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42話


レベルアップだ!ゴブリン共を倒し続けた努力が実ったのだ。最初は三十匹程度のエンカウントだったが、終わってみれば倍はあったと思う。ブルーノーのパーティーで負傷者が出てしまったが、犠牲者もなく乗り越えられた点は良かった。カルミアもサリーも化け物に拍車がかかっていて、成長が楽しみで仕方がない。ただ一つだけ納得がいかないこととしては、俺はレベルが幾つになっても魔法や格好良い技を覚えないことだ。謝罪とは、微妙に使えそうな能力なのがまた腹立たしいぞ!


やり場のない怒りを感じて口を尖らせていると、グレッグとリックが話しかけてくる。


「サトル、オデ、助かった」


「えぇ、あのままでは危なかったです…いててて」


二人共何箇所かゴブリンに斬られた切り傷がついてて痛々しい。そうだ、こんなことで悩む前に二人の手当をしてやらねばなるまい。


「とんでもないです。それより、傷が深そうですね?サリーを呼んでくるのでお待ち下さい」


リックは申し訳なさそうにお辞儀する。


「ありがとうございます。私の[レッサーキュア・ライトウーンズ]では悪化を止めるくらいが精一杯でして…」


俺はサリーを呼んで回復薬の調合をお願いした。サリーはすぐに承諾してくれ、簡易調合ポーチをセットしたと思うと、回復薬の調合を開始した。


「サトルの頼みだからネっと…まずはヒールノイド薬草をヒドロヒドラ火炎草と合成……できた。あとは…何だっケ??う~ん、まっいっか!ランスフィッシュの干物でも入れてみヨ。美味しいから元気でるよね!ウフフ…あとはその辺に生えてる草入れとこー」


……本当に大丈夫なのだろうか?途中からどうみても適当だぞ。前は盗賊を溶かすような薬を作ったから、リックたちに与えるのは少しだけ抵抗がある。無論そのエピソードは今から飲むであろう当人へ語らないほうが良いだろう。しばらく見守っているとすぐにポーションが完成する。


「できタ~!名付けて、サリーブレンド・キュアポーション!ささ、遠慮せずグイっといっちゃってくださいナっ」


「オデ、感謝」


「あぁ…アカトネイターの慈悲に感謝いたします」


ポーションを掲げ、ブイサインでキメポーズしたサリーは、負傷した二人へ完成したばかりの緑色ポーションを手渡した。二人はサリーを信頼しているのか、何の疑いもなくポーションを飲み干してしまった。溶けませんように。


…二人の体は暫くすると優しい光に包まれ、傷が塞がっていく。何故…あんな適当なブレンドで薬になるんだ…世の中の薬師に謝ってほしい。 傷ついた皮膚が健康な皮膚へと巻き戻ったかのような治りっぷりに二人は唖然とした。変性魔法の応用だとは思うが…うん、これは効果が高すぎるな…知力依存で効力が高まっている可能性が高いが、一般的な薬草と火炎草で発揮する効力ではないことは確か。リックは興奮してサリーへ詰め寄る。


「おぉ、なんという神業!サリーさんはさぞかし名のある薬師…いや、魔術師様なのでしょうか?見たところ、調合は私と同じ善属性の神格から癒やしの力を得て行っているようにお見受けしました。いかにしてポーションへ癒やしの力を付与し、高める術を身に着けたのでしょうか!?」


「へ…なにそレ?」


サリーはぽかんとした表情でリックの話を受け流している。彼女はフィーリングでやってしまうから恐ろしいのである。


「秘密…ということでしょうね。そりゃそうです…こんな秘術はおいそれと伝えて良いものではありませんから。分かりました」


勝手に納得したリックは、飲み終わったポーションに残った数滴を指に垂らし、目が飛び出るほど凝視している。そっとしておいてあげることにした。


サリーたちがわいわいしているのを眺めていると、ブルーノーがやってきた。ゴブリンの処理が終わったようだ。


「サトルよ…此度はワシの判断ミスで両パーティーを危険にさらしてしまったこと、謝罪する」


「シュルルル…」


ブルーノーは申し訳なさそうに頭を下げてきた。そばにはキュルルもいるが、いつものように元気のある鳴き声ではない。項垂れてて尻尾も垂れ下がったままだ。


「あ、頭を上げてください。犠牲者が出ることもなく、何もなくて良かったじゃないですか。ふたつのパーティーがゴブリンの大群を退けた。今はそれを共に喜びたいと思います」


俺がそう言うと、ブルーノーはゆっくり顔をあげる。何度かヒゲを撫でたあと、納得したように頷いてくれた。キュルルもブルーノーが顔色を良くしたのに気がつき、尻尾が揺れ始める。


「そう言ってくれるなら、ワシとしてもありがたい。さすがサトルじゃ」


「今日の移動はここまでにして、お祝いしませんか?」


「おお!ええじゃないか。秘蔵の酒を共に飲もう!なぁ、キュルルよ」


「シュルル!」


すっかり機嫌を良くしたブルーノーとキュルルは肩を組んでお祝いの準備をし始めた。俺も手伝おうと思ったが、そこに座っておれと言われてしまったので仕方なく様子を眺めている。地面に座り、ふと足元に目がいくとゴブリンから取ったのだろう小さな魔石が袋に入ってまとまっていた。


ブルーノーに目で訴えると、それに気がついたブルーノーはグッドサインのポーズをして、お祝いの準備を再開してしまう。ドワーフは義理堅いなぁ、この魔石は受け取ってくれということだろう。口で言ってくれれば良いのにとも思ったが、彼は照れ屋なんだろう。




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