表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
414/478

征伐編 26話

 カルミア視点


 * *


 数百対一の戦い


 普通に考えれば、私の劣勢は覆らないし領土が蹂躙されてしまう未来も変えられない。だけれど、私は彼から力と戦う勇気をもらった。今なら、立ち回りひとつで対抗しうる可能性だってある。


 勝算なしで、このしんがりのような役割を引き受けたのではないわ。対峙して、力が湧き上がってくるのが分かるもの。無尽蔵に湧き出る力を制御するので、精一杯なほどよ……きっとこれも、彼がくれた力。


 「…」


 壁のように突き上がった地盤の上へ跳躍し、倒すべき敵たちを見下ろす。数えるほど億劫になる兵数の中から、目立つ装いの将校らしき男が慌てているのが分かる。彼はこちらを指さし、部下へ何等かの指示を出しているが、ここからでは聞き取れない。きっと、矢で打ち抜けだとかそんな命令をしているに違いないわ。


 部下たちは隊列が乱れ、私の防御の余波で前衛が吹き飛んだのでそれどころじゃないでしょう。だけど、ここで慈悲を見せるわけにはいかないの。


 私の後ろには、守るべき人がいるのだから。降りかかる火の粉は、払わなければならない。


 「次は私の番」


 今も持続的にあちこちから飛んでくる数多の矢を斬り捨て、私は宣戦布告する。湧き出る力をぶつける矛先へ……全ては、私の大切を守るため。


 「取りにて来たるは叶わずの傷旗……『天雷斬』」


 私はそう宣言した。別に聞かせるためではない。だから敵の将校へ聞こえなくてもいい。


 刀を抜いて空へ掲げると、天候が変わる。


 先ほどまで雨ひとつ無かった空色は黒く、そして雷鳴が響く。やがて大雨粒が地を叩き、敵兵が私を見上げることをより困難なものとした。


 雷鳴の間隔が短くなり、招雷した力が刀に飛来すると、激しい音と共にそれを纏う


 「…っ!」


 天災を纏うというのは体への負担も大きい。刀を持つ手が焼けるように痛い。一回目の時はこんなことは無かったが


 (この奥義は二回目だけど、一回目よりも明らかに力が桁違いに増している気がする……)


 上空から自由落下し、そのまま刀の切っ先を地面に向けた。狙いは将校付近


 敵兵たちはそれを見てから撤退するが、その行動は無意味に終わる。


 刀の切っ先が地面に触れると同時、刀に内包されていた莫大な力が地に伝達し、大規模な雷撃と爆風、地割れを一度に発生させ周囲を吹き飛ばす。更に、抉れた地面から刀を引き抜くと雷そのものの花が咲き、天に昇っていく。


 巨大な雷の花は、天へ昇るように美しく咲き誇った やがて散った無数の花弁は雷撃となって天罰を下す。天罰は更に地を抉り、爆発を引き起こす。


 無数の雷撃と爆発が連鎖を続け、街道は瞬く間に焦土と化した。


 将校は最初の一撃で消滅し、敵本隊も壊滅的なダメージを受けて、一部の精鋭を残し、残りは敗走し出す。これは悪夢だと言い、目を虚ろにしてその場に立ち尽くす兵もいるが、まだ生き残りはいた。


 その中でも精鋭と見られる兵が数十名、カルミアの前に出張る。


 「デオスフィアの兵ね…」


 「ううう……」「おおお…」「……うっううう!」


 敵兵の目や体の一部は既に魔物や悪魔のような形に変化してきており、もはや人間と呼べるのか怪しい姿だ。いつぞやのデオスフィアで悪魔化した相手を思い出す。だが、もはや彼らには既に言葉を交わせるほどの理性が残っていないように見えた。


 敵兵の手の甲には怪しく黒く光る石。それも両手に装着している。広範囲攻撃でほとんどは消し飛ばしたはずだが、まだかろうじて生きているとは やるわね。


 だけれど、私がやることは変わらない。彼を守るんだ。


 首だけで 来い と挑発する。それを合図に、私へと敵が一斉に襲いかかった


 「全てを変える…革命の華を咲かせましょう」


 雨で濡れた刀を握り直し、闘志を奮い立たせる


 私は絶対に、彼の笑顔を守る



 * *



 リンドウ視点


 「さぁ行きますわよ!」


 両手を腰に当てて、出来栄えを確認する。個人的にはなかなかの完成度ですわ


 「さぁ行きますわよ!じゃないんじゃが……」


 カタパルトの発射口には丈夫な樽が固定されている。そこには顔だけを出した状態で詰め込まれている哀れな精霊が何か愚痴を言っている


 「手伝ってくれるって言いましたの。フォティアは友達ですのよ」


 「投石機に乗せる友達とは中々斬新じゃな!?」


 フォティアはガタガタと樽から抜け出そうとするが、わたくしの操霊術によって抜け出せないことは織り込み済みですわ


 「発射準備、整いました。タルのフタを閉めれば、雨に晒されることなく大精霊のフォティア様がフォマティクスの前衛部隊に接触できます」


 報告を受けて、二つ返事で許可しますわ


 「よし、発射なさい!目標は距離を詰めてくる前衛部隊です!」


 「っは!」


 ガタガタガタガタガタガタ……ガチャン


 トレビュシェット式のカタパルトの準備が整う。あとは重い岩を竜人の男手で操作するだけでフォティアは飛んでいくそうですわ


 「ちょ、あの、わし大精霊でして―」


 「発射ですわ!」「発射!」


 バーン!


 「ぬわああああああ~!? リンドウ~!!お主覚えていろ~!!!」


 衝撃音と共にフォティアが飛ばされた。彼女の断末魔は距離と共にすぐに小さくなっていく


 「着弾した精霊はわたくしの力でいつでも戻せますの。着弾したら教えてくださいまし。フォティアを回収します。そして、敵兵が接近するまでにこれを繰り返していくのですわ!」


 「か、かしこまりました!」


 少しの時間差で、遠方から派手な爆発音が届いた。


 最低限の仕事はしたのか、フォティアが自身を炎上させたのだろう


 「接近部隊に対して着弾を確認!飛ばしてくる弾が樽だと油断したのか、回避行動は行わなかったようです!大きなダメージを与えました!」


 「やりましたわ~!」


 つい嬉しくて兵隊さんとハイタッチ


 おっといけません。フォティアを呼び戻さなくては…


 錫杖を振るうと、シャランという音と共に、彼女の疲れ果てた姿が顕現した


 「た、ただいまなのじゃ。そして、つ、疲れたのじゃ……はぁ、もう嫌じゃ。爆発したあとは濡れるし……もう、これでいいじゃろう?」


 「何を言っておりますの!まだまだこれからですわよ!」


 また錫杖を振るうとフォティアは樽にセットされた


 「お、お主……」


 炎の大精霊の表情が真っ青になるという快挙をリンドウは成し遂げた。きっと、今後それを成し遂げる人はいないだろう


 「さぁ、もう一度行きますわよ!何度もやりますの!」


 「いやぁああああ~!?」


 フォティアは敵を壊滅させるまで弾としてカタパルトで飛ばされ続けるのであった



フォマティクス第二部隊→壊滅

フォマティクス本隊→ほぼ敗走


敵視点は長くなりそうなので一旦割愛

そろそろこの防衛戦…?も終わります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ