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40話


「ふむ…お主はたしか、シールドウェストの領主が御座す邸宅に招かれていたじゃろう」


早朝、ブローンアンヴィルへ向かうため、カルミアとサリーをパーティーに加え、ドワーフのブルーノーと一緒に町から出たところだった。今回はブルーノーのお仲間さんご一行とも一緒だ。カルミアが俺とサリーを乗せて手押し車を引き、ブルーノーがカルミアに話かけていた。ブルーノーのお仲間は俺たちの少し後ろを歩いている。


「うん…私の一族から代表として、といっても私が率先して申し出たのだけれど」


カルミアの剣は先の戦いでボコボコだったので新品の片刃剣に一新されており、防具もワンランク上の装備に変わっていた。大物を狩ったあとは金銭的な余裕があったので、その後鍛冶屋に出向いて調達したんだろう。


「ほう、見たところ片刃を使っておるようじゃな?その立ち振舞いや足運びからして、名のある一族なのじゃろうな」


「そう、ね…」


カルミアは少し気まずそうに応えた。たしか、彼女の一族は皆【メイガス】と言われる魔法剣を使用した戦法を得意とする。俺と出会った頃のカルミアは、魔力による適正が無かったこともあって、【メイガス】の力を上手く引き出せず、今のような人間離れした強さを得てはいなかった。カルミアがこの話を嫌がっている気がしたので、話を変えることにする。


「そういえば、パーティー同士の自己紹介がまだでしたね。ちょっと休憩にして自己紹介をしませんか?」


ブルーノーは大きく頷いて俺の肩を叩いた。


「おおう!良いとも、お主たちの紹介を頼む、その後でワシの仲間を紹介しよう」


町から出て数時間が経過、良い時間だったので近くの水辺で休憩をはさみつつ、自己紹介をする。


「じゃあまずは俺からですね。仮Cランクパーティーのサトルです。見た目通りヒューマンです。得意技は…味方の強化魔法です。武器はこの本です」


逆立ちとか言ったらドワーフのヘソを曲げるかもしれない。真面目に応えてもダメだろう。俺は自分の持っている本を皆に見せる。とてつもなく丈夫なので、鈍器や盾として活躍するのだ。ちなみにクロスボウは新調しないことにした。


「…私はヒューマンのカルミア…サトルを守る。そして片刃剣を使う。最近は剣の合間に繰り出すような体術も練習している」


…話は以上だとも言うこともなく俺の横にいる。え?おわり?カルミアさんや…それでいいのか。


「は~い!ハーフエルフのサリーだヨ!変性魔法が得意なんだ。攻撃魔法も使えるようになったんだヨ。よろしくネ!」


お得意のニコニコスマイル。よろしくネ!のタイミングでお決まりのキメポーズをとって、満足そうにご飯を食べだした。そのキメポーズ必要?かわいいけどね?サリーの装備もカルミア同様に一新されており、俺同様にクロスボウがない。これはサリーが攻撃魔法を覚えたことが大きいだろう。クォータースタッフはそのままだが、服が小綺麗な白いローブになっている。


「それで全員かの?それではこちらのパーティーの紹介じゃ。ワシは…知っていると思うがドワーフのブルーノーと言う。斧と盾を使いこなす【ファイター】じゃ。剣を使うヒューマンのファイターより力と頑丈さに自信がある。そこなサトルは邸宅の襲撃を共に生き延びた仲間じゃな。しかし…皆強そうなメンバーじゃのう?なぁリック」


ブルーノーがリックと言う仲間へ話を振った。


「え、えぇ。なかなか…個性的なパーティーですね……あ、わたくしはブルーノーパーティーのリック。ヒューマンです。回復魔法が得意なクレリック見習いです。見習いなので数回程度の魔法しか使えませんが、よろしくお願いします」


丁寧にお辞儀してきた彼はリックと名乗った。髪は緑で綺麗に切りそろえてあるのが特徴だ。ローブとクォータースタッフは黒で統一されており、いかにもクレリック。お坊ちゃんのような振る舞いだ。


「オデ、オデはグレッグ。ファイター見習い。大槌を使う。みんな潰せる。みんな守る」


身長は高いが、ヒューマンだろう。典型的なファイターの卵のような見た目で、ブレストプレートを身にまとい、ブルーノーに負けないほどガッシリした体型で大型の槌を持っている。髪は黒くショートモヒカンで威圧感がある。顔と体には痛々しい傷がついていた。次の人は…


「キュルルルル…」


もはや言葉ですらない自己紹介に驚きを隠せないが、ブルーノーパーティーの最後の一人。間違いなくリザードマンだ。このリザードマンは邸宅にいた人で間違いない。ブルーノーが最初に選んだ相棒というわけだ。リザードマンはギルドの会員証を差し出して、自分の情報を見せてくれる。会員証を手にとって見てみると、名前の項目は[キュルル]と書いてあり、クラスの項目には【スワッシュバックラー見習い】と書いてあった。…ギルドの登録を担当した人はきっと、言葉が伝わらず名前が分からなかったんだろう。それでいいのか!?


 【スワッシュバックラー】のクラスについて、本で確認する。このクラスは、単純な腕力よりも素早さと機転に富んだ戦い方を主とするようだ。普通の【ファイター】や【バーバリアン】のように、一度に大きなダメージを与えることはできないが、最大の特徴として【ローグ】というスカウト系のクラスの特徴を併せ持っている。この世界では初めて見る天然のマルチクラス型だ。


本からリザードマンのキュルルへ目をやると、自信満々にダガーと小さな盾を振り回してた。こうやって戦うぞ!というアピールなのかもしれない。


「どうじゃ?ワシのパーティーも中々面白いじゃろう!」


ブルーノーは自分のことのように自慢気に話をする。


「えぇ、とても個性的ですね。とくに彼…いや、彼女…?」


「ガハハハ!奴は男じゃ。ワシらパーティーは皆男で構成されておる。ちなみに奴の言葉は全然わからん。ただこちらの言葉は分かるらしい」


キュルルはうんうんと頷いて握手をしてくれた。


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