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征伐編 21話

視点が目まぐるしく変わっているので、書いておきました。

カルミア視点


 * *


 愛刀『石楠花一文字』を携え、戦場に向かう。見晴らしの良い景色だった場所は、イミスの能力である巨大ゴーレムによる障害物の投擲によって、見通しと足場が悪いフィールドへと変化していた。


 見上げるほどの巨木や大岩が空から落ちてきたら、デコボコな地形へと変化してもおかしくはない。相手にとっては自信を揺さぶられる出来事であったろう。だが、勇敢な戦士たちはそれでも隊列を組んで侵攻を続けるようだ。一人の剣士として、相手の雄姿を称えたいところではあるが……私にはやるべきことがある。


 エクスタミネーターの地形変動により、隊列を維持して通れる場所が限定された。これにより敵の侵攻ルートは大きく3つに絞られたという。私はその内の一つに単身で挑む。


 フォマティクスの進軍予定地のひとつに陣取り、相手を待つ。


 しばらく待つと、遠くから戦いの音が聞こえてくる。恐らく、他2つのルートは先に遭遇戦へと入ったのだろう。戦友たちの武運を祈ろう。


 「…きた」


 そして、私の元へも予定通り…


 ザッザッザッザッ


 徐々に近づいてくる大量の足音と金属音。やがて目視可能な範囲まで奴らはやってきた


 隊列を組んだ数百もの完全武装の兵たち。


 これから私は、たった一人でこの道を守り切らなければならない。私の後ろには守るべき人がいる。


 フォマティクス側も、女が一人対峙しているだけの状況を不審に感じたのだろう。進軍が止まり、馬に乗った者が一人やってくる


 「おい、そこの女。ここは戦場だ。逃げ遅れなら道をあけて戦火の届かない場所へ行け」


 隊長格と思われる男だった。だが、私は逃げ遅れた農奴ではない。


 「私の居場所はここだから。ここから先には、誰一人とて通さない」


 男は顔を歪ませて抜刀する


 「動かねば進軍の邪魔だ。たとえ女でも斬るぞ」


 「…やれるものなら、相応の覚悟でやってみればいい」


 「貴様…!」


 我慢の限界に達したのか、顔を真っ赤にして馬上から斬りかかってきた


 「進軍の邪魔だ!失せろ生意気な女がぁぁ!…が―」


 だが、男の煩わしい口上がこれ以上続くことは無かった。カルミアが血ぶりをすると同時に男の頭が落ちる。


 その剣筋を辿れた者はこの場にいない。フォマティクス側も、急に隊長格の頭が落ちたことでざわつきはじめる。


 「…死ぬ覚悟をもった者だけが、来るといい」


 カルミアが数百もの軍隊に一切ひるまず、刀の切っ先をフォマティクス軍に向ける。


 明確な挑発だ。これがただの村娘なら、笑いごとや冗談と受け取っても良い状況だが、なんの前触れもなく隊長各の首が落ちたのだ。


 フォマティクス側も、ようやくカルミアがただの女から『意図して配置された剣士』であると認識したようで、隊列を組みなおして接敵する。


 「所詮は一人だ!囲んでやれ!」「殺すなよ!いたぶって持ち帰るんだ…」


 下劣な笑みを浮かべる兵たちが、数十人。武器を片手に我先にと群がる


 「まて!奴はただの女じゃない!隊列を乱すな!」


 別の隊のリーダーが血気盛んな男共を止めに入るが、もう遅かった。


 男共の手が私の体に届くことは無い。


 「[召雷集気]…はぁぁっ [雷閃一文字]…っ!」


 抜刀した刀を一度戻し、召雷集気で強い気を練ると、その気力を雷の如く放つ


 轟雷が響き、強烈な音と閃光が広がる


 部隊の足を止めるには十分な理由だった。目の前に雷が落ちてきたかのような感覚の後、カルミアの周囲には焼け焦げた死体が一閃されて転がっている。その数は数十に及ぶだろうか。


 「…私は警告した。だけど、もう一度だけ言う。ここから先は、相応の覚悟をもって通りなさい」


 体にまだ雷を走らせた鬼人の刀が隊に向くと、もはやフォマティクス側も油断はしない


 「隊列を組めー!大盾は前に!弓隊は火矢を準備!」


 「火矢の準備が整いました!いつでもいけます!」


 「よし、放てぇぇええ!!」


 一人の女に対して、まるで竜を討伐するかのような大規模な隊列変更を行い、数えきれないほどの火の矢を放つ。まるでレイドボスの討伐陣形だ。


 カルミアの頭上には、青い空を赤く染めるほどの矢が降りかかってくる


 「はぁぁぁぁぁっ!!」


 カルミアは納刀して、更に腰を深く落とした。


 「[天地否独爻劔てんちひるがえしどっこうのつるぎ]……岸壁門!」


 研ぎ澄まされた雷切の一閃を『敵ではなく地面に』向かって斬り飛ばし、その勢いで地面を岸壁のようにえぐり建てた。その膂力は人の限界を単に超える。


 その名の通り、天地を翻したような単一地形操作の大規模な防御


 岸壁は無数の火の矢を簡単にせき止め、カルミアを守るだけではなく、地面がえぐられた衝撃で前方の大盾部隊を、その衝撃で吹き飛ばした。


 「…次は、私の番。サトルには、指一本触れさせない。私が、守るから」


 彼女の刀は魔力とは異なる力によって集気され、莫大なエネルギー波動が雷撃のように纏っていた。彼女の覚悟を体現したかのような力。


 カルミアの『防御』が終わり、攻撃に移る。そう、地面をえぐり建てたのは、彼女の意図した攻撃ではない。カルミアにとってはただの防御だ。ただの防御で前衛を吹き飛ばす。この事実がフォマティクス側に更なる絶望を与える。


 この時、フォマティクス側の軍は初めて自覚する。


 我々が挑む、怪物の実態に。


 *サトルへ通達 カルミアのレイドモードが発動しました*



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