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征伐編 2話


 ソード・ノヴァエラに帰還して早々に、謎のドライアドからの接触があった。彼女は明らかに助けを求めていた。聞き流しておいても領地に害は無いと思われるが、どうにも気がかりだ。少なくとも、出向いて話を聞いてあげてからの判断でも遅くない。どの道、伝令が王都から戻るまでは急ぎの用事もない。カルミアたちからは、ドライアドに関わること自体リスクだと反対されているが、魔物だろうが人だろうが困っていれば助けてあげたいのが本音だからな。


 ということで、ソード・ノヴァエラに帰還後は、氷の大精霊の加護を受けたアクセサリーの検証をしている。これがあれば、俺の単体戦闘能力の引き上げができるはずだし、俺の戦闘能力が高ければ単独行動も問題がないだろう。…というのも、このアクセサリーは長年の悩みであったドラゴンブレスが使えない状況の克服に、一役買ってくれそうな可能性を示している。


 おさらいだ


俺はダンジョン都市、ハルバードウツセミの大型ダンジョンで白い真竜のワームリング(幼体)を討伐時、その血を身に浴びてからはブレスが吐けるようになっていたのだ。原理はよく分からないが、リンドウが言うには真竜の中でも特別強い力を人でありながら身に宿しているからだとかなんとか。この影響か、ルールブックの俺のステータス項目で、種族が人から竜人になった。


…ちなみに真竜系統のエンシェントやその上位サイズであるグレートワーム級のドラゴンは災害そのものとされ恐れられているらしい。これは転生したこの世界でも同一の認識だ。エンシェントの上位サイズがグレートワームという名称は転生後の世界でもあまり知られていなかったりする。


『グレートワーム』は名称から砂漠に潜む巨大ミミズみたいな魔物を想像してしまいがちだが、実際には『超巨大な竜』という意味を指している。これはTRPGの設定資料上のものでしかなく、エンシェントを超える伝説的な竜の通称だ。実物がこの世界に存在するかは不明だが、仮に存在したとしても生きてそれを伝えることはできないだろう。竜とは偉大なのだ。グレートワームともなれば言わずもがな。


 …


 俺の討伐した竜はワームリング(幼体)だが…とはいえ、真竜の血の力に違いは無い。その身に有り余る力の奔流、ドラゴン・ファイアブレスを吐けるようになった。だがその指向性は極端に悪い。最初使ったときにはフォノスに助けてもらったが、ゲボゲボと口から地面に炎を漏らす俺の姿は心底情けなく見えたことだろう。


負けじと遠征の合間に修練を積み、努力に次ぐ努力の成果もあってか、ある程度の指向性を持たせることはできたのだが、実用レベルとは言えない。


 そこで、このアクセサリーの出番だ。


 俺はカルミアからもらったアクセサリーを首から下げる。冷たいさわり心地だが、不思議と嫌悪感がない。


 今は未開拓地の中でも奥に切り開いた広場で練習しているから、特に周囲を気にかける必要は無い。ここでブレスの練習だ。


 「[ファイア・ブレス]!!」


 口から炎の球が生成され、魔力の制御によって射出される。数メートル先の大木に着弾し、木は一瞬で黒い炭になった。顔周りが焼けこげないのが不思議だ。ドラゴンブレスは射出されてから炎の力が構築されているのだろうか。


 威力は十分だが、球の速さは子供が投げるボールくらいだ。身体能力の高い冒険者であればヒョイっと避けてしまうだろう。


 俺は人の姿をしている。これ以上のブレス制御は困難だ。竜とは違って口で魔力を制御するのは難しいからだ。だが現状だと口以上の発射媒体がない。筒のようなものがあれば、わざわざ口に魔力を収束させる必要がない。これが課題であった。


 「いつも通り…っと」


 そこで…氷の大精霊の力が付与されたアクセサリーの出番だ


 これに魔力を通せば、魔法が使えない俺でも魔力があれば氷の魔法を構築できる


 作り出すイメージは砲身バレル。砲弾…もとい炎弾を打ち出すための通り道だ。


 「[レイ・オブ・フロスト]」


 詠唱したのはTRPG内でも最も一般的で初歩的な氷系統魔法だ。詠唱言語を知らないので、元々知っていた単語を詠唱するだけというぶっつけ本番でやってみたがどうなるか…


 手から冷気と共に氷が生み出される。アクセサリーの効果で全く冷たさを感じない。


 「よし、うまくいった!このまま…」


 出力を上げれば氷のビームも使えるだろうが、今回の使い道ではない。


 俺はそのままイメージを固め、砲弾バレルを作った。雪だるま君を作った経験がいきているのか、割とあっさりと複雑な形も作り出すことができた。……サリーが作り出した、謎の生物ウネウネくんは雪だるまの姿をして、今も元気にフラノール雪原を走り回っているのだろうか。


 …とと、集中せねば


 「……むん!」


 徐々に粗い角がとれはじめ、パーツがひとつ、ひとつと完成していく。バレル…OK、撃発パーツ…OK、グリップ…OK。魔力をせき止めておくパーツを最後にいくつか作って完成だ。


 これを組み合わせていく


 最終的にはソードオフしたショットガンに近い銃…というより砲のようなナニカが出来た。最初だしこんなもんだろう。当然ながらシングルバレルだ。シンプルなものしか作れないからな。


 「できた…!」


 これがあれば、ファイアブレスの魔力を口から射出する工程を、魔力だけで作成した媒体から射出する工程に移管できる。疑似だが竜のブレス器官を砲に置き換え、人工的に生み出す試作だ。


 「俺が知っている中で、これ以上効率の良い射出体は存在しない…うまくいってくれよ」


 砲の中にありったけの魔力を込めて、バレルを閉じる


 衝撃に備えるため、両手でしっかりと構えて腰を落として引き金に指を置く


 「発射…[ファイアブレス]!」


 魔力を変質させる詠唱を行うと、熱をもった砲は真っ赤に染まり、爆発するように射出された


 爆発の力と魔力の力によって指向性を得たブレスは砲撃のように前方を焼け野原にすると20メートル前後までの前方、広範囲を焼き尽くしてしまった。


 レイ・オブ・フロストで作成した砲は粉々に、所々はドロドロになってしまっている。


 「はは……やりすぎちゃったか」


 ドラゴン・ブレス・ソードオフショットガンの完成である。




 

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