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6話


「カルミア! クラスチェンジだ!」


「…!」


 俺が叫んだ瞬間、灰色の世界は硝子が崩れ落ちるように砕け散って時が動き出した。先程との明確な違いは、俺は本を持って立ち上がっており、激しい光の奔流を纏っていることと、賊が警戒して距離を取っていること。


本は俺の手を離れて眼の前まで浮遊し激しくページが捲られ続ける。何故か直感的に使い方が分かるぞ。キャラクターシートと呼ばれる、キャラを作成するための情報を一元管理するページでピタッと本の動きは止まった。手にはいつの間にか光のペンがある。なるほど、これを使って書き込めば良いということか!


「ななな… なんだぁ!? おい、何をしているはやく弓を放て!」


「へ、へい!」


 五人目の賊が俺に向かって弓を放つが、光の奔流がまるで意思を持っているかのように矢を弾いた。これには賊も狼狽したのか、あとさずる。


「き、効かねぇ! 矢が…」「馬鹿野郎! 見れば分かるだろう! 何の魔法だ」「見たことがねぇです!」


先程とは打って変わって、立場逆転だな。ここからは、俺の仕事だ。カルミアの力を俺が引き出してみせる…!


「さぁ、君の可能性を魅せてくれ!」


カルミアのページが黄金に光っており手を触れると、光の奔流はカルミアへも移っていき、項目へ書き込めるようになった。


クラスの項目には「【メイガス(仮)】」と記載されていることがわかる。なるほど…適正が足りない場合、このような表記になるのか。それなら…


「カルミアがチェンジ可能な適正クラスを教えてくれ」


*対象 カルミアが可能なクラスチェンジ先は下記に該当します*


無機質な脳内音声が響くと、目の前に文字が浮かび上がる


*

インクィジター

ファイター

大盾使い

ツーハンデッドファイター

バーバリアン

狂犬使い

剣聖

アルケミスト

モンク

パラディン

レンジャー

ローグ

スレイヤー

*


 間違いない。俺が最も好きだったテーブルトークロールプレイングゲームの[スターフィールド]に出てくるクラス一覧の一部だ。サブクラス有りでこれで一部なのだから恐ろしい。カルミアは魔法による適正がないから、今出てきた一覧は戦士やスカウト系が目立つ。これがカルミアが持つ可能性の幅なのだろう。


 カルミアは長年磨いてきた剣の技をアイデンティティーとしているだろう。そして、その戦闘スタイルは必要最低限の装備、つまり防御を犠牲にしたスピードスタイルだ。こんな状況であればパラディンやファイターになってもらって、生存第一でいてほしい。ただしそれはスピードスタイルとは相反することになる。こんな非常時ではあるが、可能な限り彼女の行ってきた軌跡は残してあげたい。そして生まれつき低い魔法適正がデメリットにならない組み合わせを考えることにする。…よし、決めた!


光のペンを取り、本へと書き込む


「生まれ変わって! 新しい君へ!」


*対象 カルミアのメインクラスを【剣聖】サブクラスを【モンク】に設定しました*


*マルチクラスにより メインクラスとサブクラスの特徴が融合されます*


*新クラスの誕生により【剣聖】の名称は【剣聖門】に変更されました*


*クラスチェンジの特典により 対象 カルミアのステータスが回復します*


*クラスチェンジ 完了しました*


 念のため、設定したクラスの特徴をルールブックで再確認する。【剣聖】最大の特徴は、一つの武器しか扱えないこと。これが最大のメリットでありデメリットでもある。その武器は最も修練した武器の種類に限定される。カルミアの場合、剣に該当する。他の武器種を手に持って戦うこともできなくはないが、壊滅的な技量により役に立たない。その絶大なデメリットの代わり、剣聖が扱う武器から繰り出される攻撃は一撃一撃が必殺級の強さに昇華されるのだ。ただし、もうひとつのデメリットがある。軽い防具しか身に着けられないという特徴だ。ただこれは、カルミアの戦闘スタイルに噛み合っているため問題はないと判断した。


 サブクラスは【モンク】だ。このクラスは特殊で、素手で戦うと自分の強さに応じて素手による攻撃も強力なものになっていくというものだ。一見すれば全く【剣聖】のカルミアと噛み合っていないことが分かるが、これには理由がある。もう一つ、このクラスにはメリットとデメリットが存在する。それは、重い防具を着用できない代わりに圧倒的な回避力と肉体的な防御力、運動能力を高めるというものだ。成長したモンクの防御力と回避力はパラディンと並ぶほどの前線維持能力がある。モンクを選択した時点で魔法は使えなくなるが、気という独特のパワーを獲得する。


これによりカルミアは、軽い防具しか着用できないが、モンクの如き防御力と回避力、剣聖の如き攻撃力を獲得する。これで【メイガス】のように付与魔法を行わない状況でも戦い続けることができるようになるはずだ。


今、この状況で俺が考えうる最高の形が整った。


「クラスチェンジ、完了!」


俺がそう叫ぶと光の奔流は二人の体から弾け飛んだ。光がなくなったせいか賊共が調子を戻し始める。


「な、なんだぁ?何も変わってないぞ! 虚仮威しかよ驚かせやがって、やっちまいな」


「おう!」




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