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49話


「サトル、サリー、お待たせ」


「カルミア、おそかっ―」


遅かったな!というお決まりのセリフを吐き出す前にカルミアは動き出していた。全身に気を満たしたカルミアは、恐るべき速度で敵を斬り伏せる。十匹ほどいたグリックとニワトリ型に変化した数匹のグリックは、何が起きたのか知る由もなく、瞬く間に顔と体をオサラバさせていく。全て斬り結んだあと、剣を一振り。雷が敵を追撃して倒れたグリック達にトドメをさしていく。


「ったな―…っ」


「…いえ、まだよ!」


ほっと一息つく暇もなく、洞窟の奥から一際大きい魔物が姿を現す。グリックのボスだ。見た目はまんまグリックだが、竜魔吸石という鉱石同様に青白く変色してて、体の所々が青く発光している。全長が五人分はありそうで非情に大型だ。これは赤いヒゲのドワーフが言ってた通りの奴だ。出迎えてくれたという訳か?


「グチャグチャ…キィ~~~!」


耳障りな鳴き声を響かせて、大きな頭を地面に叩きつける。ただの叩きつけだが、体が大きいためそれだけでも非情に威力がある。叩きつけた場所から風が吹き上がり、岩が飛び散る。地響きが俺たちの足元を揺らす。俺やサリーが一撃でも受ければ命の保証はないだろう。


「っく…なんて奴だ。今まで戦った奴の中で一番手強いかもしれないな…サリー!レッサーポリモーフィズムで相手を変性できるか?」


「やってるけど、うまくいかないノ!一瞬しか変化しないヨ~…」


サリーが魔法を唱えると、変異したグリックのボスは一瞬だけニワトリ型の魔物の顔になるが、すぐに元に戻ってしまう。こうなってしまっては打つ手なしか?…カルミアはグリックの攻撃を躱し続けて俺たちにヘイトが向かないようにしてくれている。ただし、これでは決定打を放てない。


「サリー、【能力値変性薬】で一時的にサリーのパワーを上げることはできるか?それでグリックの隙きを作ってほしいんだ」


「分かった!予め作ってあるから、すぐ飲める!【能力値変性薬】を使うヨ!」


サリーは腰に手を当てて、銭湯上がりのおっさんが牛乳を飲み干すが如く勢いよく飲み、飲み終わったあとに上腕二頭筋を見せつけるようなマッスルポーズをとってドヤ顔をキメた。


「そんなポーズ今はいらないよ!早くカルミアさんを助けてあげて!」


「必要だヨ!?マッスルポーズまでやらないと効果が発揮されないのヨ!?常識でしょウ!」


そんな常識聞いたことないぞ!?まぁサリーだし仕方がない。サリーは見た目上はそこまで変化があるようには見えないが、力が増している状態になった。


「いっくよォ~!ぐるぐるパーンチ!」


サリーは腕をグルグルさせてグリックのボスの体にパンチをくらわせる。風圧を伴ったそのパンチの破壊力は抜群で、グリックの巨体を吹き飛ばす。すごい薬パワー…


「よし、カルミアさん!今だ!」


「はあぁぁ…っ!」


カルミアが【電光石火の構え】をとり、体中を雷で満たす。上段構えで半身になり深く腰を落とし、剣先を相手に向けた。必殺雷切の構えだ。


この間でグリックのボスが体勢を立て直そうとしていたため、俺の本をブーメランのように投げて牽制する。俺のパワーもレベルが上がって強くなっているため、これだけでも凶器としては十分だ。ルールブックはグリックの体に突き刺さり出血させることに成功した。本は光を伴って俺の元に戻ってくる。武器にも防具にも本にもなる万能道具最高!もう手放せないね。文字通り手放せないけどね!


牽制している内にカルミアの準備時間を稼ぐことができた。


「…っふ!」


カルミアはグリックのボスの体を高速でつたって頭部まで駆け上がり、必殺の一撃を放つ。今までこれで死ななかった奴はほぼいない。何度も斬りつけ、最後に迅雷脚をお見舞いして着地する。数秒後にグリックの体に無数の傷と雷撃が襲いかかり、無慈悲な追い打ちをかける。周りは煙につつまれて、不気味な静けさが周りを支配した。


「…やったカ!?」


「サリーさん…それは言ったらやってない奴になるので禁句です……」


サリーの願いに応える様に、グリックのボスは重たい巨体を起こして叫びだす。ダメージはあるが、まだ死んでない。


「グチャグチャ…キィ~~~!」


グリックのボスは怒りに身を任せて体中から魔力を放出する。


「何か来る…!」


四つの大きな触腕を使って、体中の魔力を一点に集束し始めた。辺りの温度が一気に上昇していることから、炎属性の魔法であると予測できる。こんなところで火を使われると後々の戦闘がまずい。


「カルミアさん、サリーさん、これが噂に聞いていたファイアボールだ!気をつけて」


グリックは集束させた魔力を溜め続ける。巨体から繰り出される魔法は、たかがファイアボールでもその分巨大で高威力だ。仕方がない、ここは…。


サリーの魔法で一か八かを狙おうと思っていたところに、ブルーノーのパーティーが突っ込んできた。


「今じゃお主たち!サトルたちを助けるのじゃ!」


ブルーノーたちはそれぞれの武器でグリックのボスに攻撃を加える。そのおかげでグリックのボスがバランスを崩して、ファイアボール発動までの時間を稼ぐことに成功する。


「カルミアさん!今だ!」


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