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41話


食事休憩がてらの自己紹介も終わり、雑談も交えて旅を再開した。ここまで大所帯のクエストは初めてなのでワクワクする。


「む…敵じゃな」


ブルーノーの一言で全員武器を取り戦闘態勢に移行する。目視できるギリギリの範囲にはゴブリンがいる。それだけなら問題がないが、数が多い。クレリックのリックが双眼鏡のような偵察道具で相手方の布陣を確認。ブルーノーに助言する。


「ブルーノーさん、敵の数はおよそ三十はいます」


「ふん、腕鳴らしには丁度よい。サトルらにワシらパーティーの強さを見せつけようぞ。サトルたちはそこで見てていいぞ」


「オデも気合、入る」


「キュルルルル…!」


ブルーノーはゴブリンに向かって盾を見せつけるように斧で打ち鳴らす。バンバンと耳障りな音が鳴り響き、様子を伺っていたゴブリン共が一斉にこちらへ向かってきた。


真っ先に動き出したのはキュルルだ。バシバシと尻尾を地面に叩きつけながら、ブルーノーと共に敵の注意を引いている。


「グギャギャ!」


ゴブリン数匹がキュルルと接近して戦闘を開始する。キュルルはスワッシュバックラーらしい戦い方をしており、ゴブリンの攻撃を全て盾や立ち回りで器用に回避し、後ろに回り込んではバックスタブを打ち込んでいく。その動きは無駄がなく、見事に相手の急所を正確に貫いていった。正に戦士とローグの間の子である。


ブルーノーも、キュルルとはタッチの差でゴブリンとエンカウントして斧を振り回し始める。ゴブリンのナイフによる攻撃が何発かブルーノーに刺さるが、全く気にする様子がなく敵を地面に叩きつけ両断していく。やはりというかイメージ通りのパワフルな戦闘方法だ。フィジカルに物をいわせる、押して押しまくるタイプだろう。


リックとグレッグは単騎ではなく、二人セットで動いていた。グレックが大槌を振り下ろして、一匹潰す。ゴブリンたちは、大振りなグレックに対して攻め入る余地を見つけては、そこ目掛けて攻め続けるが、リックがクォータースタッフで振り払ってガードしていく。二人共何度かゴブリンに足元や手を斬りつけられていた。数が多すぎるのか無傷とはいかないようだ。うん、それが普通だよな…。


「んぬぅ…チマチマと小賢しいやつらじゃ!」


ブルーノーは斧を振り回すが、ゴブリンは時間を稼ぐつもりなのか、ブルーノーを囲んでいるが、回避に徹しており上手く救援に回れない。同様に、キュルルもゴブリンからの波状攻撃を回避するので手一杯になっているようだ。


「カルミアさん、サリーさん!俺たちも出よう。ブルーノーさんには悪いけど、手を出すべきだ。想定より数が多く、負傷者が出始めています」


「分かった」「おっけィ!」


ゴブリンはあと数十匹いる状況だったが、何故かエンカウント始めより数が増えている気がする。そのため、前線は頑張っているが押されている状況だった。…カルミアたちが参加するまでは。


「カルミアさんは、緊急性の高いグレッグさんとリックさんの援護を。サリーさんはキュルルさんの援護をお願いします」


二人は頷いて戦闘を開始する。状況はすぐに一変した。


「はあぁぁっ……雷切!」


 カルミアは[電光石火の構え]をとり、ゴブリンへ剣を向ける。体に莫大な雷の如きエネルギーを溜めて、走り出した。レベルアップの影響もあって、こうなったカルミアを目視で追うのは、更に難しくなってきている。カルミアは、ほぼ瞬間移動のような動きで敵へと近づいて、一閃。雷鳴が場を支配した。 打ち合いをしているブルーノーパーティーとゴブリンは、あまりの音で驚いて、命の取り合いも忘れてカルミアへと目を向ける。


そこには、無惨にも黒焦げになった十匹ほどのゴブリンが、地面に這いつくばっていた。ブルーノーやゴブリンはぽかんとした顔でその様子を見つめている。


「アタシもいくよォ!何が出るかな~?そ~れ、イリュージョン・ストライク!」


クォータースタッフへ集束した魔力が虹色に輝く。虹色の球はそのまま高速発射され、ゴブリンたちに着弾。着弾部分から周りの温度が急激に下がり、霧が出た。そして大人五人分ほどはある、巨大な氷の山が一瞬にして出来上がっていたのだ。ゴブリンは襲いかかる姿勢のまま氷漬けになっている。どんな属性が出るか分からない魔法だが、今回は氷属性が出てきたようだ。


カルミアとサリーの参加によって、ゴブリン優勢な状況は覆ってしまい、次々とゴブリンが駆逐されていく。ゴブリンが出来ることといえば、逃げ回ることしかなかった。次々とサリーの魔法が放たれ、場は氷の山と雷鳴響く地獄と化す。


「よし、俺も攻撃しよう!」


何もスキルがないけどね!ひどく狼狽したゴブリンを後ろから殴りつけていく。レベルアップして素のステータスが高いのか、それだけでゴブリンはダウンしていく。俺は調子に乗ってゴブリンをのしていくと、背後から不意打ちを仕掛けられてしまった。


「サトル!危ない!」「―うぉ!」


カルミアが間に入って俺を押し出す。そのせいで両手が使えなくなってしまった!このままじゃカルミアが斬られる。


「カルミアさん!」


するとカルミアは目にも留まらぬ速さで、押し出した勢いでそのまま地面へ伏せて、ゴブリンの剣による薙ぎ払いを回避し、片手で体を起こすと同時に回し蹴りの動きで技を繰り出した。


「迅雷脚!」


蹴りつけたゴブリンは吹き飛んで、何度もバウンドして地面へ激突する。追い打ちをかけるようにスキルの効果が発動して、ゴブリンへと何度も落雷が落ちた。さらにゴブリンは吹き飛んでいった。怖い。


「サトル…大丈夫?」


カルミアが優しく介抱してくれる。顔はキリッとした目つきだが心配そうに眉がハの字になっている。かわいい!しかし、怖い。可愛いと怖いのマリアージュという奴だな。


「はい、大丈夫です。すみませんでした。調子に乗ってました」


俺は迅雷脚のターゲットとならないように、水の如く流れる様な動きでカルミアと向かい合い、頭を下げまくる謝罪マシーンと化した。カルミアは目を丸くしている。


「…流れる様な綺麗な体捌き。サトル、すごい」


 少々トラブルもあったが、俺たちの介入によってグレッグとリックは無事に助かったようだ。ものの数分で一通り討伐を終えてしまった。



*敵対勢力を無力化 対象 サトル、カルミア、サリーのレベルアップを確認しました*



*カルミア*


レベル 4(上昇値)

ヒットポイント 75(+27)

筋力18(+2)

敏捷力25(+3)

耐久力21(+2)

知力9

判断力10

魅力13


技能(上昇値)

運動10(+2)

機動力10(+2)


・[剣聖集気法]を獲得

パッシブスキル:敵と対峙している間、徐々にヒットポイントが回復する




*サリー*


レベル4(上昇値)

ヒットポイント 55(+20)

筋力10(+1)

敏捷力18

耐久力15(+2)

知力25(+3)

判断力15

魅力13


技能(上昇値)

知識11(+1)

伝承8(+1)

知覚11(+1)

魔道具の扱い9(+1)


・[コンフュージョン]を獲得

アクティブスキル:相手を混乱状態にさせる魔法




*サトル*


レベル4(上昇値)

ヒットポイント 50(+20)

筋力11(+1)

敏捷力11(+1)

耐久力12(+1)

知力13(+1)

判断力15(+1)

魅力21(+1)


・謝罪が上手くなった



* * *


「ウヒョヒョ…これは、予想外ですねぇ!」


嬉しそうに頭の上で手を叩いてはジャンプするノームが一人。そう、タルッコである。タルッコはサトルが所持している謎の本と力を解明すべく(可能であればサトルを排除するべく)予めサトルたちの進行ルートにゴブリンをおびき寄せていたのだ。そして、討伐までの一部始終を見つからないように監視していたのである!


「ふぅ…しかし、わたくしめの苦労も少しは考えて欲しいものです。ゴブリンの巣にちょっかいをかけてここまで引っ張ってくるのに、相当な労力を要しましたよ…やれやれ」


誰も居ないのにやけに演技のかかった手芝居を披露してため息をつく。


「絶対にあの本を奪ってやる…ウヒョヒョ!ウヒョヒョヒョ」


タルッコの企みは終わらないようだ。




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