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37話


シールドウェストの町へ帰る道中、嬉しいサプライズもありルンルン気分で街道を進む。…正確には手押し車に乗っているので、カルミアタクシーで移動していると言った方が良いか。嫌な顔ひとつせず、むしろ頼られてて気分が良いのか、カルミアは走り続ける。その無尽蔵な体力はどこから来るのか…。


「…サトル、町が見えてきたわよ」


頑丈そうな城壁に囲まれた町、シールドウェスト。この土地は森や大河が近くにあり大自然の恵みに溢れている。そのためか、魔物も数多く生息しており、年中魔物による畑荒らしや襲われる事故が後を絶たない。町に住む冒険者も強者が多く、ここから受けられるクエストは他の町よりも歯ごたえがあるものばかりなので、修行に丁度良い。


「帰ってきたなぁ。二週間そこらの期間だったけど、随分懐かしい気がする。そしてレベルは上がらなかったか…」


結構な数の魔物を討伐したがレベルは上がらなかった。弱い魔物から得られる経験値が少なくなっているかもしれないな。


「…サトルは、早速ギルドに顔出すの?」


「あぁ、修行に丁度良い依頼がないか確認してくるよ。カルミアさんとサリーさんはどうする?」


「…私は剣の手入れをしたいから、あの店に寄っていくわよ」


ドワーフが鍛冶職人のあの店か…。腕は良いんだが、俺とは相性が合わないんだよな。カルミアとは凄く気が合うのだが、それがなんというか…あの職人は根っからの戦士器質な奴なんだと思う。


「アタシはお抱えしてた患者さんが元気にしているか、見回ってくるヨ!クエストの受注は任せタ!」


サリーは俺たちと行動する前は、シールドウェストで薬師をしていたから、そこで受け持っていた患者さんが元気かどうか気がかりなんだろう。


「分かった。じゃあ出発前に寝泊まりしていた何時もの宿屋で、夕方に集合しよう」


俺たちは一旦入り口で解散し、カルミアは手押し車ごと鍛冶屋まで向かって行った。サリーは何処かに走り去って、俺はそのままギルドに向かって報告に行く。


「さて、ついたぞ。ギルドは…相変わらずだな!」


 スイングドアを押す前から、賑やかな声が聞こえてくる。酒場と併設されているため、美味しそうな料理の匂いも同時に漂ってきた。中へ入ると丁度、吟遊詩人が何処かで活躍した戦士の名を歌っている所で、皆それぞれに歌を背景に歓談を楽しんでいた。やっぱり異世界のギルドは雰囲気が最高だ!


「受付のお姉さん、いますか~?」


吟遊詩人の歌を聴きながら、カウンターでお姉さんが出てくるのを待つ。しばらく待っていると受付のお姉さんが出てきた。相変わらずスタイルがバツグンだ。今はカルミアがいないからじっくり眺められるぞ!


「お待たせしてしまい、すみません。ちょっと立て込んで…あ、サトル様!依頼達成のお手紙は頂いてますよ。しかも、ヌシまで倒したのだとか…凄いですね!?結構な噂になっていますよ」


俺たちより先に手紙が届いていたようで、護衛の依頼を達成したことは把握済みのようだった。


「そんな、全て仲間のおかげです。俺はついていくので精一杯でしたが、なんとか達成できました。 …ところで、俺たちに合った新しい依頼はありますか?修行も出来る内容が望ましいです」


「そうでしたか。現在Dランクで仮Cランクとなると、今は良さそうな依頼が無いですね…。 ゴブリンやコボルトの掃討では割に合わないでしょうし。…最近は、弱い魔物が街道によく出没するという報告があって、そこに人員を集中させているため、暫くはこういった依頼ばかりになりそうで」


「そう言えば、帰ってくる途中も魔物が山ほど出てきました。何か関係が?」


「詳しくは調査中なのですが、ダンジョンからスタンピードの兆しが出ているかもしれません」


スタンピード…ダンジョンに生息する魔物が何らかの理由によって大量発生し、地上まで生活圏を広げようと、ダンジョンから溢れ出てくることだ。普段はダンジョンから出ない魔物や強い魔物まで地上に現れるため、放って置くと大変危険な状況になる。加えて、いつ本格的なスタンピードが起きるのか、判断が難しいのがまたその厄介さに拍車をかけている。


「分かりました。ではそのスタンピードの原因について…」


調査の依頼でも無いかと打診しようとしていた時、ギルドのスイングドアが勢いよく開かれる。


「誰か、誰か話を聞いてくれんか!?」


汗まみれになったドワーフが叫び、吟遊詩人の歌を中断させた。場は騒然となってドワーフを囲みはじめる。そのドワーフは複雑に編み込んだ赤髪とヒゲが繋がっていて、短躯だが筋肉質でガッシリとしている。長い間無茶な移動をしていたのか服はボロボロ、肌は傷だらけだ。


「おい、大丈夫か?何があったんだ」


冒険者の一人がドワーフに状況確認をするため声をかける。俺もお姉さんと一緒にドワーフの元へ駆けつけて様子を伺う。


「おお…話を、聞いてくれるのか?実は、北にあるドワーフの採掘町、ブローンアンヴィルの採掘場で、竜魔吸石が発掘されたんじゃ」


竜魔吸石…?


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