完結編 ４１話
アナウンスさんが脳内で決意を固めるのと同時、白き部屋が黄金の光に包まれた。俺の体から放たれるエネルギー体の奔流だ。
「うわわ！！サトルが！光ってル！？」「これは……」
徐々に力が溢れ、万能感に包まれていく。まるで底が見えない力を受け取り続けているようだ。
見ているだけだったネヴァー・イーターがけん制のためか、攻撃を加えてきた。
「::**;[メソペラジック・ストライク]」
黒く大きな球体が迫る
俺もそれに対抗した
「[ファイア・ボール]！」
ただの基礎魔法だが、今なら負ける気はしなかった。読み通り、両者の力が拮抗し、中間位置で爆ぜた。先ほどまでであれば、天地がひっくり返ってもあり得なかった力量差が覆ったのだ。
ネヴァー・イーターの目が何度もギョロギョロと回り、この力を見定めているようだ。
「その魔力、その神性……間違いない。生命、光を司るアカトネイターの残滓を感じるぞ……お前は、神の使いであったか」
（なんだそれ…？まぁいいや）
「どうでもいい。そんなことより、お前、見ているだけじゃなかったのかい？余裕がなくなって手のひらを返して攻撃するなんて、低級悪魔らしい発想だ。おっと失礼、すべてを凌駕する悪魔さんだったっけ」
「+:::;;:****;;::**;`*!!!」
侮辱されたネヴァー・イーターは怒りを表現するように触手を激しく動かす。何重にも魔法を準備しているのか、内容を聞き取ることはできない。
（よし、俺に意識が向いたな。この間に力を仲間に与えれば…勝てる…！）
*サトルの離脱用に用意していたレジェンダリ・ポータルの魔力を全てエンシェント・レイドモードに移行。撤退が不可能になります*
（そんなもん用意していたのか……まっ、最初から俺だけ逃げるつもりなんてないさ。ここで…）
「終わらせる！」
更に二段階ほど力が増した気がする。
ネヴァー・イーターから飛来する攻撃魔法を全て避けつつ、数百のファイアボールを同時に撃ち込みまくる。こうして奴と俺の仲間が挟まる陣形を作り出していく即興の作戦だ。相手は挑発に慣れていなかったようで、俺の動きを不信に思うことはない。
ここで、俺はルールブックを携え、片手を水平に突き出し、鋭く空を切り裂くように宣言する。
「よし、いい頃合いだ。たしか、こんな感じか…？[エンシェント・レイドモード]…発動！！」
ゴォオオオ！！
その瞬間―爆発にも似た光の波動がバトルフィールドに広がった。
俺を包み込んでいた神性を持った魔力が均等に五人へ分配される。
今まで感じていた全能感が薄れ、ガクンと体が崩れ落ちた。
「…っきっつ！」
（一度使っただけで全身が筋肉痛みたいだ…！）
「+::**;:^..**!!!!」
スキあり…！と言わんばかりにネヴァー・イーターが魔法を打ち込もうとするが、それは叶わなかった。
ネヴァー・イーターの攻撃は、黄金の光に包まれたイミスの盾によって阻まれる。
「イミスさん…！」
よく見れば、仲間全員の背に羽のような半透明の翼が見える。神々しい光と相まって、天の使いのようだ。この距離を一瞬で移動した彼女の今の能力や如何ほどのものか。
「言ったでしょう、必ず守るって！」
さらに奴本体は後ろからカルミアにバッサリ斬られた。
「サトルの刃として……戦う！！」
ネヴァー・イーターの体は、元に戻ろうとするが、神性の入った攻撃が余程効いたのか、分離した体を戻せないでいる。まるで、巻き戻しと早送りを繰り返し見せられているかのようだった。
カルミアは無慈悲にも、雷と光を灯す刃で何十という連撃を加える。
やがて復元能力が破壊ペースに負け始めたのか、ネヴァー・イーターの体が壊れていく。
だがそのまま死ぬような生物ではなかった。
「*;;.,**;;:*[アビスシャル・ゾーン]」
また名前だけがかろうじて聞き取れる技を繰り出したのだ。
ゴゴゴゴオ……
白い空間が歪み、反転
突然黒一色の空間に放り出された。
「白い空間と思えば今度は黒…一体なんなんだ？」
アイリスは肩をすくめる
「次切り刻んだら虹色の空間になるに違いない」
するとフォノスが冗談をかました。
間も置かずに黒い空間の底から、ネヴァー・イーターが出現した。
「来たぞ！」
だが今までのボール状の姿ではない。それを数珠つなぎにしたような、超巨大なムカデ型として現れたのだ。奴は体躯を活かし、こちらを押しつぶすべく迫ってくる。まるで動くビルだ。
あまりの冒涜的な姿に言葉を失うが、すぐに我に返る。
「……みんな。やることは変わらない。俺たちは、必ず勝つよ」
意志に呼応するように、それぞれが放つ神性が深淵でより煌めく。
