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36話


一日休養をしっかり取って、心身共にリフレッシュしたサトルたち。カルミアとサリーは十分に買い物や食べ歩きを楽しんだようで、お互いニコニコしている。仲も深まったようで、俺が居ない間に何があったのかが凄く気になる所だ。


「カルミアさん、サリーさん。仲が良さそうだね。何かあったの?」


「ん?…別に何でも」


「そそ、女の子の秘密だもんネ~!」


そんな事を言われたら余計気になるが、詮索しても仕方がないので諦める。


「そうかい?…さて、そろそろ出発しよう」


 俺たちは当初の予定通り、荷物をまとめてランスフィッシャーの町を出た。ここに来る時より荷物が多いのは、サリーがお土産を沢山購入したからである。ギルド長が作った手押し車を貰い受けることができたので、カルミアが俺たちを乗せて引く。


「なぁ、俺たちを乗せてカルミアが手押し車を引っ張るなんて、本当に大丈夫なのか?」


「大丈夫…私にかかればこんなものよ」


そう言うとカルミアは、まるで何も持っていないかのように走り出した。涼しい顔で二人と荷物を乗せた大きな手押し車を引く爆走少女。居眠りしていた門番はビックリして門から出ていく俺たちを見つめている。う~ん、レベル3にしてカルミアは人間をやめてしまったか…。俺も少しは強くなった自信があったのだが、やはりこの二人は別格だろう。あっという間に町が見えなくなった。


「フゥ~!ラクラク移動できて便利ィ~!カルミアちゃん、さっすがァ」


「…フフ。こんなものよ」


街道を移動する速度が凄まじい。これなら大荷物でも行きより早いペースで帰ることができるな。カルミアはレベルが上がって筋力の上昇も著しい。ちょっとやそっとの荷物では何も感じなくなったのだ。即席カルミアタクシーが完成し、町への帰還も順調だった。しかし、街道は比較的安全ではあるが、モンスターが出ない訳では無い。


道中はウルフやゴブリンを始め、凶暴な相手が俺たちの行く手を阻む。シールドウェストに近づくにつれてモンスターの強さや凶暴さが増している気がするのは何故だろうか。一日に数回はゴブリンやウルフとエンカウントしたが、全てカルミアとサリーが一瞬で蹴散らしてしまった。こりゃシールドウェストに帰った段階でレベルも上がりそうだな。特訓になるから良いのだが、やけにモンスターが多い気がするのは気がかりだが…。


 魔物を倒しつつ移動を続け、数日が経過したお昼時。カルミアタクシーは一旦休憩をして、皆でお昼ご飯を食べていた。今日の献立は黒パンとランスフィッシュの干物である。ちなみに干物はサリーのお土産品だ。サリーが山ほど買ったお土産のせいで荷物のスペースを圧迫してしまい、食料が殆ど積めなかった。食料も少なくなってきたので、仕方がなく少し拝借してお昼に使ったという訳。噛めば噛むほど味が出て癖があるがとても美味しい珍味である。もちろんサリーには秘密だ。


「う~ん、これは旨い。サリーのお土産センスも馬鹿にできないな…」


「へ?サトル、何か言ったァ?」


サリーは干物をもぐもぐしながら町で買ったのであろう魔導書を読み耽っている。ちなみにランスフィッシュのヌシ討伐報酬はキッチリ三分割したので、サリーのお財布にも余裕があるのだ。


「い、いや…何でもないよ!干物美味しいね!」


「うん!アタシも同じお土産を買ったからネ。また食べるのが楽しみだヨ!」


すまないサリー。その干物が君が買ったお土産なのだ。言わないけど。


「サトル…少し時間ある?渡したいものがあって…」


珍しくカルミアがもじもじしている。いつもは鋭い目つきでスキの無い、堂々たる立ち振舞いをするから、ちょっとビックリだ。


「あぁ…どうしたの?」


「お!カルミアちゃん、とうとうアレを渡すんだネ!じゃあアタシも渡そうっと」


読んでいた魔導書を閉じたサリーは懐をゴソゴソあさり始めた。


「実はコレ…」


カルミアが俺のそばまで来て手渡ししてくれたのは、アクセサリーだった。カラフルな布で出来た腕につける織物で、真ん中に雷のマークがつけてある。所々失敗したのか縫い目が甘いところがあるが、それがとても手作り感があって、雷マークもカルミアらしい。転生前からこういったプレゼントは貰った記憶がないから、驚きと嬉しさでいっぱいになる。


「ありがとう…ずっと大事にするよ」


「フフ…」


普段鋭い目つきのカルミアが笑った時の顔は破壊力バツグンだ。


「ねぇ!アタシもカルミアちゃんと一緒に作ったんだヨ!はい、どーゾ!」


押し付けるようにサリーから手渡された物も、同様のアクセサリーだった。ただしカルミアが作ったものと違って、非情に模様が精巧に出来ており、星のマークがついてて全体的な色合いからもファンシーさが全面に出ている作りになっていた。


「あ、ありがとう…。本当に嬉しいよ」


「ハッハッハ、綺麗なお姉さんからのプレゼントだヨ。受け取りたまエ」


サリーは偉そうにしているが、照れ隠しなのか、両手をうしろに体をクネクネさせている。サリーの精一杯な誤魔化しなのかも?俺は気が付かないふりをすることにした。


「でも、突然どうして?」


「…私たち、ボスクラスのモンスターを討伐できるようになって、これから先も難しい依頼に挑戦するでしょう」


「あぁ、そうだな」


「だから、リーダーに頑張ってもらいたくて、二人で作った…ということになっている」


「あ!カルミアちゃん!ダメだよ。なっているとか言ったラ!」


「…そう」


カルミアは顔が赤くなっていて、サリーは慌てふためいている。どんな気持ちにせよ、プレゼントは嬉しいし、二人の思いはしっかりと受け止めておこう。俺は貰ったアクセサリーを両手につけて、二人に見せる。すると二人は女子同士で手を取り合って喜んでいた。なんかこういうのも良いよね。


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