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領主編 109話


 俺がアイリスとアルフレッドにもたらした情報は、ギルドへ連携後に連絡用の鳥のルチルちゃんを使って、王都へと届けられた。王は早急な対応が必要だと判断し、「方針を検討後にもう一度連絡をする」という返事をアルフレッドに届けたようだ。


 シールドウェストまで来ていたアルフレッドは、すぐに連絡内容を俺たちへと伝えてくれた。この連絡があったのが昨日のことだ。


 王から連絡があるまでは何日間か滞在していたが、これは少しかかりそうだ。情報が情報だけに、混乱しているのかもしれない。会議が白熱しているであろうことは容易に想像できる。俺がその場にいないことだけが救いだ。


 そういうことであれば…と何等かの動きがあるまでは、デオスフィアを埋められた捕虜を連れて、開拓地に帰ろうかと、乗合馬車の前で仲間たちと話を進めていたときだった。


 「サトルさん、お待ちください。領地に戻られるのですか」


 宰相のアルフレッドくんだ。眉間にしわが寄っているぞ。これは何かを頼もうとしている目だ。


 すごく嫌だが、嫌な顔をしてはいけまいと同じ表情で迎えてみせた


 「…えぇ、デオスフィアを埋められた彼らの治療の手立てと、しばらく開けていた領内も気がかりですので……どうなさいました?」


 もどかしそうにアルは言った


 「あぁ…そのですね。……先ほど我が国王から緊急連絡用のアーティファクトを使って連絡がありました」


 (来るぞ来るぞ~)


 「さようでございますか…」


 アルは少しムっとして


 「そんな言い方しないでください。私に決定権がないことはご存じのはずです。それに、回数制限があるアーティファクトまで使っての指令ですよ……とと、本題ですが、サトルさん…と護衛のみなさんへの招集がかかっています」


 (やっぱり来たー!)


 「招集ですか…なんなんでしょうね。特に何もしていないはずですが」


 「…本気ですか?」


 やったことと言えば、基地を壊滅させてフォマティクスの企みをひとつ暴いたくらいだ。


 「……さようで、しかしながら――」


 「拒否権はありません」


 「…」


 なんだろう、帰ろうと思っていたときに呼び止められて仕事を増やされたようなこの感じ


 俺の顔は今、梅干しがモチーフになったキャラクターのような表情を前面に出しているに違いない。


 「…なんです、その顔は」


 これは無言の抗議なのだ。


 「いえ…特に何も」


 「コホン…急で申し訳ないのですが出発は明日で―」


 無言の抗議は無に帰した。


 ただその前に確認しておくべきことがある


 「ちょっと待ってください」


 俺は手で制して、捕虜たちへと目くばせする


 「彼らはどうなります。いつデオスフィアが暴走するとも分からない状況で放置するのは正しくない。彼らだって、早々の解放を望んでいるはず」


 「貴方たちが王都へ向かっている間、アイリスさんが責任をもってシールドウェストで保護すると言っています。捕虜たちを決してないがしろにしないと、約束しましょう」


 「そういうことであれば……」


 渋々だが承諾するしかないだろう


 「しかし何故わざわざ招集に?」


 アルは肩をすくめた


 「言えば貴方は今ここで動かなくなりそうなので、言いません」


 「…」


 アルフレッドくんや、それは先生から『あとで職員室まで来なさい』と言う伝家の宝刀と相違ありませんぞ。内容を先に伝えるべきだ。概要だけでもいいから…!そうしないと、ずっとモヤモヤした気持ちを与え続けるという拷問と変わらないのだ。そんなひどいことを君はしようと言うのかね!そうかそうか


 「足の小指を角にぶつけろ…!」


 「…何か言いました?」


 「いえ、何も…!」


 俺はこの日ずっと梅干しのキャラクターじみた顔で過ごすことになるだろう



 * *



 サトルとアルフレッド、国の重要人物が顔を並べていれば嫌というほど目立つもの


 野次馬に紛れて、怪しい二人組がサトルたちの様子を伺っていた


 「ウヒョヒョ…なるほどなるほど!!いやはや、これは事件の臭いがプンプンですよ」


 片や小さなノーム、いたずらを考えているという表情がまさにデフォルトなボーイ


 「事件の臭いってなんだ、食べ物の匂いなら嬉しいのだが」


 片やヒューマンの女性、しかし体格から戦うことを生業としているのが見て取れる屈強な剣士。しかし残念ながら最近は食べ物と妹のことしか頭にない


 そう、タルッコ団である(二人しかいない)


 タルッコはニヤニヤと何かを企んでいる


 「ほとぼりが冷めた頃合いと見て、出稼ぎにシールドウェストまで戻ってみれば…なんたる幸運か!奴がいるじゃありませんか。我らが宿敵にして永遠のライバルのサトルめが!」


 「事件の臭いってなんだ?」


 「サトルは我らが宿敵。そして国の宰相と噂される奴は、アイリス様の屋敷で何度か目撃したことがあるのです!スカした野郎で気に食いません!いつか天誅が必要だと思っていたのです。そして、彼らは今私たちの前へ現れた。やはりこれは天啓。そして、町中で噂されるスターリム国とフォマティクス国間の緊張と、王都への招集…これが何もないはずがない!」


 「なんの脈絡もないと思うのだが…それより事件の臭いって――」


 「さぁ!いきますよ、サザンカ殿。久々に大きな悪さができそうな気がします!」


 「その前に何か食べたいのだが…今朝から魚一匹しか食べていない」


 「私の魚も半分やったでしょう!…まったく…貴方は強いが食費がかかりすぎるのです」


 タルッコはサザンカの背を押して闇へと消える…


 今度こそサトルたちに天誅を下せるのか…?


 彼らの奮闘次第である


 

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