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60話


 「受付のお姉さん、お久しぶりです」


 俺は無事本拠地のシールドウェストに帰還しており、ギルドまで顔を出している。町の様子は相変わらず活気に満ちており、帰る度に嬉しい気持ちになれる。俺がギルドで報告している間、カルミアやサリーとは別行動中だ。


 「サトル様、お待ちしておりました。ブローンアンヴィルでは大活躍だったとお聞きしました。町長からも、感謝のお言葉を手紙で頂いております!」


受付の獣人お姉さんは相変わらずスタイルバツグンだった。少しイメチェンしたのか肌の色を焼いている。健康的な肌色にちょっとだけドキっとしてしまった。毎回顔を合わせるのがちょっとした楽しみだったりする。


「はは…色々と大変でしたが、みんなが助かって良かったです」


「さすがとしか言いようがない活躍ぶりでした。…あの、帰還したばかりで申し訳ないのですが…」


 眉をハの字にさせたお姉さんは俺に上質な紙で出来た依頼書を渡してきた。


 「大丈夫ですよ。どれどれ…」


 依頼書の中身は丁寧なエルフ語でつらつらと文字が書かれており、内容が全く分からなかった…サリーであれば読めるかもしれないが、今は患者さんとおしゃべりがしたいらしく外している。俺はサリーから暇な時にエルフ言語を習っているが、まだまだ読めるレベルに達していない。


 「お姉さん、すみません。内容が読めないので代わりに読んで下さい」


 「拝見いたします」


 お姉さんは俺から依頼書を受け取って中身を読み始める。指名依頼の場合は、依頼者や依頼を請け負った人から開示がなければ内容を見てはいけないのかもしれない。なんか本格的っぽくて好き!


 「どうやらこの依頼は、シールドウェストから最も近いエルフの里のひとつ…ジロスキエント・ミトスツリーの里からのようです」


 ジロスキエント…なんだかすごく聞き覚えがあるぞ。


 「続きを要約しますね。…最近、里を守ってくれているモンスターのトリエントとドライアドが里の者を襲っているらしく、手を貸して欲しいようです」


 トリエント…大木に魔力が宿ったモンスターと考えられており、見た目はまんま大木である。最大の特徴は樹皮に人の顔が浮かび上がっていることと、自我を持っていることだろう。幹の根本がそのまま足となっており、移動することもできるし、長く伸びた枝はそのまま腕として使うこともできるし、樹皮に浮かび上がった口から言葉を発することもできる。ヒューマンに出来ることは大体できるが、巨体なので森の中で激しく動き回ることは稀。性格はいたって温厚で、エルフと共に瞑想をして静かに過ごしていることが多く、自発的に里を襲うのは考えづらい。森を害する存在は、自身の枝で絡みとって攻撃を繰り出すが、エルフが森を害する訳がない。


 そして、ドライアドか…ドライアドは森の精で、トリエントと同じく森を愛する生き物だ。長い年月を生きた大木で、トリエントにならなかった木から生み出される精。その大木を依り代としているのだ。大木から採れる木の実や根を心臓に宿しており、それが無くならない限り、依り代から離れて自由に行動ができる。身長も見た目もヒューマンにとても近しく、美しい女性の見た目をしていることが多いため、恋に落ちたヒューマンが森へ消える事件が度々起きるらしい。全身の色は依り代に依存していて、大体は緑色だ。虫や動物と会話する能力を持っていて、植物を自在に扱う特殊な魔法を使う。心臓の木の実や根を取ると土になってしまうが、ある程度の時間ですぐに復活する不死性を持つ。ただし、依り代の大木が何らかの理由で傷がついたり、折れてしまうとドライアドも同時に死んでしまう。


 「…どちらも、エルフと共に森を守るモンスターのはずです…森の住人であるエルフたちを攻撃するのには何か訳があるのでしょうか?」


 獣人のお姉さんが耳をピコピコさせて最後まで文字を読んでいくが、有力な情報はないらしく首をふった。…かわいい!


 「依頼内容はこれだけのようです…どうですか?受けていただけますでしょうか?」


 「はい!かわいい!っとと違った。はい!受けます」


 つい、思っていたことが言葉に出てしまったが、すぐに取り繕って言葉を訂正する。受付のお姉さんはポカンとした顔で首をかしげて、こちらの様子を見ている。その間も耳がピコピコしていてかわいいので油断ができない。


 「サトル様…どちらも相手となる場合、とても強いモンスターとなります。危険度も高く、うちのギルドでの最大戦力である貴方がたに頼る他ありません。どうかよろしくお願いします」


 「原因が分からない以上、現地に出向いて調べるしか無さそうですね…分かりました。このクエスト…必ず成功させてみせますよ!」


 次の冒険の舞台はエルフが住まう深き森だ。しっかり準備して向かうとしよう!


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