でしょうが、どうか、よろしくお願いします」


 「おばあ、ちゃん…」


 「それと、もし村を出たいと思ったときのために、村の村長に話をつけてあるから…ね。成長した姿を見れないことだけが、残念だよ。あぁ……イミスを引き取った日のこと、まだよぉく、覚えているよ。あんたの母にそっくりな大きい目で、不安そうに見つめていてね…。村近くの一緒に散歩した花畑で、つらいことがあったら何でも言いなさいと言ったけど、辛そうな顔で、小さな体で、震えて……何も言わなかった。ずっと耐えていたんだよね。でも、手だけはずっと握ってて。その姿を見て、わたしゃあんたのことを守ってやると、生きる知識を授けると誓ったんだよ」


 「…」


 「さいごまで、母親のようにはしてあげられなかったけど…わたしゃあんたと一緒にいられた日々が、とっても…楽しかったよ。いま一緒に居て下さっている方の、有り難みを忘れないように…あんたの信じた道を、これからも先、ずっと進んでいくんだよ。」


 ホログラムが消えかかった…魔法が尽きそうだ。イミスは手を伸ばしたまま話を聞いている


 「最後の試練は、人は一人では生きていけないということを、あんたに教えてあげたかった。でも、もう、きっと大丈夫。だって、このメッセージを聴いているんだから…。きっと、命をかけてあんたを守ってくれる。…それでも、もし辛いときや苦しい思いをしたときがあれば、今日のこと、思い出してほしい。わたしゃ…きっと…ずっと、その手を握って、見守っているから、ね……わたしゃ、イミスが居て…くれて、幸せだったよ……体には気を……げんき…でね」


 最後に笑顔を見せたおばあさんのホログラムは、消滅し球体は地に落ちた。イミスはしばらく何も言わなかったが、俺は背中をさすって、そのあと手を優しく握ってあげる。



 イミスは何も言わなかったが、俺の手だけは離さなかった。




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