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48話


夜皆が寝静まった頃、俺たちは洞窟の開けた場所で野営をしていた。ここでは火をおこせないため、リックの魔法による【ライト】と、サリーが持ち込んだ謎の発光体を設置して光源を確保している。サリーが作ったと思われる発光体は、水晶玉のような形をしており、眩しく発光している。これは、シールドウェストのギルドで竜の骨が咥えていた光の球によく似ていて、サリーが作成したものは、それのミニチュア版だと思われる。


サリーは相変わらず謎の持ち物ばかりだな…便利だから助かってるけど。興味本位ではあるが、鞄の中身とかちょっと覗いてみたい。発光体を手に持って遊んでいると、サリーが見張りの交代要員としてテントから出てきた。


「サトル~!おまたせ。だいぶ眠れたから交代しヨ~?…あれ、それはアタシが作ったライトボールだネ」


目をこすりながら笑顔で手をふって、サリーは近づいてきて、そのままそばに座り込んだ。


「ライトボールっていう名前なんだね。こんなものまで作れるなんて、さすがサリーだよ」


サリーは青い髪をなびかせて、いつも通りニコニコした調子で応える。


「はっはっは、それはサトルくんがアタシに力をくれたおかげだヨ。アタシはその力の一端を使って出来ることをやってるだケ…。本当に凄いのは君ダ」


サリーは俺からライトボールを取り上げて、頭の上に乗せてバランスをとりはじめる。相変わらず、行動に予測がつかないタイプだ。


 そういえば、こうしてサリーと二人きりになるのは久しぶりな気がする。サリーは、ハーフエルフという武器を最大限に活かしたその完璧なスタイルで人の目を引くほど美しい容姿をしている。青いロングの髪と白い肌。普段はローブで分かりづらいが、痩せているのに出るとこが出ている。エルフはすらっとしている体型が多いが、これはハーフエルフの特権だと言える。優しそうな顔でいつもニコニコ…うん、性格さえ目を瞑れば、完璧だ…。


「ふんふ~ん……あれれ?サトルは寝ないのかイ?」


「少し、変異種グリックのことを考えていたんだ。眠れそうにないから、暫くは座っていようかな…それに」


それに、隣に座ってて悪い気はしない。性格はともかく、美人さんだからね…本人に言うと調子にのりそうだから言わないが。


「それに?」


「いや…何でもないよ」


「ふ~ん、へんなノ…ねぇ、ところでアレ何?」


サリーが天井を指で指した先にはタコやイカのような触腕が四つ、毛虫にくっついた形をした魔物がいた。しかも数が多い!その触腕の吸盤をうまく使って張り付いている。あまりのキモさに鳥肌が立つ。全く気が付かなかった…。


「これ、もしかして囲まれてる?」


「そうだネ!」


サリーはとびきり可愛いウィンクをする。可愛いけど…可愛いけど何故すぐに言わないんだぁ~!!まっ本来は気がつけなかった俺が悪いんだけどね。


グリックは見計らったように天井から自由落下して、地面にべチャリと落ちる。最初の一匹を皮切りに次々と落下してすぐに俺たちを囲み始める。微量な水分を含んでいるのか、落下した地面はシミができた。一つ一つがキモすぎる。


「敵襲!敵襲~!カルミアさーんっ!」


補給部隊から予め手渡されていた緊急用の小さなドラのようなもので音をたてて、寝ている皆を起こした。ブルーノーパーティーは怪我をしないように、ドワーフの自警団達とすぐに後退を開始した。今ここにいるのは俺たちだけだ。そして、俺たちがやられたら皆やられるだろう。


「サトル!あと少し持たせて…!」


カルミアは防具を外していたようで、装備中だ。今は二人でどうにかもたせる必要がある。


「サリーさん、ここで火が出たらまずい。変性攻撃魔法はせずに戦ってほしい。レッサーポリモーフィズムで数匹しばらく無力化してくれ!」


サリーの唯一の攻撃魔法、イリュージョン・ストライクはどんな属性が出るか、出してみないと分からない魔法だ。こんなところで火など出てしまったら戦いを続行できなくなるだろう。お得意のレッドフェイスポーションも臭いによる攻撃がメインなので同様の理由で非情にまずい。


「分かったヨ!…皆変身しちゃえ!レッサーポリモーフィズムっ!」


サリーが手持ちのクォータースタッフを掲げると、光が収束して俺たちを囲むグリックの群へ向かう。魔法を浴びた敵は無力なニワトリ型の魔物に変わっていった。


「グチャグチャ…コ、コケ!コココケ!」


「グチャグチャ…」「グチャグチャ…」


グリックはどんどんニワトリにチェンジされていくが、数が多い。サリーもレベルアップしたので、変化させられる量と分数は伸びているが、これではすぐに魔力が無くなってしまうかもしれない。俺もすぐにルールブックを武器に応戦する。この本はとてつもなく頑丈にできていて、壊れる心配が無いのが良い。


「それ!てりゃ!」


ルールブックの重みと角のコンボでグリックの頭へ攻撃を繰り出す。俺の力もそこそこになったおかげか、数発殴れば倒すことができるようだ。グリックも、持ち前の触腕と頭についたクチバシのような口で応戦してきた。相手の足が遅いのが救いだったな…おかげで回避しながら対処できる。数匹を相手に立ち回っていると、そこに別のグリックが俺に突進してきた。


「サトル、後ろ!」


「…っく!」


サリーの警告でどうにか防御が間に合った。後ろから来たので咄嗟にルールブックを盾に振り返る。グリックはそのまま触腕についた吸盤でルールブックを奪って、バックステップで俺と距離を取ってしまった。


「ふふふ、グリックよ…武器を奪ったつもりかい?」


「グチャグチャ…グチャ?」


グリックはクチバシで本を壊そうと突きまくるが、すぐにルールブックは光となって俺の元へ戻ってくる。これにはグリックも予想外だろう?こいつは呪われた装備も真っ青な外せない装備なんだぜ。


「サトル、サリー、ありがとう。お待たせ」


そこに装備をバッチリ整えたカルミアが到着した。



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