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領主編 96話


 ソリアムが俺たちが居る大部屋に到着するまでに、30分以上経過している。


 (なぜこんなに到着が遅れるのか…?同じ建物の中だろう。あのやり取り自体がブラフだったとか…そんな感じは無かったけど)


 鶏となったサリーの表情がゲッソリしていくのが分かる。気持ちばかりが焦ってしまい、鶏版サリーの周りをグルグルと歩く。気持ちを察してか、サリーは白い翼を広げて元気をアピールしているようだ


 「コケ!」


 あとどれほど同じ状況を続ければ良いのか、というのは精神的に著しく負担をかける


 (サリー…本当にごめん……)


 それからさらに30分、いくらサリーが化け物級の魔力を保持していても、バケツの底に穴が開いていたら水はいつか尽きるもの。サリーは翼でバツのサインを俺に送る。翼の構造上、どうやっているんだという気持ちと興味が湧いたものの、そんなことを考えているヒマはない。


 (そろそろ限界か、次の手を考えるにしても……)


 その時、とうとう大部屋の扉がゆっくりと開いた。一人の男を囲うように数人程度、武装した人間が話をしながらこちらに歩いてくる


 「ソリアム様、何も自らお調べにならなくても…敵の罠かもしれません。転移にしても少し妙です」


 「だから、それを今から調べると何度も説明したでしょう。アナタ方では、細かい痕跡を見逃すかもしれませんし、たいへん不本意ですが、わたくしが時間を割く必要があります」


 部下らしき取り巻きがソリアムと呼ばれた男の顔色を伺うように言った。ソリアムは魔道具から漏れ聞こえた声の印象とはだいぶ違っていて、多少の落ち着きを取り戻しているようだ。


 サディスティックの匂いがプンプンする、真っ赤な髪色にソフトモヒカンをバッチリ決めている。服はエレガントさが垣間見えるスーツ姿に白い手袋をしている。背中には武器と思われるソード&シールド。所々に人間の骨と思われる部位をアクセサリーをジャラジャラつけていた。とても悪趣味だ。歩き方から身振り手振りまで丁寧さを感じるが、一度感情が高ぶると手がつけられないようなのは、先ほどのやり取りを見れば明らか。


 (すぐに確認に向かうと言っておきながら到着が遅れたのは、部下に止められていたから…?用意周到なこいつなら、他にも何かあるかもしれないな)


 部屋に入るとソリアムは辺りを見回し、俺たち鶏をしかめ面で睨みつける


 「ふーん……やはりポリモーフ系の魔法ではないですか。予め、動物共に印をほどこし、転移させる魔法と見える。万一…とは考えてみたものの、1時間も変化魔法を維持できる者など、それこそエンシェントドラゴンでもないと不可能でしょう。念には念を入れ、時間を置きましたが変化はありませんでしたね」


 部下は不服そうに進言する


 「ですから、転移の可能性があると最初に申し上げた次第で、もしこれが敵の罠でソリアム様に万一のことがあれば我々は他のキャピタルに示しが――」


 ソリアムはそれに対し、一刀両断するような言葉で断ち切った


 「お黙りなさい。」


 「ひぃ……」


 ソリアムは部下たちに近づいて一人ひとりのアゴを人差し指でつついてまわる。女性らしさが見える身振りでおどけているようにも見えるが、顔は真剣そのもの


 「アナタがた、わたくしを誰だと思っているのです。キャピタルの名をフォマティクスから拝命した、ここの長なのですよ。わたくしが良いと言えば、良い。ダメと言えばダメ。それに従いなさい。それに、時間も置いて、武装もしています。どれほど念には念を入れたと思っているのですか」


 ソリアムは丁度俺たちに背を向けた形で部下に説教を垂れている


 (あいつがソリアムで間違いないだろう…!油断している今なら…いや、今しかない)


 俺はサリーの方を向いて、頷く。


 「コケコッコーゥ!」


 サリーの大きな鳴き声に応じるように、俺たちにかけられた変身が全て解除された!サリーはぐったりした姿で元にもどる


 「うぇ~~…もうダメ」


 サリーの声に驚き振り返ったソリアムは驚愕した顔を見せる。転移したと思われていた俺たちが(実際には1時間余り鶏の姿で待ち続けたのだが)いきなり現れたのだから、当然だろう


 「イミスさん、今だ!」


 イミスは変身が解けることを確認すると、サムズアップしてすぐにソリアムにビーコンを発射する


 「ヤルなら今しかないよね!ヴァーミリオン!」「分かっているわよ、マイシスター」


 (この間は約数秒程度だ。いくら用意周到な奴でもこれでチェックだろう)


 サリーのビーコンがソリアムの元に飛ぶと、ソリアムは背の盾を上手く使ってビーコンを防ぐ


 「あら?このピカピカは何なの?」


 しかし、そのビーコン自体は攻撃性能を持たない。本命は…


 「いまだよ!」


 ヴァーミリオンが身の丈ほどある魔弓を構え、音もなく閃光を放つ!


 「だから分かっているって、マイシスターはうるさいですね……敵さんたち、恨みはありませんが、マイシスターからの命令です。死になさい!…『カロネード・ディストラクション』!」


 (フォマティクスの隊長を遠距離から射抜いた技はこれだったのか!)


 周囲の風を巻き込むような魔力を伴って、弾丸のような矢は、ソリアムの持つビーコンにめがけて駆け抜ける!



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