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領主編 110話


 王都への招集がかかった俺たちは、冒険者として活動していた時期のように、装備を整えてから馬車に乗り込んだ。冒険者時代との違いは、馬車が自前になった部分だな。ちなみに馬車の操者は御者さんをリクエストしており、彼もそれに応えてくれた。


 毎回の如く危険な地や遠方へ運ばせていたためか、彼の操縦は控え目にいっても天才的と言えるほどにまで成長しており、彼が操縦するかしないかで目的地到着の見込みが全く違う。場合によっては数日ほど早まるほどだ。もちろん、最適解はカルミアタクシーによる移動方式だが、アレは酔いが激しく何日も寝込むハメになるため最終手段にしたい。


 「お~い、そろそろ到着するぞ~!とっとと降りる準備しろ~!」


 立場が変わっても御者さんのキャラは健在で通してくれる。


 (御者さんは相変わらずのせっかちスタイルで安心するな…)


 馬車から顔を出すと、気持ちの良い風を受けて、大きな町模様が視野に入る


 スターリム王都。スターリム国の首都であり、王城がある。娯楽施設や武具関連の生産物はソード・ノヴァエラよりも劣るが、王都の名にふさわしい町の規模を誇る。国で一番大きな冒険者ギルドの支部もここに設置されており、実質上の本部のような役割を果たす。依頼は高い難易度のものが集中しており、高レベルの冒険者はここで名を売ることを目的にする場合が多い。街並みは煌びやで活気がある。


 ラーメン屋の行列のような、いつ自分の番になるかも分からない気が遠くなるような門番の検閲を横目に通り抜け、貴族用の来賓スペースから町にチェックインする。前回通った時よりもかなりスムーズに進めることができた。王様に顔が通るとなると、待遇もVIPになるのだろうか。


 「ついたぞー!すぐ降りろー!」


 御者さんは馬車の停車スペースで降りると大声で急かす


 また彼に投げ飛ばされるのは勘弁なので、慌てて降りた


 そんな様子を見て、カルミアはクスリと笑った


 「クスクス…サトル、慌てすぎじゃない?」


 「彼の投げ飛ばしは強烈だからね!」


 御者さんは配慮が無いが、どんな時でも、どんな危険があっても駆けつけてくれる。そして、用事が済むまでは、お酒を嗜みながら辛抱強く待っていてくれるのだ。


 裏のパーティーメンバーとも言える。彼がいるから帰りのことは安心できる。


 「あっしはここで時間を潰して待つことにするでさ、気をつけて行ってこいよー!」


 御者さんは顔を向けることなく背中で見送ると、馬車の手入れに戻った



 * *



 城下町のメインストリートに気をひかれまくりながらも、どうにか王城前まで到達


 近衛兵らしき人から案内を受けて謁見の間へ


 ちなみに武器は預かってもらっている


 「サトル様、並びに護衛の御一行様!謁見のお時間です!」


 ここに来たのは領地と爵位をいただいた以来だろうか?そんなに時間は経過していないが、随分と経った気がする


 謁見の間に到着し、ゆっくり歩を進めて玉座の前で慣れ親しんだ敬意を示す


 「面を上げてくれ…どうか楽にしてほしい、サトル。そして皆も…」


 王の、少し疲れた声を聞いて顔を上げると、やはり顔色には少々のやつれが見える気がした


 「招集に応じました」


 それに続いてアルが発言する


 「命令に従い、彼には王都まで来ていただきました。状況が状況ですから、彼のパーティーメンバーも全員同行頂いています。彼が達成した遠征功績は書状にてお送りいたしました内容の通りでございます」


 王はゆっくり頷く


 「うむ…内容は既に確認済みだ。アル、ご苦労であった。下がってよいぞ」


 「かしこまりました。」


 アルは深くお辞儀をすると、少し後ろについて様子を見守っている


 王は考えを巡らせるように何度か頷くと口を開いた


 「まずは、此度の遠征…フォマティクス補給基地の破壊、並びに幹部の始末、加えて我が民の救出まで命を賭けて全うしたことに労いの言葉を送りたい。サトル、そして護衛の皆も…よくやった」


 皆は頭を下げたままなので、俺が代表して答える


 「とんでもございません。ただ困っている者を助けたかっただけです」


 「そう言ってくれるか。うむ……感謝する。後ほど褒美を取らせるが、今日ここに呼び出したのはもう一つある。何者かの手によって、デオスフィアの噂が町中に回った。そして…」


 (なんだって…?)


 王は、デオスフィアの件が主題ではないと言いたげに手で制し、一層重い表情を作り言葉を紡ぐ


 「そして、我が国が保有する北の領地 メイス・フラノールが 陥落した」



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